天魔界戦

皇神凪斗

第17話 裏切り

「やりやがったな!この野郎!・・・ん!?」
アルマが起き上がると視界の遠くにとある人間が映る。
それは見覚えがある訳でも目を引くような人間でも無い。逆に普通の人間なのだ。
そう、普通の人間が戦場に居ることがアルマの気に止まった。
「おい!なんでこんな所にいる!さっさと逃げろ!」
そう叫んでいると急に後ろから身体を掴まれる。ギルドの人間の背後から急に姿を現し、拘束する。
「な、なんだお前ら!離せ!」

「・・・天使様は仰った。お前達を差し出せば我らの命だけは助けてくれると。」

弱々しく、恐怖に包まれた眼で語る。
「恨むんじゃねぇぞ!お前らだって俺達を守るとか言いながら今にも負けそうじゃねぇか!」
「私達は何もしてない!貴方達の道ずれで死ぬなんて御免よ!」

サマエルは口を塞ぎ震えだす。
「・・・ククククク・・・アーハハハハハ!!!
大変だなぁ?俺達、悪魔や天使を相手に苦戦してるのに今度は人間の中に敵が出てくるなんてなぁ!!」
「離せって言ってんだよ!お前だって殺されるぞ!」
振り払おうとすれば振り払える。しかし、相手は非戦闘員。加減を間違えれば殺してしまう。ギルドの人間達は動けない。
「それじゃあ・・・まずはお前だ!!」
サマエルはアルマを捉え拳を振り上げる。

刹那、ロキが動く。

『魔刀 骸苦髏太刀』を一振。刃が通った空間に丸い輪が残る。その輪の中に大剣を構えた少女が見えた。
「今だ!ルルカ!」
輪を通り越えルルカは飛び出し、その手に持つ『デュランダル』でサマエルの腕を切断。アルマを助ける。
周りが何が起こったのか困惑する中、ロキは叫ぶ。
「シャル!ゼツ!ムラサキ!」
「「「了解!」」」
呼ばれた三人とロキは即座に自分を拘束する人間を吹き飛ばし、他の一般人を攻撃する。
「!!・・・何のつもりだ!」
「何のつもり?・・・その辺にいるギルドの人間ならともかく、俺達は元犯罪者。お前のようなムカつく人間から金を奪い、命を奪ってきた。今更殺す事に何の抵抗もない。
今回の戦いも俺達が生き残る為に戦っている。それを邪魔するのが天使だろうが悪魔だろうが、例え人間だろうが!!俺の邪魔をする奴は殺す・・・。」
その光景を周りは呆然と見つめるしかなく、助けられた団員はハッとして天使と悪魔に攻撃を再開する。
「ロキ・・・お前何して─────」
「待て!アルマ!」
「カイト!止めんじゃねぇ!」
「落ち着け!!・・・これでいいんだ・・・。」
「ハァ!?お前まで何言ってんだ!」
「ああなる事は予想出来ていた。しかし、俺達が一般人に手を出すことは出来ない。そして、負ければ全員が死ぬ。誰かがやるしか無かったんだ。
そして、その嫌われ役をロキと無法者デスペラード達がやってくれた。この戦いが終わった後、一般人がギルドでは無くロキ達を責めるように仕向けたんだ!
だから!今はこの戦いに勝つ事だけを考えろ!お前も分かっているんだろ!さっきの瞬間、一般人を救えたとしても戦いが終われば殺されていた。
こうするしか無いんだ・・・これが最適解なんだ!!」
そう言ったカイトの手はアルマの肩を強く掴んだ。それはカイトが頭で理解しつつも心の底では納得していない証拠だった。

「分かった・・・あとは勝つ!!ロキにあんな選択をさせた天使と悪魔をぶっ飛ばす!!」


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