天魔界戦

皇神凪斗

第10話 紫

周りは静まり返っていた。シェルナンドの敗北、ロキの強さに。
「馬鹿な!!この俺様が、二度も・・・!」
「もう十分だな。終わりだ。」
「待てっ!」
そこでロキの隣に一人『転移』してきた。
「ムラサキさんっ!?」
メルが隣を見るとムラサキは消えていた。どうやらあの場に『転移』したようだ。
ロキは気にもせず、ただその場を見守る。
シェルナンドは邪魔をしてきたムラサキに敵意の視線を向ける。
「なんだ貴様!何処かへ・・・・・・?」
シェルナンドがムラサキを見ると、その瞳を大きく見開いていく。
「ユカリ・・・さん?」
「何だって・・・?」
後ろにいたバラールは起き上がり、カゲも視線を向けてきた。
シェルナンドは立ち上がろうとするが、力が入らず転び。身体を引きずってムラサキに寄ってくる。
「ユカリさん!!生きていたんですね!
良く・・・良くご無事で・・・!!」
ムラサキは顔を横に振る。
「悪いけど、私はユカリ姉さんじゃない・・・。」
「はい?姉・・・さん?」
「私はムラサキ、ユカリの妹よ。」
「じゃ、じゃあ何で!!こいつと一緒に居るんだ!!こいつはユカリさんを殺したんだぞ!」
「殺してないわ。・・・ユカリ姉さんなら生きてる。」
「「「!!」」」
三人は呆然とした。聞かされた事実に。
「殺さなかったのか?・・・どうして?」
こいつムラサキには魔法を教えて貰った恩がある。そして、あの女はこいつにそっくりだった。それだけだ。
・・・だが、俺の顔を見られたんでな。記憶だけは消させて貰った。」
「ユカリ姉さんなら、隠れながら暮らしてる。会いたいなら会わせてもいいけど、貴方達の事は覚えてないわ。」
「そうか・・・そうか!!・・・うぅっ!!」
シェルナンドは静かに涙を流した。
それを見て、ロキは踵を返す。
「ロキ。悪いけど、私はここに留まるわ。・・・姉さんから、この子達を頼まれたから。」
「あぁ、気にするな。」




「ロキさん・・・意外と優しかったんですね。」
「ただの気まぐれだ。・・・さて、飯を食いに行くぞ。」
ムラサキを残し、一同は食堂へ移動した。
「ん?」
ロキが一つの席に目を止めた。視線の先には一組のカップル。
ロキは一歩一歩踏みしめながら近づいていく。
座っていた男もロキに気づき、汗を浮かべながら目を合わせる。
「おい、貴様。」
「な、なんだよ!!」
「それは何だ・・・。」
「え?そ、それって?」

「貴様が食べている物だ!!」

「は?こ、これ?ただの苺パフェだよ!
た、食べたいなら受付に行けばいいだろ!!」
「ふむ・・・。」
ロキは真っ直ぐ受付へ向かう。
シャールもその後を追う。
「おい、アイツらが食べているパフェを二つ頼む。金ならいくらでも払う。」
「ちょっと待って下さい。ロキ、流石に二つは身体に悪いと思いますよ。
あ、私にも一つお願いします。」
「待て、二つはお前の分だぞ?」
その様子を見てカイトとメルは異様な光景を前に立ち尽くしていた。
「あの〜ゼツさん。ロキさんって・・・。」

「あ〜、あれか?かなりの甘党だよ。
事ある度に甘い物盗んで来いってうるさかったもんだぜ。」

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