天魔界戦

皇神凪斗

第9話 悪魔の魔力

「あの黒いの。前に使ってた魔法に似てるな。」
戦いを見ていたゼツはロキの操る黒い炎に目をつけた。
「『黒炎』ね。確かに似てるけど、あれは魔法と言うより、魔力を操っている。と言うのが正しいわ。」
「魔力を操る?だが、あれは色が付いているぞ?」
「だってあれは『悪魔の魔力』よ。人間の持つ魔力より強力な物・・・逆に人間の魔力が弱すぎるのよ。」
「そうですね。いくらロキでもあの魔力が無ければ魔界の悪魔相手に、どうすることも出来ませんでした。」
「シャール、あなたはロキが戦ってるのを見てたのよね?
・・・あれは何なの?」
ムラサキは怪訝そうな視線をシャールへ向ける。
「『悪魔の魔力』を『炎』の形にした物、と言ってましたね。」
「どうした?ムラサキ。何か感じたのか?」
「・・・さっきの攻撃で、銀のあいつから魔力が散った。・・・削り出した、の方が近いわね。」
「!?・・・相手の体内から魔力を!?
馬鹿げてる!」




「クソっ!舐めるなよ!!」
シェルナンドは銀の鎧を直ぐに修復、攻撃を再開。
ロキは魔刀をしまい、『終炎』を構える。
「これならどうだ!」
シェルナンドは水銀を飛ばし、ロキの周囲を覆う半球体を作る。
「それも無駄だな。」
そして、水銀の槍を握り直す。槍の先端から変形、回転しながらドリルの様な形を作る。
「『獄魔の防壁ごくまのぼうへき』」
ロキは半球体の中で『終炎』による盾を展開した。
「はあぁっ!!」
シェルナンドはありったけの力を込めて槍を繰り出す。
勿論、水銀の半球体がそれを阻止する訳もなく。確実に防壁に突き刺さる。
しかし、終炎はそれを食い止める。
水銀の槍は回転しながらなんとか防壁を破ろうとする。
「うおぉぉぉお!!」
激しい拮抗のすえ、槍の先端が防壁を貫通した。
その時、ロキの目に映る。槍の先端、その水銀が弾かれたその中にもう一つの槍が仕込まれていた。
「水銀の中に本物の槍があるとは思うまい・・・食らえ!!」
もう一度、シェルナンドは槍を突き出す。

何かを貫く感触。確かに手応えを感じた。
「!!・・・やった!だがまだだ!」
静かに喜び、トドメを刺すべく更に力を加える。

だが、槍は動かない。

「?・・・何かに引っかかっているのか?」
今度は槍を引き抜こうとした。しかし、動かない。

「残念だったな。お前の攻撃は届いていない。」
「強がるな、確かに手応えはあったぞ!!」
「お前が貫いたのは、『ただの魔力』だ。」
突如、水銀が爆散した。終炎がそれを弾いたのだ。
見えたのは無傷のロキと、空中で静止する槍だった。
「馬鹿な!!幻覚魔法か?」
「触らせてやろう。『不可視の衝撃インパクト』!」
シェルナンドは突然、身体の全面に何かを叩きつけられる。鉄球でもぶつけられたかの様な衝撃を食らい、鎧を散らせながら後ろに吹っ飛ぶ。
更に、ロキは左腕を真上に伸ばす。その腕から溢れる『悪魔の魔力』は細長く伸びていく。
それは素早く、10m程の大刀を形作る。
「『終炎の断刀だんとう』!」
シェルナンドが自分に何が起こっているか分からない内に、その大刀が真っ直ぐ振り下ろされる。

最もらしい表現をすれば、地面に叩きつけられた。

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