天魔界戦

皇神凪斗

第8話 力の差

ロキに雷を纏った水流が襲いかかる。
「『極魔・巨岩の腕ギガント・アーム』!」
ロキの手前の地面がヒビ割れる。
それはすぐに大きくなり、下から何かが押し出てくる。出てきたのは、腕の形をした巨大な岩。
3人を影で軽く覆い尽くす程の大きさだ。
その腕は拳を握り、水流を地面に叩きつける。
凄まじい風圧で土煙を巻き上げ、カゲは尻もちをつく。
カゲは悟る。ロキには勝てないという事を。
シェルナンドはそれを察した。
「下がっていろ。俺様一人で相手をする。」
カゲの中で復讐したい気持ちと死への恐怖がぶつかるが、やはり恐怖には勝てない。
「・・・すまない。」
シェルナンドは数歩、前へ進む。
「2人を相手するつもりなど無かったのだろう?」
「人を殺したいと願うなら、自分の命ぐらい賭けてみろ。という事だ。
お前は・・・覚悟が出来たか?」
「上等だ!!」
水銀がシェルナンドを覆う。それは、羽のついた鎧と槍になる。
さらに、その鎧から水銀が分離し、新たに鎧を作る。
細胞分裂のように鎧は増えていく。
十数体になった鎧は一斉にロキへ襲いかかる。
「ほう。面白い。」
ロキの姿が掻き消える。一瞬で鎧の背後に飛び乗り、刀を振る。
すると、鎧は四肢バラバラになって水銀へと戻る。
「空中へ出るとは、馬鹿め!!」
足場を失って無防備に見えるロキへ、鎧は突撃する。
「フッ。」
鎧が槍を突き出す。ロキは見えない床でも踏むかのようにして、それを躱す。そして、槍を持った腕を切り離した。
シェルナンドは驚きつつも、追撃を続ける。
ロキは刀の柄を握る。
「『骸苦髏太刀』!」
魔刀の刃が光り出す、それと同時にロキの左手に刀の柄が現れる。しかし、柄のみである。
今度は魔刀の2mある刃が『縮んでいく』
左手に握った柄はそれに反比例して、刃が『生えてきた』
「刀が分散しただと!?」
「『剣技 死の舞踏』」
二本の刀を巧みに操り、鎧を切り刻んだ。
残ったのは──────否、残された鎧はシェルナンド本人が着ている物だった。
「もう終わりか?」
「貴様!舐めやがって!」
シェルナンドはムキになって、槍を構え突進する。
「『終炎─────』」
ロキの左手から漏れ出す黒い炎のようなものは、大きく膨れ上がり、獣の爪を形作る。
「『─────残爪』」
素早く動くシェルナンドを黒い爪は確実に捉えた。
鎧と共にシェルナンドを弾き飛ばす。
「ぐおぉ!」

倒れたシェルナンドは、水銀の鎧の半分が散っていた。

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