天魔界戦

皇神凪斗

第16話 契約者

天使が光の粒子となって空に消えると、太陽が少しずつ登ってきた。
三人を救った『男』は共に朝食を取る事にした。
「ありがとうございます。おかげで命拾いしました。
何かお礼をしたいのですが、今は持ち合わせがなく・・・。」
「いいよ。さっきも言ったが、一箇所に留まるような生活はしてない。
次いつ会うか分からんし、忘れてくれ。」
レミアールは一度礼をする。
「そう・・・ですか。
・・・失礼ですが、少し質問しても?」
「ん?どうしてだ?」
『男』は少し首を傾げる。
「・・・『神器』や『魔具』を持つ人間として、あなたを見極めておきたいので。」
「まあ、構わねぇよ。特にやましい事も無いし。」
二人が話す中、サリムとルーズは朝食を作る。
「なんか、話し方までアルマにそっくりだね。」
「あぁ。加えて、只者じゃねぇ感じもする。」
レミアールは質問を口にする。
「まずは名前を聞いても?」
「あー・・・、親の着けた名前なら捨てちまったんだよな。
それでも呼ぶならロスト名を失った者と呼んでくれ。」
「ロスト・・・では、さっきの『聖剣』について。
何処で手に入れました?」
『エクスカリバー』は所持者のアルマ自信が『レーヴァテイン』と共に封印したので、アルマが手放さない限り他の者が手にできるはずは無い。
「・・・・・・・・・。」
「言えないことなんですか?」
ルーズが簡単な焼きパンを持ってくる。
「ほれ、あんたの分だ。」
「おぉ、ありがとな。」
《むうぅぅぅぅ・・・!おい!わしの分はまだなのか!?》
またしても少女の声がした。
「さっきの声・・・、やっぱ近くにいるみたいだね。」
「お嬢ちゃんの分もあるぞ?だから隠れてないで出てきてくれないか?」
ロストが困った顔をして、頬を掻く。
「ま、良いだろ・・・出てこい!」
《うむ。》
直後、ロストの影が立ち始める。
地面に映し出されるだけの影が、立体となってくる。
「な、なんだ!影の中に!?」
その袋のような影を破いて、『少女』は姿を現す。
青紫色の長い髪色にまるで死人のように白い肌、その上にゴシックドレスを着た少女はムスッとした顔で、ルーズを睨む。
「ど、どうした?何か俺の顔に何か付いてるのか?」
《その手の物を寄越せ。》
「あ、あぁ。ほいよ。」
ルーズが近づくと、奪うようにパンを取る。
《やっと食える。全く、待たせおって・・・。
む!美味い!調度良い焼き具合いじゃ!!》
「・・・満足してるみたいだし、これでいっか。」
レミアールは唖然としていたが、ロストの方へ向き直る。
「彼女は?ただの少女には見えませんが・・・。」
「御明答・・・こいつは悪魔だ。俺と契約を結んだ・・・な。」
「『悪魔の契約者』・・・!!初めて見ました。」
「だろうな。天使や悪魔の実力を知った上で逃げないのは無謀も良いとこだ。」
『契約者』、その名の通り天使や悪魔と契約を結んだものを言う。
「まさか!さっきの『聖剣』も彼女が!?」
「う、うん。どうした急に焦って。」
「そんな!!『神器』や『魔具』が複製されているなんて!」
「おいおい!!待てって!!『複製』ってなんだよ。まるで同じ『聖剣』が二本あるみたいな言い方じゃねーか!」
ロストはアルマとエクスカリバーは知らない様だった。
「俺達の知り合いにその『エクスカリバー』を持つ奴がいてな?俺の目の前で『封印』してたんだ。だから、あんたが持ってるのがかなりヤバい事に見えるんだよ。」
その後、アルマ達が天使の施した『封印』を解き、簡単に経緯を説明して、再度人の届かない場所にある事を伝えた。
「ほぉ〜。『アーサー』の孫ねぇ〜。」
「あんたみたいな旅人でも、知ってるのか?」
「まあな。」
「・・・それで、あなたの持っているそれは、『複製』された物なのでしょうか?」
レミアールは少し険悪な雰囲気でその問いをする。
「・・・ま、そんな所だ。だが、最初に断っておくと、俺の知る限り『複製』は俺だけしか持っていない。例え、俺の持ってる『複製』が奪われても、今はそいつと『契約』してる俺以外には使えない。」
「ふぅ・・・。てことはどっかの国が『神器』や『魔具』を持った凶悪集団を持つってことは無いんだな。」
「いえ、例えば多くの『神器』を持つ天使が人間にそれを授けたとすれば─────」
《それはないじゃろう。『神器』、それに『魔具』を生み出すにはかなりの力を要する。それをいつくもいくつも持っている悪魔などほとんど力を持たず、直ぐに死に絶えてしまうわい。》
「でも、お嬢ちゃんだって三つも持ってるだろ?『聖剣』を持ってるのは気になるが・・・。」
《それはわしの『能力』で作ったものじゃ。対して力は使わんよ。》
「『能力』?魔法の事か?」
《いいや、お前達風に言うなら『神の力』と言った所かの。『悪魔』にはそれぞれ独自の『能力』があるのじゃ。》
「それで、お嬢ちゃんの力が『神器』や『魔具』を『複製』する力だった?」
《まあ、そういう事じゃ。わしの力、いいや、名前は───────

パンドラと言う。》

その少女パンドラは自慢げな笑みを顔を浮かべた。

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