天魔界戦

皇神凪斗

第8話 名誉

カイトが突き出した槍状の右手に対し、シェルナンドは剣を叩きつける。
辺りに氷の削れる音と水銀の蠢く音が響き渡る。
「!!・・・まだ押し切れないか!」
「舐めるなよ!!これで終わりではない!!」
シェルナンドは左手に持つ盾を変形させる。
ぐにゃぐにゃと伸び続け、細くなっていく。すると、もう一本の剣を作り出した。
「その内臓をばら撒いてやる!」
シェルナンドはカイトの槍を受けながらもう一つの剣を突き出す。
「カイト君!!」
「間に合わない・・・!!」
剣先がカイトに触れる。
その瞬間。

ドゴオォォォォォン!!!

大きな爆発音。それと共に大きな土煙が舞い、視界が遮られる。
「な、何だ!?」
「カイト君!!無事かい!?」
「俺様の邪魔をしたのはどこのどいつだ!!」
騒然とする一同。ゆっくりと土煙が晴れる。
カイトとシェルナンドの間に『グラン』が立っていた。
「グラン、貴様・・・!!」
シェルナンドは怒り、その腕を振るおうとした時、違和感に気づく。剣が異様に軽い。
すぐに目を向けると理由がハッキリする。剣が折れていた。根元からほとんどが。
そして、カイトの槍も粉々に砕け散っていた。
「馬鹿な・・・俺の氷がこんな簡単に・・・?」
「邪魔をしたからには正当な理由があるんだろうな!!グラン!!」
シェルナンドは剣を投げ捨て、グランの胸元に掴みかかる。
「・・・てめぇこそ。何考えてやがる。」
「・・・何?」
グランの腕が動く。しなやかに流れるような動きで振り上げられ、シェルナンドのバイザーに叩きつける。
殴られたことにシェルナンドが気づいた時、肩から上の鎧は全て砕け散っていた。
「なっ──────ぐわぁぁぁ!!」
「お前は何の為に戦ってんだ?ユカリの為か、シャドウとバラールの為か?」
シェルナンドは血を吐き、グランを睨みつける。
「・・・・・・。」
「てめぇの為にしか戦えねぇ奴にあいつロキは倒せねぇぞ。」
「・・・ふん。・・・俺様は部屋に戻る。カゲとバラールを頼む。」

誰も動かぬ中で一人シェルナンドは去っていった。

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