天魔界戦

皇神凪斗

第67話 真実

二人は森の中で話をしていた。ヒューザ村からやや離れた所にある、ロキの家の近くだろう。
まわりには誰一人いない。ロキとアーサーの二人だ。
「お前に頼みがある。」
「・・・頼み?」
「そうだ─────

──────アルマを救って欲しい。」

アーサーから出た言葉は驚きだったが、ロキの表情に変化は無かった。
「何故、俺に頼む。あんたは強いはずだ。」
彼らヒューザ村の人々を止める方法は確かにある。しかし、俺はもう剣で人は斬らないと決めた。そして、他の方法も思いつかない。」
「だが、アルマはただの人間に負けるとも思えない。」
「彼らは薬でアルマを眠らせるつもりだ。あの子は優しい・・・どんな薬が盛られていても、断ること無くそれを飲むだろう。」
それは、彼らの恐怖殺意の現れだ。そうまでして殺しておきたい程、アルマとロキは恐れられていた。

「分かった。
・・・だが、やり方は俺が決める。」




「確かに俺の誕生日に、乾杯として高いジュースを飲んだ。俺も中身には気づいてたけど、それはあいつらの選択で、殺されるのが正しいと思っていた。
・・・でも目が覚めた時には全てが燃えていた。あの日、俺が殺される日に。俺以外の人間が全員殺されたんだ・・・。」
全員、息を呑んで聞き入っていた。思いもしない真実に、驚くしか無かった。
「ロキ君がとった行動・・・。アルマ君を生き残らせて、自分への復讐心でアルマ君を強い人間に成長させた・・・。
僕達は、最後の最後まで彼の手のひらの上で踊っていたみたいだね。」
「アルマ!!何故それを先に言わなかった!!」
「落ち着けってカイト。もしアルマからそれを聞いたら、『従兄弟と分かったから殺したくない』って聞こえるだろ?」
怒るカイトをルーズがなだめる。
「そうだね。それにこの街スティルマを守る人間として、彼は放っておけなかった。アルマ君が迷ったとしても他の誰かがやっていただろう。」
そこでアルマはルーズへと顔を向ける。
「ま、そういう事だ。ルーズ。」
「ん?あぁ、ロキからすれば、あの組織は俺達を止めてアルマとタイマン張る状況を作り出すための物で。アルマが十分強くなった今、もうロキの目的は成せられたって事か。」
「つまり・・・無法者デスペラードはもう現れないって事ですか?」
またアルマに視線が戻る。
「多分なぁー。またタイマン張りたくなって作る可能性はありそうだけど?」
「かなり低そうな可能性だな。
おっと、もう一つ用事があったんだった。」
そう言うとルーズはメルの方へ向いた。
「?・・・私ですか?」
「そうそう。今回の報酬として、金とは別にこいつを渡しておく。」
「もしかして・・・杖の神器!?」
ルーズが取り出したのは『天杖 ミストルティン』、ムラサキから奪ったものだった。
「え!?こんなの受け取れないです!!」
「いや、受け取って貰わないと俺が困る。」
「どういう事ですか?」
「神器や魔具を回収すると、流石に上に報告するじゃん?もちろん神器も回収されるじゃん?
そうすっとー、管理政府の人間で適性試験が始まるのよ。それで一々本部に行くのめんどくさいし、報告書書くのダルいし。
あと、これからも神器や魔具を使う人間が現れるかもしれない。対抗するのに、お前らの一人くらい持っといた方がいいんじゃないか?」
「最後のそれ、今思いついただろ。」
アルマは真顔で問うが、ルーズは無視する。
「てなワケで、受け取れよ。メルちゃんなら使いこなせると思うぜ?」
「・・・・・・ありがとうございます!!」
メルは世界遺産の彫刻品でも受け取るかのような動きで『ミストルティン』を手に取る。

「んじゃ、アルマと仲良くな〜。」
「へ?」

用が無くなりさっさとその場から立ち去るルーズ。
「カイト君。僕らも食べ物取りに行こうよ。」
「?・・・まあ、構わんが。」
「え?あの、ちょっと?」
二人だけ残されたアルマとメル。
アルマは気にしていないが、メルはルーズの残した言葉に羞恥心を隠せない。

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