天魔界戦

皇神凪斗

ムラサキ vs ルーズ その3

天杖てんじょう ミストルティン』
ムラサキが見せたものは金色の枝をそのまま持ってきたような杖だった。
一方向を目指しているものの、曲がりくねり数度枝分かれしている様な形状だ。
「今度はこっちから行くわよ!『黒炎こくえん 猛進獣』!!」
ムラサキの前に出現した黒い魔法陣から、それが召喚の円であるかのように黒い炎が飛び出す。
炎は獅子の形を模しており、四本の脚で地を蹴りルーズへと突進する。
「『炎天・照射』!!」
今度はルーズの前に赤い魔法陣。現れたのは小さな太陽で、ルーズが杖を振ると輝きを増した。
次の瞬間、黒い炎に向かって炎が吐き出される。ホースで撒く水のように一つに収束した炎が一直線に黒い炎を襲う。
黒い獅子は歩みを遅めるが、触れる炎を燃やして行く。
「何をしてるの?『黒炎』は魔法を燃やす。魔具を使うなら神器を使う。もうあなたに魔具のアドバンテージは無いのよ?」
「・・・言ったろ?『魔法を倍』にするって。」
「はぁ?」
突如、ルーズの左隣に太陽が出現する。
ムラサキが驚く間も無く、側面から炎が照射される。
黒い炎には一切触れず一直線にムラサキへと向かう。かわす時間は無い。
「『私を守りなさい』!!」
ムラサキがそう叫ぶと、『ミストルティン』が光を放ち、緑色の泡のようなものがムラサキを包み込む。
それはルーズの魔法を簡単に受け切った。同時にムラサキの放った魔法も消える。
「それが、神器の能力か。」
「そうよ。この『宿り木やどりぎの加護』がある限り、あなたの魔法は私には当たらないわ。」
「おもしれぇ。神器と魔具の戦いと行こうじゃねぇか!!」
「戦い?違うわ、これは鏖殺よ!!」
ムラサキが杖を構えると、目の前に四つの魔法陣が現れる。
「四つ同時!?マジかよ!!『魔防壁』!」
ルーズの周りを黄緑色の魔力が覆う。
「『黒炎・四面楚歌しめんそか』・・・。」
ムラサキの前の魔法陣から黒い炎が飛び出す。瞬く間にルーズの周りへ。
それぞれ、地面を焦がし、周囲を回り、空から急降下し、正面から本命の一撃が襲う。
ルーズの『魔防壁』は、黒い炎でじわじわと燃やされていく。
「『魔防壁』!!」
ルーズは更に一枚、内側へ『魔防壁』を展開する。
「そんなことしても無駄よ。あなたが魔法を解除しない限り、その魔法から魔力を奪い燃え続けてあなたを襲う。」
ルーズは一人、苦笑する。

「こりゃ、ちょっと・・・ヤバいな・・・。」

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