天魔界戦

皇神凪斗

第57話 絶対強者 ロキ vs 黄金の拳 アルマ

アルマがグランギルドで活動を開始してから、闇の世界でアルマの株は上がっていた。
悪の所行を生業とする彼らにとってギルドの危険性は無視できない。
光る右腕であらゆる物を粉砕する。
そうして付けられたアルマの二つ名が『黄金の拳』だった。




「『魔装』!!」
アルマはロキへ一直線に向かっていく。
対するロキは左手を前に出す。
「『フレア・ブレス』」
赤い魔法陣と共に現れたのは炎。ロキの前を焼き尽くすように広がり、アルマへ襲いかかる。
「弾け!『エクスカリバー』!!」
アルマが剣を振り払うと、炎は散り空気に溶けて行った。
「お前の魔法がどれだけ強力でも、『エクスカリバー』がある限り無駄・・・っ!!」
その瞬間、何かを感じ取ったアルマは頭を傾ける。
直後、見えない何かがアルマの眉間があった所を通過する。
「その聖剣で弾けるのは『魔法のみ』ただ魔力を動かしているこの攻撃は防げないだろう?」
「・・・魔法は囮かよ!」
ロキの十八番である魔法を囮に使うという事は、本気である証拠だ。
表情はいつもの様に余裕の笑みを浮かべてはいるものの、その瞳に油断は感じられない。
「そっちか!」
アルマは剣を身体に持っていく。すると剣に重い衝撃が加わる。
押し返そうと足に力を入れる。
「ぐっ!!」
アルマの腹に魔力の拳がねじ込まれる。
そして、ロキが左手を振るうと、壁のような魔力が左側からアルマを叩き、弾き飛ばす。
壁に叩きつけられると同時にその壁を蹴りロキから距離を取る。

ただ近づくだけじゃダメか。色んな方向から攻撃されると感じ取れねぇし、魔法はあまり使いたくない。
となれば────

アルマは剣を水平に振ると、空中に大量の羽が舞う。まるで天使が羽ばたいたかのように。
「『天の雫てんのしずく』!!」
剣先をロキへ向けると、全ての羽が光り出し一直線にロキへ向かう。
それは一つ一つが鋭い刃物で出来た雨のように襲いかかる。
「聖剣の力か。・・・『剣技 七閃』!」
アルマにはロキが三、四度剣を振るったように見えた。
すると、雫が数十弾かれる。残りはロキの身体すれすれを通り過ぎていく。
「お前、魔装してたのか。魔装を腕に集中させて・・・。」
『魔装』は持続に魔力を使う。となれば本気で戦う場合、戦闘開始時に発動するのがベストだ。
「体内での魔力の生成は魔力の貯蓄量が多い程多くなる。・・・何もしなければ魔力暴走してしまうのでな。」
魔力暴走・・・限界以上に魔力を貯めた魔道士がその魔力を体外へ放つべく、その者の意志に関係なく魔法を暴発してしまう事。
ロキ程の魔力の持ち主が暴走した場合、どんな被害が出るか分かったものでは無い。
その為ロキは生きる上で常に魔装をしている。
「人の心配をしている場合か?アルマ!」
魔力がまたアルマを襲う。
「くっ!・・・『天の雫』!!」
距離を取りながらそれを放つ。ロキはまた剣を使い弾き、全くダメージを負わない。
アルマは地面に拳を叩き込む。魔力で強化されているはずの床を木板のように割る。
そうして宙に浮いた瓦礫をもう一度叩き、ロキへ飛ばす。
同時に走り出し、距離を詰める。
ロキは剣で瓦礫を簡単に切り刻んでしまう。
「ここだ!!」
ついに間合いを詰める事に成功する。
アルマは剣を振り上げるが、その前にロキの剣がアルマの肩を切り裂くべく、突き出された。
ギリギリ回避するアルマ。しかし、体勢を崩す。
そこに振り下ろされたロキの剣を防ごうとすると、大きく剣を弾かれる。
「お前が弾けるのは『剣に触れた魔法』だったな?・・・『幻竜咆哮げんりゅうほうこう』!!」
ロキの前に風が吹き荒れる。
それはどこか、竜の頭を形作っている気がした。
『グガアァァァァァ!!!!』
竜が叫ぶ。大気が震え、視界が歪む。
アルマの身体は異常な程の振動が襲い、後ろへ吹き飛ばされる。
玉間の扉を粉々に砕き、床に叩きつけられる。
喉の奥から血が登ってくるのを感じる。
「ぐはっ!ごほッごほッ!!・・・あの声、まさか。」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品