天魔界戦

皇神凪斗

第42話 決意

「その後、私はあの方に短剣や魔法の扱いを教わり、私に首輪を付けた人を全員殺しました。」
メルはただ、何も言わず聞いていた。
やはり、ロキと言う男の真意が分からない。
「何故、という顔をしていますね。
やることをやり終えた後、私も問いました。」
「・・・それで?」
「彼はこう言いました。『怒り、復讐の心てま人はどこまで強くなれるか。それが知りたかったからだ。』」
そこで言葉を切るようにメルは声を発する。
「そんな・・・!!それじゃあ、シャールさんは利用されたみたいじゃないですか!?」
つまりはアルマを強くするための実験に利用されていたと、そう解釈出来る。
しかし、シャールは首を横に振る。
「彼は次に『お前には充分教えた。充分働いてもらった。後はお前の好きにするがいい。』と言いました。」
「それは・・・!?」
「はい。私の人生で初めて、『自由』を貰いました。
確かに、『奴隷』と『下僕』は何も変わらないかもしれません。
しかし、私は彼に救われ、彼に育てられました。それに気づいた時、同時にこの気持ちに気づきました。」
自分にとってのヒーローとは人それぞれ。
正義の道をゆく優しい勇者、または闇の道をゆく非道な人殺し。
メルとシャールは別々のヒーローに同じ感情を抱いた。
「メルさん。」
「はい・・・?」

「アルマ君の事が好きですか?」

「・・・はっ!な、何を!
いや!えっと・・・そのぉ・・・。」
シリアスな雰囲気だったのが、シャールの反撃によりメルの顔は真っ赤になる。
「アルマ君は鈍感ですけど、ちゃんと気持ちには答えてくれますよ。」
「あ、そう言えばシャールさんはどうやってアルマ君を?」
「あの方からの指示で『奴を騙すのは簡単じゃない。奴を俺と同じ扱いで接しろ。』と言われました。よってここまで隠し通せたという事です。」
「それで、どうしてアルマ君の話に?」
シャールは、くふっと笑った。
それはメルが見る彼女の心からの笑顔だった。

「・・・仕返しです。」




シャールと話を終えた後、看守には何も収穫はなかったと伝え、外へ出る。
そこには壁に背を預け座っているアルマの姿があった。
さっきの話を思い出し、顔が熱くなるが何とかそれを抑え込み、声をかける。
「アルマ君。」
「・・・ん?メルか。どうした?」
いつものチャラっとした顔でなく、悩みを抱える青年の顔だった。
「アルマ君こそ、どうしてそんな顔をしているんですか?
聖剣の封印を解けば、彼に対抗できるし。情報屋さんにアジトを調べてもらっています。
もう少しなんですよ!」
「・・・そうなんだけどな。カリナ・・・じゃなかった。シャールを見て思ったんだ。
あいつのは演技だとしても、本当に助けてもらったんだ。数え切れないくらい恩がある。
なのに、俺はシャールを殺そうとしてた。
それは本当に正しいことなのか?それでヒューザ村の人々の心は救われるのか?」

『復讐は何も生みません。
あなたは彼を殺した後、どうしたいのですか?』

アルマは迷っていた。かつて、レミアールに言われた事、自分の行動に対する疑問。
「アルマ君!!」
「んあ?」
「アルマ君は何の為に戦うんですか?
自分の復讐の為ですか?それとも彼らにおびやかされている人々を救う為ですか?」
「!!・・・。」

そんな事、迷うまでもない・・・。
確かに復讐したいと言う気持ちはある。
しかし、それよりも大事なことは今生きている人々だ。
そうとなれば答えは一つ。

「人々を守る為だ!!」

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