天魔界戦

皇神凪斗

第40話 氷の姫

アルマはスティルマの中を歩いていた。
目的地は一ヶ月ほど前まで居候していた家だ。家の主は『カリナ』、スティルマの事を何も知らないアルマに色々な事を教えてくれた優しい女性。
見た目は子供なのに、一流のメイドのような家事スキルを持つ。
彼女が他人と話すのを見たことは無いがアルマに対してはとても親切な接し方をしてくれた。
何故そこまでしてくれるのかアルマは聞いたことがあるが微笑んで誤魔化された。しかし、その優しさは家族にむけるような愛情に近いものを感じた。
そのカリナにアルマは会いにいく。
理由はもちろん────




「一ヶ月前から何も変わってないな。」
その家はいつも通りの様子だった。庭には洗濯されたであろう服が干され、芝は綺麗に切りそろえられている。
ガラスの窓や外壁、ドアまでもがペンキ塗りたてのように清潔さを誇っている。
少し感動にひたっていると、突然ドアが開いた。
「あら?・・・アルマ君!久しぶりですね。」
出てきたのは当然ながら銀髪の美少女。
「カリナさん・・・。少し話がある。」
「話?なんでしょう?」
「俺は新街で『ロキ』と言う奴に会った。あいつは俺の前で『計画通り』だと言っていた・・・。
つまり、ヒューザ村が潰れたことからこの街に来ること。そして────」
アルマは一度呼吸をし、その言葉を口にする。

「あんたが・・・『氷姫シャール』なのか?」

その言葉を聞いて、シャールは驚きながらもやはりと微笑んだ。
「ええ、私は氷姫シャール。『あの方』の右腕と自負しております。」
「くっ・・・!」
アルマは自分で聞きながらもその真実に目を背けたくなる。
故郷の人々は皆殺され、スティルマに来て一番信頼していた人物。
その人物が果てしない憎悪を向けてきた『仇』の一人だった。
「それで、話は終わりですか?」
「いや、『聖剣』の封印を解く為に強力な魔導士がいる。
出来れば抵抗は───」
「いいでしょう。私に戦う理由はありません。」
「!・・・。何故?どうして戦わない?」
「『聖剣』の力を解放する。それであなたは強くなる。
あなたが強くなればあの方も喜ぶでしょう。」
「あくまであんたはそっち側なんだな。」
「ええ。・・・正直、そこまで辛い顔を見るとは思いませんでした・・・。
手足を切断くらいは覚悟したのですが。」
「『デスペラード』の連中は憎い。だが、あんたが俺にくれた優しさは本物だ!それをあだで返す事は出来ない・・・。」
アルマは葛藤する。憎しみと慈悲の合間で。
「早く・・・私を連行してください。」
「・・・クソっ!」
アルマはシャールに手錠をかける。

シャールはどんなも抵抗せずグランギルドの牢屋に入った。

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