天魔界戦

皇神凪斗

第38話 天使と悪魔

「ドロシーさん。これを。」
レイジは数枚の紙を手渡す。
それは小柄な鎧、キッドが持っていた紙だ。
メモ程度の大きさに、一つの魔法陣が描いてある。
「あら、懐かしいわね。これは『魔法札』、私が作ったものよ。」
アルマが首を傾げる。
「ん?『魔法札』ってなんだ?」
「この紙に一つの魔法陣と、それを一度だけ発動する程度の魔力が込められていて。魔法を使えない人でも簡単に魔法が使えるんだ。」
レイジが説明すると、アルマは驚いた顔をする。
「今時魔法使えないやついんの?」
微笑するアルマにドロシーは呆れた顔をした。
「あんたらが使ってるのは、私が分かりやすいように改変した物よ。本物の魔法はあんたじゃ理解できないわよ。」
そう言って箒をアルマの額目掛けて放った。
アルマはひょいとかわすが、自動追尾で見事にアルマの額に命中した。
そこで、メルは不思議そうな顔をした。
「そう言えば、その箒。神器か何かですか?」
「いいえ、これは魔力を『具現化』して箒を操っているだけよ。」
「婆っちゃんボケたか?魔力は『見えない』し『触れない』んだぞ?」
直後、ドロシーが腕を振るうとアルマが何かに殴られ吹っ飛ぶ。
「ふがっ!」
「肉体の時間を戻してるって言ったでしょ!いつでも20歳の天才脳だっての。」
「魔力を・・・『具現化』?」
レイジとメルは目の前の光景に驚くしか無かった。
「そうよ。私の体内の魔力は魔導を極めたおかげで電気の通らない純水の様にかなり混じりっけのない魔力になっているわ。
メル、魔法使ってて魔力が軽くなった感覚って分かる?」
「あ、はい。逆に苦手な魔法だと重く感じたりしますけど。」
「そんな感じよ。しかも魔力だから重力の影響も受けない。空中で固定すれば足場にも出来るわ。」
空中歩行、それを聞いてやっと起き上がったアルマは閃く。
「それって・・・!」
「ええ、あのガキロキも同じことが出来るわ。」
「!!・・・、彼の魔法はあなたと同レベルって事ですか!?」
「バカ言うんじゃないわよ!光魔法だけ使えないなんて中途半端なチンチクリンに私が負けるわけ無いでしょ!」
「俺、光魔法使えるぜ?」
「・・・あんたは闇魔法が使えないでしょ。」
「発動しないだけだっての!」
「それを使えないって言うのよ!!」
親子ではなく・・・祖母と孫の喧嘩に苦笑いするメルとレイジ。
そこでレイジは別の話を切り替える。
「そう言えば、『天使』というのは実在したんですか?
話からすると、本当のように聞こえますが。」
ドロシーは一呼吸置いた。

「えぇ、実在するわ。ついで言うと、『悪魔』もこの目で『見た』わ。」

天使と悪魔、その正確な姿形どころか存在すら不明な神話の一片。
それをこの魔女は目撃したと言う。
「本当ですか!?・・・でも、どうして人間の大陸に・・・?」
「分からないわ、けどあの時は────」

ドロシーは語った。
それは魔法が使える人間がドロシー含め、数えるくらいしかいなかった頃の話。
スティルマ王国に一人の殺人鬼が現れた。その殺人鬼は常に『刀』を持ち歩き、挑む者、又は強き者に挑み殺した。
最後は必ず『首を刎ねて』。
しかし、殺人鬼は強い刀使いと言えど、技術はそこまででもなく。刀を何度も変えていた。
そんな時『神器』と『魔具』の話を聞き、旅を続けスティルマ王国に来たという。
それらは人間の力では破壊出来ないという事だった。
そして、力を求めた殺人鬼の前に『悪魔』は姿を現した。
元々手に負えない殺人鬼は、悪魔の力を借りさらに強くなった。
彼を止めるべく立ち上がったのが『アーサー』であった。
その絶望的な強さの前に為す術なく敗北を認めようとした時、今度は『天使』がアーサーの目の前に現れる。
その天使は悪魔を止めに来たと言う。
そして授けられたのが『聖剣 エクスカリバー』だった。

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