天魔界戦

皇神凪斗

第29話 殲滅の魔法

黒い髪の男がアルマの肩に手を置くと、アルマの姿が掻き消える。
それを見たガゼルは嫌な顔をする。
「転移魔法で逃がしたか。面倒な事をしてくれる。」
「ここで死んでもらっては困るからな。」
「無駄な事を・・・。あの化け物黒死竜と戦った後でどこまで私の軍隊と遊べるかな?」
周りにいる戦士達はニヤニヤとしながら獲物を見せびらかす。
「さあ!殺せ!」
その合図を受け、ロキを殺すべく武器を振り回す男達。
しかし、ロキは地を蹴り宙へ。
ガゼルよりも高く飛び───
───空中で停止する。
まるでそこに見えない道があるかのように。
「!?・・・『ウイング』の魔法か?」
「いえ、やつが魔法を使っている気配はありません。」
「じゃあなんだと言うんだ?」
下で暴れている人間を気にする様子もなくロキは手を前に出す。
「『俺に従え』。」
ロキの手に風が纏わり付く。その手を竜人へ向ける。
そして風が槍となり竜人へと伸びる。
風の槍はその胸を簡単に貫く。
「────ッ!!」
竜人は目を見開き、口をパクパクさせた後赤黒い血を吐き出す。
何度か痙攣し、動きを止める。その後動くことは無い。
「チッ!・・・また『召喚の儀式』をするしかないか・・・。何をしている!早く殺せ!」
「は、はい!」
剣や斧は届かない、よって弓や魔法を放つ。
しかし、どれもロキに傷を与えず服が弾いてるように見えた。
ロキは全く気にせず『歩き始める』。
本当にそこに見えない道があるかのように、宙に足をつき、歩く。
「な、なんだ?なんなんだ!?」
戦士達は理解できない現象を前に恐怖を覚え始める。
ロキは歩き続け、新街の中心あたりで止まる。
「この街がお前の研究の要だろう?これ以上計画を邪魔されると面倒だからな。」
ロキは目を瞑り集中する。すると頭上に黒い魔法陣が現れる。その大きさは新街の直径よりも大きい。
目を開き、アルマを探す。
「まあ、死ぬことは無いだろうな?」
頭上の魔法陣が光る。
殲滅魔法マジックオブデモリション!『極魔・流星群メテオレイン』!」
その巨大な魔法陣より岩が出現する。
魔法陣に比べ小さいとは言え直径は2m程。さらに黒い炎の様なものを纏い落下する。
それで終わりではない。岩がその姿を全て晒してすぐ次の岩が出現。次から次へと降り注ぐ。
「・・・逃げろ・・・。早く!!」
アルマは叫ぶ。
「うぅ、うわあぁぁ!!!」
新街の元住民は慌てる。逃げるもの、恐怖でその場を動けなくなるものもいた。
しかし、降り注ぐそれは止まることは無い。
新街の魔法により補強された建物をまるでおもちゃのように潰す。地に埋まる。
その岩を上から来た次の岩が直撃し爆発する。
黒い炎があらゆるものを包み、燃やす。
ロキを追って新街へ乗り込んで来た戦士達はもう手遅れ。ガゼルも魔法で守られていたものの、岩の直撃によりその姿を肉片へと変える。
岩の爆発によって外壁が砕け、破片がアルマ達の元へ。
「『私に従って』!」
メルが地を手をつけると、地面からニョキニョキと樹木が生えてくる。
それは蜘蛛の巣のように枝を伸ばし、壁を作る。
何とか住民を守る事が出来た。
その時、後ろから足音がする。
「皆さん!大丈夫ですか?」
「こりゃ、偉いことになってんな〜。」
「ルーズ!レミアなんとか!」
「レミアールです!」
その二人に加え、一小隊が駆けつける。
「全員生きて逃がします!行動開始!」
「「「了解です!!!」」」
かなり統率された動きで次々と救助活動を行う。

その後一人も犠牲を出さすスティルマに避難する事が出来た。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品