天魔界戦

皇神凪斗

第21話 情報屋

その人物は人目がないなんて場所が数えるくらいしかない都会のスティルマで、そんな場所にいた。
迷路のような路地裏でルーズのメモがなければくぐり抜けられないだろう道とは言えない道を通り辿り着いた。
まさに彼に用がある者のみがたどり着く場所。
「あんたが情報屋か。」
「まあそんな所さ。それで?金はたんまり持ってきたんだろうな?」
その男は日陰でコートに身を包み、何やら楽しそうな笑みで座り込んでいた。
どう見ても20代、その髪はかなりクセがあるものの、ちゃんと洗っているのか綺麗なグレーだった。
もちろんこんな場所に風呂など無い。周りを見ても住んでいるようにも見えないが、ルーズが言うには必ずここにいるという。
「ロキという男と、デスペラードのアジトについて。」
「ほう。まずはロキという男について。金はこれくらいだ。」
「げっ・・・高くないか?」
「この男は政府の情報網でも捕まらない、裏の世界の人間。それなりの金は貰うぜ?」
しぶしぶアルマはギルドカードを差し出した。背に腹は替えられない。
「ロキ、裏の世界では人気の男だ。生まれた場所は不明で両親は既に他界、知られる限り家族はいない。噂では自分で両親を殺したとか。デスペラードを作ったのはロキ自身で、小さい頃から賊を潰しては親分をデスペラードに引き入れ拡大していった。
格闘、武器、魔法。どの戦いにおいても一流で、弱点がわからない事から通称『絶対強者』。」
「武器?なんか持ってたか?」
アルマは付いてきたカイト、メル、レイジに問うが、三人とも首を横に振る。
「噂なんだが、超激レアの『魔剣』を持っているらしい。使う事は本当に稀で、能力も不明だ。」
『魔剣』とは魔具の一種で特別な能力がある。
『魔具』とは悪魔が力の一部を封じ込めた、武器や装飾品の事である。本当に悪魔なんて物が存在し、それを作り出したのかは分かっていない。
逆に天使の力の一部を封じ込めた物を『神器』と言い、聖剣等と呼ばれる。
「・・・それで?デスペラードのアジトについては?」
「悪ぃな。それは調べてみるから少し待っててくれ。」
「調べてる?あんた自身で?」
彼は簡単に言うが知っての通り、デスペラードについて調べた者は消える。それも他人から買うのでは無く、自分で調べるとなれば尚更危険だ。
「あぁ、情報屋だからな。情報収集は生活の一部だ。・・・代わりと言うか、待ってもらうお礼としてこんな情報があるぜ?」
と言って、男は紙を一枚アルマに渡した。
どうして紙で渡したのか、それは驚かせる為だろう。
彼の目論見通りアルマは目を見開いて驚く。
そしてその男の胸倉を掴んだ。今度は怒りの眼差しで。
「この情報、誰かが買わなければどうするつもりだったんだ・・・!」
「どうするって・・・。価値がなくなれば忘れるだけさ。その情報を誰かが知っても知らなくても・・・俺には関係無い。金が入るか、消費期限が切れるだけだ。」
「くっ・・・!この!」
「アルマ君!!いったいどうしたんだ?」
レイジがアルマを引き離すと、アルマは裏路地に戻っていく。
「急いでくれ!結構やばい!」
首をかしげながらもカイトとメルはアルマを追う。
「うちの者がすみません。良ければ名前を聞いても?」
「まあ、情報屋でもいいんだが・・・。シュウトだ。情報屋ならシュウトだけで俺ってわかるさ。」
「ありがとうございます。では。」
レイジは一礼すると、三人を追いかける。

「さてと、これから面白くなりそうだな。」
シュウトは一人、そう呟いた。


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