天魔界戦

皇神凪斗

第18話 魔道士の闘い

訓練場にて、メルとマルクの戦いは始まる。
「「『魔防壁』!!」」
黄緑色の魔力が2人を丸く覆う。
魔防壁、相手が魔道士と分かっているなら初手は魔法を防ぐ魔法のこれ一択だ。
魔道士の戦いは、この魔防壁を破り次の一手で相手の体力を削る。メルの場合───
マルク兄さんはしばらく戦場で戦ってきたはず、その上小さい頃の魔法ごっこでも勝てたこともない。
相手が格上と分かっているなら長期戦ではこちらの手を把握されてしまう。
なら短期特攻で一気に畳み掛ける!
「『水波みずなみ』!」
メルの足元に水色の魔法陣。水の魔法を発動する。
メルの前方、大きな水の波が生まれマルクを飲み込もうとする。
「『ロックエッジ』・・・。」
マルクの土魔法。マルクの足元より剣のように尖った岩が突き出す。次々と岩が突き出てメルへ向かっていく。そして水を切り裂きマルクより逸らす。
「『ウイング』!」
メルの背中に白い魔法陣。無属性のウイングは一定時間飛行することができる。
横に飛びロックエッジをかわす。
「『雷槍』・・・。『風槍』・・・。」
マルクの右に黄色い魔法陣、左に緑色の魔法陣。
それぞれから雷と風がメルに向かって伸びる。
雷がメルの魔防壁を破り、風がメルを吹き飛ばす。
「きゃあ!・・・ま、『魔防壁』!!」
魔防壁を発動し、岩の間に身を隠す。
ダメだ。隠れていても勝てるわけない!
そう思い、すぐに岩の影からマルクの視界に姿を現す。
「『メテオ』!」
メルのやや上方に赤く大きな魔法陣。そこから炎を纏った大きな岩が現れる。
真っ直ぐマルクの元へ。
「『水衝波すいしょうは』・・・!」
マルクはメテオに手を伸ばす。その手から青い魔法陣。その魔法陣にメテオが触れると、水が蒸発する音と共に岩が砕ける。
そしてマルクは煙に包まれる。
「『土よ、私に従って』・・・。」
メルは地面より突き出している岩に手を触れた。その岩は変形し大きな手となり、煙の中のマルクに向かっていく。
煙の中で気づくのが遅れ、魔防壁を破られるマルク。
「ここだ!・・・『大花の光砲たいかのこうほう』!!」
メルの後ろにかなり大きな茶色の魔法陣。
その魔法陣より生まれるのは大きな花。
向日葵だ。その向日葵の中心に光が集まる。
太陽の光を、大地のパワーのような光が集まる。
それは直径3メートル程にもなる。
そして、一気に放出。レーザーとなりマルクを射止める。
姿が見えなくなる程の大きなレーザーに飲まれるマルク。
これはメルの奥の手、長年研究し自分で考えた奥義。
完璧に決まった。
そして、役目を終えた向日葵と魔法陣は儚く散った。


しかし、マルクは倒れていなかった。
「・・・え?な、なんで・・・。」
いくらマルク兄さんでもあそこまで完璧に決められて、無事なはずが───
「お前は昔から土魔法が得意だったよな。」
普通に立ち、普通に話すマルク。ダメージを受けているようには見えない。
「どのような魔法で撹乱かくらんしようとも、トドメは最も得意な魔法で最大の攻撃をしてくるはず。」
ま、まさか・・・。
「なら・・・。土魔法に対する結界を張るまで。」
結界。特殊な効果を保持するフィールドを作る魔法のひとつ。
結界は発動した本人が倒れるか、結界破りという特殊な魔法を使わなければ破壊することは出来ない。
メル1人ではどうしようもない。魔力もさっきの一撃にほとんど使ってしまった。
「では反撃だな。『嵐風槍らんふうそう』!」
マルクの風魔法。今度は普通の風槍と違い。まるで銃弾のように高速回転のかかった風槍。地面を削り、周囲の風を取り込みながらメルへと迫る。
勝利の女神など存在しなかった。
覆ることのない大きな経験の差。
───運命は私にこの場所は相応しくないと
そう判断したらしい────
目を瞑る。これからメルを襲うであろう痛みを覚悟して。

「『黄金の盾』!!」
「・・・!?」
聴こえるはずの無い声に目を開ける。そこには大きな背中が、いつの間にかアルマが来ていた。
アルマは黄金の盾を形成すると、手前に傾けて構える。
嵐風槍は黄金の盾の表面をガリガリと削りながら、上の方へ逸れて行った。
「チッ・・・。邪魔をしてくれる。」
「邪魔をするのは俺の特技でね。」
アルマはメルの方を向く。メルは恐る恐る聞いてみる。
「ど、どうして。まだ時間はあったのに・・・。」
「ギルドカードってな。ギルドの場所だけじゃなくチームの場所を教えてくれるんだ。」
「えっと、あの・・・。ごめんなさい・・・。」
「何、謝ってんだ・・・。これは俺達の戦いだろ?」
「獲物を独り占めするなよ?」
いつの間にかカイトも近くに立っていた。
「でも、私はもう戦えない。」
「いいんだよ。休んでろ。お前の場所は

────俺が作ってやる!」

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