天魔界戦

皇神凪斗

第14話 闇の世界で生きてきた男

アルマはジールを負かした。
ジールは鉈を捨て、驚いた顔でアルマを見ていた。
「俺を殺さないのか?」
「お前に恨みはない。無駄な殺生はしねぇ。」
「お前達を殺そうとしたんだぞ?」
「死にたいなら殺してやる。でもお前はあのゲスに従っても生きたいんだろ?」
「・・・感謝する。アルマ、お前は良き戦士で良き人族だな。」
アルマはその言葉に満足して剣をしまう。
とりあえず一難去ったが、氷姫が来てるんだったかな?
「アルマ君!!」
声に振り向くと、メルだった。メルは樹木の上に跨り、こちらに向かっていた。
そしてその背中には『レイジ』が背負われている。
レイジは気を失っている様だが死ぬほど大きな傷は無かった。
更に後ろには氷の壁を作りながら走っているカイトの姿があった。
「!!・・・レイジ?」
「あ、アルマ君!凄く強い人が二人追いかけてきてるの。」
「なんだこの巨人は!?」
ジールを見てカイトは少し驚く。
「そいつに戦う気は無い。それより強い奴らって?」
その時、カイトの作った氷の壁が爆発する。
煙の中から全身黒い服の男と暗殺者の格好をした女が姿を現す。
見た瞬間察する。
レイジをやったのはあの男だ。
「ほう、巨人を負かすとは。」
「ですがあれ巨人ではボスに手も足も出ないでしょう。」
「少しは遊べそうだがな。」
そんな事を言いながら歩いてくる2人。
「アルマ、どうする?」
カイトは珍しく自分から問いかける。
「あの男だけでもちょっときびいかな。」
「お前にしては弱気だな?」
そこで真っ黒な服の男は言った。

「久しぶりだな。アルマ?」

驚きの発言。アルマの知り合いであった。
いや、そのはずはない。アルマの故郷のヒューザ村にいた人間は皆殺しにされた。アルマの知り合いなどいない。
しかし例外が存在した。
「───お前!俺の村を襲った内の一人か!」
「その通りだ。───

俺はデスペラードのリーダーをしている。
ロキと言う者だ。」

こいつが・・・。こいつが命令して・・・。
こいつの所為で・・・!!
気がついたらアルマはロキに向かって飛んでいた。
「『黄金の剣おうごんのつるぎ』!!」
アルマの右手から白い魔法陣が現れる。
アルマから見て右に光の魔力が実体化して大きな剣の形を模していた。
その剣はアルマの横で浮遊し、腕を振り上げるとまるで掴んでいる様に剣も動く。
そのまま、ロキへ振り下ろす。
「『シャドウハンド』」
ロキの足元に黒い魔法陣が現れる。
暗くて見えないがロキの影辺りから黒い腕が出現し、アルマの黄金の剣を掴む。
更にもう一本腕が出て、アルマに向かって伸びていく。
「!!・・・。『黄金の盾おうごんのたて』。」
今度はアルマの左手に白い魔法陣が現れる。
同じく大きな黄金色の盾が現れ、アルマの前で浮遊する。
黄金の盾はシャドウハンドを受け止め、アルマとロキは拮抗状態となる。
その隙にカイトは『アイシクルランス』をロキへ向けて投擲する。
しかし、シャールの投げるナイフ数本がヒットし狙いが逸れる。
「『ロック・ジャベリン』!!」
メルが魔法を発動する。
メルの後ろの大きな茶色の魔法陣から岩、それも人なんて簡単に潰してしまいそうな大きな岩が三つ。ロキとシャールへ飛んでいく。
「あの女。中々の魔法使いだな。
『ストーム』」
ロキの足元に黄緑色の魔法陣が浮かぶ。
次の瞬間ロキとシャールを中心に竜巻が発生する。
アルマは黄金の盾でそれを受け弾き飛ばされる。
竜巻はかなり巨大化し、メルのロック・ジャベリンを粉々に粉砕した後。何事も無かった様に消えていった。
「アルマ君、無事ですか?」
「あぁ、問題ない。けど・・・」
三体二の状況だと言うのにかなり不利に感じる。
ロキはあれだけ強力な魔法を使ったと言うのに魔力が減っている気がしない。
あんな竜巻をいくつも作れろうものならいくらメルがいても防ぎきれるとは思えない。
ここは・・・
「逃げましょう。依頼はこの街の調査です。」
「くっ!・・・仕方ねぇな。」
憎みに憎んだ相手が目の前にいるというのに逃げるしかない。
しかし、あれだけの魔法を使うロキ相手に逃げ切れるだろうか。
その時、大きな背中が視界を埋め尽くす。
「逃げるならこのジールが時間を稼いで見せよう。」
「お、おい!あいつは俺より強いお前じゃ・・・!!」
「フンッ!戦士として己より強き者に挑むは当然の事。」
「アルマ!今のうちだぞ!」
カイトがアルマの服を掴む。
「ッ!クソッ!」
アルマは歯を食いしばりロキとは逆の方向へ走り出す。


遠く離れてからアルマ達が見たのは、腕や体を引き裂かれて血飛沫をあげるジールの後ろ姿だった・・・。

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