天魔界戦

皇神凪斗

第4話 アルマ VS カイト

アルマは大剣を縦に振り下ろす。
カイトは槍の柄で受け止め、いなして地面へ流す。そして、大剣を振り切ったアルマへ槍を突き出すが、アルマは左手で刃を掴み止める。
うぉ、手切りそう。
その状態から剣を振り上げ、槍を吹き飛ばす。しかし、カイトはそれを分かっていたのか、既に槍から手を離して魔法を唱えていた。
マジック・オブ・クリエイト創作魔法 アイシクルランス」
カイトの右手から水色の魔法陣が現れ、魔法陣から氷の塊が現れる。氷の塊は無骨ながらもカイトの槍のような形状に変わった。
その氷の槍を掴み、アルマへ突き出す。アルマは左手で思いっきり、それを殴る。
ガキン!と金属がぶつかる様な音がして、氷の槍は弾かれ、少しヒビが入った。
「おい、マジかよ」
アルマは壊れないことに驚いて、少し距離を取った。
先輩達は、暫く口を開けてポカンとしていたが、やっと頭が回ってきた。
「あいつ!鋼鉄すら砕く奴のストーンハンマーを手で砕きやがったぞ!」
「あの眼鏡もすげぇ!その拳を受けても砕けねぇぞあの氷!」
2人の腕前に盛り上がるギャラリー。そんなことは気にせず目の前の敵に集中する2人。
「俺の拳でも割れないとはな。その氷。」
形は無骨なので、魔力の扱いは雑なようだが、強度があるという事はそれなりに魔力を注いでると言うことだ。
「貴様もただの腑抜けでは無いようだな。」
氷の槍に魔力を流し、ヒビを直し、上から降ってくる槍を掴み両手で槍を構える。
アルマは剣を魔力で覆う。異常に硬い氷の槍を砕くためだ。そのまま、隙を見せず距離を詰める。そして勢いを殺さずあびせ切り。
カイトは氷の槍で受け止める。魔力に覆われたアルマの剣により、氷の槍は砕ける。
しかし、氷の破片はアルマの剣に集まり刃を覆ってしまう。いきなりの重さに反応できず地面に突き刺してしまう。
それを好機と見てカイトは槍を突き出す。
アルマは剣を地面に突き刺したまま、剣の影に隠れる。
アルマはカイトの攻撃を完全にかわし、体を回転させながら剣を抜き、氷のついた剣で野球のバットの如くカイトの脇腹に叩きつける。
「ぐはッ!」
肺の中の空気を吐き出し、吹っ飛ぶ。そして硬い周壁に激突する。
周壁はもちろん魔力で強化されていて、飛んできた勢いをそのまま反射され地面に叩きつけられる。
カイトは痛みを堪えながらアルマを見る。
と、そこには異様な光景が広がっていた。
「おい!メル、離せ!」
アルマの体は、地面から生えた太い樹木が絡みついていた。メルは木で出来た杖をアルマに向けていて、魔法を発動していたようだ。
「ダメです!今の、もし剣に氷が付いてなかったらどうするつもりだったんですか?」
「どうするって、氷ついてなきゃ殴んねぇけど」
もし刃が触れていたら内蔵をぶちまけていただろう。喧嘩だからといって仲間を傷つけたことに怒っている様子のメル。
「自然操作魔法・・・あの若さで?」
ギャラリーの1人が呟く。
自然操作魔法、それは『火、水、雷、土、風、光、闇』の各属性魔法。メルの場合は土属性の派生で樹木を操る。先輩のストーンハンマーやカイトのアイシクルランスと言う魔法のように、決まった形や形式で発動するわけでなく、火や水の派生で氷などを自在に操り剣にも盾にもすることが出来る。
しかし、便利な魔法なだけあってかなりの魔力操作力が必要となる。一流の魔道士だとしても、1から習得しようとしても1ヶ月はかかると聞く。
それを18歳で身につけたメルの実力は言うまでもないだろう。
「まあまあ、二人とも気が済んだだろう?まだ説明することがあるから、場所を変えよう。」
有無を言わさず、レイジは訓練場から出ていってしまった。
カイトは不機嫌そうに、アルマはメルに睨まれながら3人も訓練場を後にした。

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