天魔界戦

皇神凪斗

第3話 生意気なルーキー

アルマとカイトが戦闘モードに入り、周囲の空気が冷たくなった気がした。
「喧嘩するなら訓練場に移動しようか。」
手を叩き間に割って入るレイジ、緊迫した空気の中動けなかったメルは少しホッとした。
「訓練場?この街にそんなものがあんのか?」
水を差され、少し不満そうなアルマ。
「このギルドの地下だよ。とりあえず付いてきて。」
有無を言わさず歩き出すレイジ、アルマとカイトは睨み合いながら。メルは少し距離を置きながら付いていく。
かなり気まずい空気を放ちながら、新しい家とも言えるギルドの中を堪能する気配も無く歩く4人。メルはかなりガッカリしていた。
ギルドのロータリー中心にあるエレベーター。それもかなり大型の者に4人だけで乗り込む。そしてレイジがパネルを操作すると、エレベーターの周りを虹色の魔力が覆っていく。
「転移魔法?」
メルがつぶやくとレイジが反応した。
「そうだよ。地下とは行っても、実際は転移でギルドマスターが作った異空間に飛んでいるんだ。ちなみに君達が住む寮も異空間になっている。この都市にこれ以上大きい建物が作れなかったので、ギルドマスターが異空間を繋げて色々拡張してくれたんだ。」
なんか強そう。いつか戦ってみたいな。
とアルマが思っていると、虹色の魔力が消えた。到着したようだ。
訓練場と言っていたが。
「どう見てもコロッセオじゃん」
どこかの闘技場にしか見えない建物がそこにはあった。
中に入ると、直径10km程の円形の平らな砂地に、それを囲うように観客席が斜め上から見下ろす様な形で配置されていた。
既に訓練をしている者もおり、レイジが少し空けてくれないかと交渉し始めた。
その隙にメルはアルマに提案する。
「アルマ君。やめた方がいいよ。あの人強そうだよ?」
「だからいいんじゃねーか。それにああいう奴は早めに実力差を分からせた方がいい。」
楽しげに言うアルマにメルは説得を諦めた。
「あ!?新入りが喧嘩するから空けてくれだと?」
元々訓練場にいた者がわざと大きな声で話す。
「こっちは前の依頼でやらかして、やっと動けるようになったんだ。戦力になるかも分からねぇ新人にそれを邪魔する権利あんのか?あぁん?」
苦笑いして黙ってしまうレイジ。するとアルマが割って入る。
「じゃあ、リハビリに俺が相手しましょうか。先輩?」
先輩は待ってたと言うようににやりと笑う。
「おうおう。いいじゃねぇか。準備運動くらいにはなれよ?」
アルマが戦闘モードに入ると、カイトが声を上げる。
「待て、俺が露払いをしてやる。」
「そう急かすなって。3秒で終わらせっから。」
「なら問題ないな。俺なら2秒だ。」
なんて話していると先輩が明らかに怒りの表情を見せる。
「ガキが・・・。潰してやらァ!」
2人に向かって走り出す先輩。そして右手を出し唱える。
「マジック・オブ・クリエイト(創作魔法)!!『ストーンハンマー』!!」
その声に答えるように、右手から茶色の魔法陣が現れる。土魔法だ。魔法陣から石の塊が生まれ、だんだん細長く、先端は直径30cm程のハンマーが現れる。そのハンマーを両手で握り、アルマに襲いかかる。
「おい!そいつ止めろレイジ!新入りが殺されちまう!」
周りの者からはそんな声が上がっているが、レイジはアルマとカイトがどうするか観察しているようだった。
「こっちも行くぜ!『魔装』」
魔装、魔力で体を覆い、細胞を活性化されることで身体能力を上げる。魔法の基礎中の基礎、近接戦闘なら使うことが常識である。しかし、魔力が少なかったり、魔法の扱いにあまり慣れていない者は、変化も微妙なのでもしもの時に使うと言う者も少なくない。
魔装をしたアルマは振り下ろされるハンマーに対して右の『拳』を突き出す。
次の瞬間、先輩のハンマーは粉々に砕けた。
「!?工エエェ(゚〇゚ )ェエエ工!?」
大きく口を開けて驚く先輩に左の拳を突き出すべく力を入れた。
その瞬間、左腕が引っ張られる。
「何!?」
アルマが振り向くとカイトが自分をどけて、左手をグーの形にしているのが見えた。
そして先輩は、殴られ、吹っ飛ぶ。
「にゃろう!」
先輩が地面に着くより早く、アルマは大剣を、カイトは槍を異空間より取り出す。
先輩が地面に着く頃には2人の武器がぶつかっていた。

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