最強剣士だったけど、異世界では大したことなかったようです
狙われたゼロ
「みんな、聞いてくれ! 今日からみんなと一緒に魔法の勉強をすることになった…」「天月悠です、よろしくお願いしまーすッ」
「そういうことだからみんな、仲良くしてやってくれ! それじゃあ講義を始めるぞ、天月は奥の空いてる席に座りなさい」「はーい」
 ティアと魔法決闘をした翌日、俺はさっそく聖魔導学園に正式に入学することになり、晴れてこの学園の生徒の仲間入りをした。
 俺は先生に言われた通り大学の講堂のように、机を挟んで2列に分かれた通路の右側を登り、後ろの席へ向かう。
 通路の途中で机の真ん中よりに座っているセレスに、余計な事はするなとでも言うような視線を送られる。
 はいはい、わかってますよー、そんなこと。
 昨日、ティアとの魔法決闘が終わった途端、セレスに散々叱らた後、学園長に謝りにいかされたり、それはもう散々だった。
 しかも、その後さらに学園生活のルールを細かく教え込まれ、さらにプラスして俺個人に対してのルールもみっちり教育された。
「いい? 悠、よく聞いて、貴方が異世界人であることは誰であっても秘密にして!」「どうして?」
「聖アダムス神教がどこに潜んでいるかわからない以上、情報が漏れることを防ぐため。もしバレたらアダムを封印できる貴方を1番に襲いに来ることは間違いない」
「ひゃー、了解! 秘密にする。でも、魔力がないことってどうやって隠せばいいんだ? なんかの拍子でバレたりしないのか?」
「それについては幾つか考えてる、1番手っ取り早いのは『魔力譲渡』相手に魔力を渡すことなのだけど、やってみた方が早い」
 そう言って俺の右手を掴み、何やら力を込めるセレス。
 どうでもいいけどコイツ、冷たい手をしてんなー…
「どう?何か感じる?」「いや、全然何も」
「おかしい… 異世界人だから? もしかして、魔力の回路が開いてないから魔力譲渡が出来ない…?」
 何やら難しい顔をして独り言を呟いているが大丈夫だろうか?
 俺が唯一分かったことは、どうやら魔力譲渡は出来ないということらしい…
「えーっと… セレスさん? 大丈夫ですかー?」「ええ、どうやら貴方の魔力回路は入り口も出口もないみたいだから、魔力譲渡を行うには直接体内に送り込むしかないみたい」
「何か痛そう…」「痛くはない、けど今は出来ない。次の案にする」
…
……
………
「何だ、こんな便利なものがあるなら最初から渡してくれればいいのに」
 俺は首から下げたネックレスを手に持ちながら目の前のセレスに文句を言う。
「確かにマジックアイテムを着けるのは簡単、けど所詮はカモフラージュに過ぎない。貴方自身に魔力が与えられたんじゃないから誤解しないで」「へいへい」
…
……
………
「… っし、では今日の講義はここまで! 各自ちゃんと復習しておくように」
「お、終わった〜…」
 畜生… 何言ってるのか1割も理解できなかった…
 こんなものを毎日聞かされたら耳から血を吹き出してぶっ倒れちまう! よし、決めた! 明日からはサボタージュしよう。
「ねぇ、天月くん大丈夫? 顔色悪そうだけど」「ん? お前誰だ?」
 机の上に突っ伏した俺に声を掛けてきたのはどこにでもいそうな大人しそうな男だった。
「ごめん、自己紹介がまだだったね。僕はカーム・クロイス・アルベルト、皆んなからはカームって呼ばれてる」
「そっか、よろしくな! カーム」
「こちらこそよろしく! それより天月くん、昨日の魔法決闘凄かったね! この学園でティアさんに勝てる人がいたなんて驚きだよ!!」
「そうか?防戦一方だったぞ?」
「それは君が魔法決闘のルールをよく知らなかったからだよ、もう一度戦えばきっと勝てるよッ!!」
「あー、ありがとな。あと1つ忠告しておくけど、そういうことはちゃんと周りを確認してから言おうな」
「え?」
 カームの背後には鬼の形相をした女の影が1つ、だてに炎鬼姫と呼ばれてるだけはあるな、睨まれたら石になっちまいそうだ。あれ?それはメデューサだったけか?まあどっちでもいいか、餌食になるのはカームだからな。
「あら、随分と私も甘く見られたものね?」「えッ…!? ティ、ティアさん!?」
「カームとか言ったわね、何なら貴方が私の相手をしてくれてもいいのよ?」「いいいいいえッ!! とんでもないですッ!!丸焼きになるのはゴメンですッ!!」
 おいおいティア、そんな顔近付けんなよ。カームが怖がってるだろ? まるでヤンキーにカツアゲされてるみたいな図になってるぞ。
 俺はそんな2人のやりとりを横目に他人事を決め込むが、そこへティアの苛立ちの矛先が俺に向かってくる。
「ちょっと天月悠!? アンタも私に負けて晴れて下僕になったんだから、コイツにちゃんと説明しなさいよ!」「何を?」
「『俺はティアと魔法決闘で戦って負けました』って!」「カーム、俺はティアと戦って負けましたー、てへぺろ」
「下僕のくせに馬鹿にしてーッ!!」
「ちょっといい? 話があるの」
 俺がティアに絡まれているところを白馬に乗った王子様のように、颯爽と俺の手を取り教室の外へ連れ出そうとするセレス。
 ナイスだセレス! 俺が女なら惚れてるところだぜ!
「待ちなさいセレス! 私の下僕に何の用かしら!?」
 教室を出ようとしたところで炎鬼姫ティアから声が掛かる。だけど何でコイツは喧嘩腰なんだ?
「どうして貴女に話さないといけないの?」
 対するセレスもやはり売られた喧嘩は買うスタイルらしい、両者の間に不穏な空気が流れる。
 いち早くそれを察知した俺は、気付かれないようにそーっと教室にいるカームの後ろに立つ。
 カームが何で僕を盾にするんですか!?とか言っていたが無視した。
「天月悠は私の下僕よ? 下僕のことを全て把握しておく事は、主人として当然の義務でしょ?」
「貴女が1人で勝手に盛り上がっているだけ。悪いけど遊んでいる暇はないの」
「何ですってーッ!? もう許さないわよ、今日こそ白黒はっきりつけさせてもらうわ!」
「あのー… 」「「何!?」」
「い、いや… 天月くんがどこかに逃げましたよ…?」
「何ですって〜ッ!?」「あのバカ…. 」
 屋上の日光で暖まった屋根の上に寝転がり、直ぐ下の教室から聞こえる2人の怒った声を聞きながら目を閉じるのだった。
☆
 窓がなく暗くて狭い部屋の中央に小さな丸いテーブルが1つ、それ以外は何もない。
 テーブルの上にはお互いに何度も溶け合い、何度も固まったロウソクが部屋の中央を静かに照らす。そこに顔まで隠れるほどの深いフードを被った黒いローブを纏った男が1人、ロウソクの火をじっと見つめている。
「…はい、間違いありません。あの男、『天月悠』が聖剣エクスカリバーを引き抜き使用しました」
 黒いローブを纏った男以外にこの部屋に人はいない。しかし、男はまるでロウソクとでも会話をしているかのように話を続ける。
「そうです、聖剣エクスカリバーは模造品でした。我々の目を眩ませるためでしょう…  いえ、わかりません… ただ唯一の手掛かりは我々が3年掛けても抜くことができなかった聖剣エクスカリバーの模造品を『天月悠』がいとも容易く引き抜いたということです」
 フードの下の素顔はうかがい知ることができず、そこにはただ闇が広がっている。ロウソクの灯りが届かない部屋の闇と同化して溶けてしまいそうだ。
「…本当にあの男は異世界人なんでしょうか? …分かりました、少しでも可能性があるならば対処します」
 男がそう言い終えると、部屋のロウソクの灯りが全て消えた。
 部屋に残ったのは小さなテーブルと灯りが消えたロウソクだけだった。
☆
「ふいっと、いや〜よく寝た!」
 さっと上体を起こして体を伸ばし、あたりを見回す。ちょうど夕日が辺りを朱色に照らし、学舎の屋上から見る学園は元の世界で嫌になる程見たネオンの輝きと違い、どこか温かい感じがする。
「こんな景色が観れるとは、異世界も悪くないかな… 」「そう、随分長いお昼寝なのね」
「おうセレス!おはよう」「ふッ… 貴方の世界の人はみんなそうなの?」
「いや、そうでもないさ。それより何か息苦しくないか? まるでサウナにでもいるみたいな…」「サウナ?」
「あー、蒸し風呂?」「何も感じな… 伏せてッ!!」
 突如、大声を発したセレスが俺の前に氷の壁のような物を出現させると、爆音が響き渡り、氷の壁が粉々に砕け散らばる。
 何かでっかい炎の球のような物が物凄いスピードで飛んで来てセレスが出した氷の壁にぶつかったのは見えた。けど、どこから飛んで来た?
 炎の球が飛んで来た方向に目を向けると、学園の広場の真ん中に炎を纏った大男がこちらをじっと見つめていた。
「分かりやすくて結構、それにしてもセレスよく炎の球が飛んでくるって分かったな?」
「貴方が蒸し風呂みたいな感じがするって言ったから、魔法感知の範囲を少し広げてみたの。それがなかったら危なかった…」
「何にしても助かったよ。それにしてもアイツ、いきなり挨拶もなしに何なんだ?」
 よく見れば炎に包まれた顔は髑髏になっていて、よく出来た映画みたいなヤツだ。薄気味悪い感じがする。
「今の魔法とアイツの特徴、 まさか…」「ん? もしかしてセレスの友達か?」
「友達なんていない」「あー、なんかゴメン」
「それより今すぐ逃げて。おそらく、狙いは貴方… 聖アダムス教団が動き出した」「挨拶しなくていい?」
「早く行って!」「はーい」
 セレスに怒られて敵に背を向けて走り出すが、一体どこへ逃げればいいんだろうか?
 燃える髑髏が逃げる俺を追ってきて学園中が大パニックになりゃしないだろうか?
「さすがに死人が出たりは… しないよね…?」『ズドーン!!』
 俺が独り言を呟くのと同時に広場の正面の建物が土煙を上げながら崩れ落ちていく。
 至る所から生徒の悲痛な叫び声が聞こえ、逃げる足が段々と遅くなり、やがて止まる。
「逃げるのやーめたっと!」
 そう言って方向転換した俺は崩れ落ちた建物の方へ全速力で向かって行ったのだった。
「そういうことだからみんな、仲良くしてやってくれ! それじゃあ講義を始めるぞ、天月は奥の空いてる席に座りなさい」「はーい」
 ティアと魔法決闘をした翌日、俺はさっそく聖魔導学園に正式に入学することになり、晴れてこの学園の生徒の仲間入りをした。
 俺は先生に言われた通り大学の講堂のように、机を挟んで2列に分かれた通路の右側を登り、後ろの席へ向かう。
 通路の途中で机の真ん中よりに座っているセレスに、余計な事はするなとでも言うような視線を送られる。
 はいはい、わかってますよー、そんなこと。
 昨日、ティアとの魔法決闘が終わった途端、セレスに散々叱らた後、学園長に謝りにいかされたり、それはもう散々だった。
 しかも、その後さらに学園生活のルールを細かく教え込まれ、さらにプラスして俺個人に対してのルールもみっちり教育された。
「いい? 悠、よく聞いて、貴方が異世界人であることは誰であっても秘密にして!」「どうして?」
「聖アダムス神教がどこに潜んでいるかわからない以上、情報が漏れることを防ぐため。もしバレたらアダムを封印できる貴方を1番に襲いに来ることは間違いない」
「ひゃー、了解! 秘密にする。でも、魔力がないことってどうやって隠せばいいんだ? なんかの拍子でバレたりしないのか?」
「それについては幾つか考えてる、1番手っ取り早いのは『魔力譲渡』相手に魔力を渡すことなのだけど、やってみた方が早い」
 そう言って俺の右手を掴み、何やら力を込めるセレス。
 どうでもいいけどコイツ、冷たい手をしてんなー…
「どう?何か感じる?」「いや、全然何も」
「おかしい… 異世界人だから? もしかして、魔力の回路が開いてないから魔力譲渡が出来ない…?」
 何やら難しい顔をして独り言を呟いているが大丈夫だろうか?
 俺が唯一分かったことは、どうやら魔力譲渡は出来ないということらしい…
「えーっと… セレスさん? 大丈夫ですかー?」「ええ、どうやら貴方の魔力回路は入り口も出口もないみたいだから、魔力譲渡を行うには直接体内に送り込むしかないみたい」
「何か痛そう…」「痛くはない、けど今は出来ない。次の案にする」
…
……
………
「何だ、こんな便利なものがあるなら最初から渡してくれればいいのに」
 俺は首から下げたネックレスを手に持ちながら目の前のセレスに文句を言う。
「確かにマジックアイテムを着けるのは簡単、けど所詮はカモフラージュに過ぎない。貴方自身に魔力が与えられたんじゃないから誤解しないで」「へいへい」
…
……
………
「… っし、では今日の講義はここまで! 各自ちゃんと復習しておくように」
「お、終わった〜…」
 畜生… 何言ってるのか1割も理解できなかった…
 こんなものを毎日聞かされたら耳から血を吹き出してぶっ倒れちまう! よし、決めた! 明日からはサボタージュしよう。
「ねぇ、天月くん大丈夫? 顔色悪そうだけど」「ん? お前誰だ?」
 机の上に突っ伏した俺に声を掛けてきたのはどこにでもいそうな大人しそうな男だった。
「ごめん、自己紹介がまだだったね。僕はカーム・クロイス・アルベルト、皆んなからはカームって呼ばれてる」
「そっか、よろしくな! カーム」
「こちらこそよろしく! それより天月くん、昨日の魔法決闘凄かったね! この学園でティアさんに勝てる人がいたなんて驚きだよ!!」
「そうか?防戦一方だったぞ?」
「それは君が魔法決闘のルールをよく知らなかったからだよ、もう一度戦えばきっと勝てるよッ!!」
「あー、ありがとな。あと1つ忠告しておくけど、そういうことはちゃんと周りを確認してから言おうな」
「え?」
 カームの背後には鬼の形相をした女の影が1つ、だてに炎鬼姫と呼ばれてるだけはあるな、睨まれたら石になっちまいそうだ。あれ?それはメデューサだったけか?まあどっちでもいいか、餌食になるのはカームだからな。
「あら、随分と私も甘く見られたものね?」「えッ…!? ティ、ティアさん!?」
「カームとか言ったわね、何なら貴方が私の相手をしてくれてもいいのよ?」「いいいいいえッ!! とんでもないですッ!!丸焼きになるのはゴメンですッ!!」
 おいおいティア、そんな顔近付けんなよ。カームが怖がってるだろ? まるでヤンキーにカツアゲされてるみたいな図になってるぞ。
 俺はそんな2人のやりとりを横目に他人事を決め込むが、そこへティアの苛立ちの矛先が俺に向かってくる。
「ちょっと天月悠!? アンタも私に負けて晴れて下僕になったんだから、コイツにちゃんと説明しなさいよ!」「何を?」
「『俺はティアと魔法決闘で戦って負けました』って!」「カーム、俺はティアと戦って負けましたー、てへぺろ」
「下僕のくせに馬鹿にしてーッ!!」
「ちょっといい? 話があるの」
 俺がティアに絡まれているところを白馬に乗った王子様のように、颯爽と俺の手を取り教室の外へ連れ出そうとするセレス。
 ナイスだセレス! 俺が女なら惚れてるところだぜ!
「待ちなさいセレス! 私の下僕に何の用かしら!?」
 教室を出ようとしたところで炎鬼姫ティアから声が掛かる。だけど何でコイツは喧嘩腰なんだ?
「どうして貴女に話さないといけないの?」
 対するセレスもやはり売られた喧嘩は買うスタイルらしい、両者の間に不穏な空気が流れる。
 いち早くそれを察知した俺は、気付かれないようにそーっと教室にいるカームの後ろに立つ。
 カームが何で僕を盾にするんですか!?とか言っていたが無視した。
「天月悠は私の下僕よ? 下僕のことを全て把握しておく事は、主人として当然の義務でしょ?」
「貴女が1人で勝手に盛り上がっているだけ。悪いけど遊んでいる暇はないの」
「何ですってーッ!? もう許さないわよ、今日こそ白黒はっきりつけさせてもらうわ!」
「あのー… 」「「何!?」」
「い、いや… 天月くんがどこかに逃げましたよ…?」
「何ですって〜ッ!?」「あのバカ…. 」
 屋上の日光で暖まった屋根の上に寝転がり、直ぐ下の教室から聞こえる2人の怒った声を聞きながら目を閉じるのだった。
☆
 窓がなく暗くて狭い部屋の中央に小さな丸いテーブルが1つ、それ以外は何もない。
 テーブルの上にはお互いに何度も溶け合い、何度も固まったロウソクが部屋の中央を静かに照らす。そこに顔まで隠れるほどの深いフードを被った黒いローブを纏った男が1人、ロウソクの火をじっと見つめている。
「…はい、間違いありません。あの男、『天月悠』が聖剣エクスカリバーを引き抜き使用しました」
 黒いローブを纏った男以外にこの部屋に人はいない。しかし、男はまるでロウソクとでも会話をしているかのように話を続ける。
「そうです、聖剣エクスカリバーは模造品でした。我々の目を眩ませるためでしょう…  いえ、わかりません… ただ唯一の手掛かりは我々が3年掛けても抜くことができなかった聖剣エクスカリバーの模造品を『天月悠』がいとも容易く引き抜いたということです」
 フードの下の素顔はうかがい知ることができず、そこにはただ闇が広がっている。ロウソクの灯りが届かない部屋の闇と同化して溶けてしまいそうだ。
「…本当にあの男は異世界人なんでしょうか? …分かりました、少しでも可能性があるならば対処します」
 男がそう言い終えると、部屋のロウソクの灯りが全て消えた。
 部屋に残ったのは小さなテーブルと灯りが消えたロウソクだけだった。
☆
「ふいっと、いや〜よく寝た!」
 さっと上体を起こして体を伸ばし、あたりを見回す。ちょうど夕日が辺りを朱色に照らし、学舎の屋上から見る学園は元の世界で嫌になる程見たネオンの輝きと違い、どこか温かい感じがする。
「こんな景色が観れるとは、異世界も悪くないかな… 」「そう、随分長いお昼寝なのね」
「おうセレス!おはよう」「ふッ… 貴方の世界の人はみんなそうなの?」
「いや、そうでもないさ。それより何か息苦しくないか? まるでサウナにでもいるみたいな…」「サウナ?」
「あー、蒸し風呂?」「何も感じな… 伏せてッ!!」
 突如、大声を発したセレスが俺の前に氷の壁のような物を出現させると、爆音が響き渡り、氷の壁が粉々に砕け散らばる。
 何かでっかい炎の球のような物が物凄いスピードで飛んで来てセレスが出した氷の壁にぶつかったのは見えた。けど、どこから飛んで来た?
 炎の球が飛んで来た方向に目を向けると、学園の広場の真ん中に炎を纏った大男がこちらをじっと見つめていた。
「分かりやすくて結構、それにしてもセレスよく炎の球が飛んでくるって分かったな?」
「貴方が蒸し風呂みたいな感じがするって言ったから、魔法感知の範囲を少し広げてみたの。それがなかったら危なかった…」
「何にしても助かったよ。それにしてもアイツ、いきなり挨拶もなしに何なんだ?」
 よく見れば炎に包まれた顔は髑髏になっていて、よく出来た映画みたいなヤツだ。薄気味悪い感じがする。
「今の魔法とアイツの特徴、 まさか…」「ん? もしかしてセレスの友達か?」
「友達なんていない」「あー、なんかゴメン」
「それより今すぐ逃げて。おそらく、狙いは貴方… 聖アダムス教団が動き出した」「挨拶しなくていい?」
「早く行って!」「はーい」
 セレスに怒られて敵に背を向けて走り出すが、一体どこへ逃げればいいんだろうか?
 燃える髑髏が逃げる俺を追ってきて学園中が大パニックになりゃしないだろうか?
「さすがに死人が出たりは… しないよね…?」『ズドーン!!』
 俺が独り言を呟くのと同時に広場の正面の建物が土煙を上げながら崩れ落ちていく。
 至る所から生徒の悲痛な叫び声が聞こえ、逃げる足が段々と遅くなり、やがて止まる。
「逃げるのやーめたっと!」
 そう言って方向転換した俺は崩れ落ちた建物の方へ全速力で向かって行ったのだった。
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