マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで
顔を出すの? 出さないの? いえ両方です 4
 いい天気だ、まさにお昼寝日和。
 窓から射し込む暖かい日差しに当てられて、頬杖をついた手から何度か頭が落ちそうになっては戻す作業を繰り返している。
 このまま眠ることができればどれだけ幸せだろう。
 そうすれば放課後の風紀委員の手伝いも、ガップレの練習も少しは楽に感じることが出来るかもしれないのに…
「こら!入月くん、居眠りしない!!」「ふぁ〜い」
 素っ気ない返事を講壇に立つ委員長に向けて返し、小さく背伸びをする。
 今はホームルームの時間で、文化祭に向けてクラスの出し物を何にするか話し合っているところだった。
 先程から何度かドリームワールドへのサボタージュを試みているが、どの授業の先生より委員長が1番厳しく注意してくるため不可能であった。
 特に俺へのマークは常に外さない、流石、全国制覇を成し遂げた女子バスケ部の部長といったところか。
「では、この中で予算的に厳しいものを除外し、多数決でクラスの出し物を決めましょう」
 委員長はそう言うと、くるりと黒板に向き直り黒板消しで予算オーバーな案を次々に消していく。
「なあ… 勇志はどれにするんだ?」
 後ろの席の真純が耳元で小声で話し掛けてくる。
「そうだなー、単純にやりたいのを選びたいけど、俺たちはライブがあるから… 」
「となると、当日の人数が少なくても回せるやつがいいってことになるよな」
「まあそうなるな」
 この中で1番当日負担が少なそうなのは映画上映か作品展示だが、どれも文化系の部が取り組んでいるから、それと比べると見劣りしてしまうだろう。
 かと言って、メイド喫茶や出店などの飲食系は当日の裏方も忙しそうだし、残るは…
「お化け屋敷… かな?」「そうだよなー、他はちょっと難しいよな」
「とは言っても、お化け屋敷が素直に通るとは思えないが… 」
 教室の反対側の席の方では男子たちが既にメイド喫茶で団結しつつあった。
「いいか? お前たち、メイド喫茶を押さないなんてそれでも男と言えるのか!?」「そ、そうだよなッ!?」「俺はメイド喫茶を推すぜ!!」「俺も!!」
 小畑め、あいつが率先して周りの男子を取り込んでメイド喫茶同盟を組みつつある。  このままクラスの男子に伝染し、多数決の票をメイド喫茶に持って行かれたら不味い。早目に手を打っておくか…
「なあ、そこのお人や」「なんだ入月?」
 俺は近くの席の男子にそっと話し掛けていく。
「まさかお前もメイド喫茶に票を入れようなんて思ってないだろうな?」
「え、そのつもりだったけど?」
「そうか… 確かに女子のメイド服を見たいという気持ちはよく分かる」「お、おう」
「だが! お前は委員長の雪女コスや猫娘コスを見たくないのか!?」
「なッ、何だってーッ!!??」
「メイド喫茶、確かにメイド服の女子は魅力的で素晴らしい。だが、言ってしまえばメイド服しかバリエーションがないのだ!」
 俺の言葉に反応した周りの男子たちが徐々に集まり、耳を傾けてくる。
「しかし、お化け屋敷はどうだ? 数多彩のお化けという広いコンセプトにより、そのコスプレの数は無限大だ!」
「「「おおーッ!!」」」
「その発想はなかった!」「流石だな入月ッ!!」
 よし、これで小畑のメイド喫茶計画を潰すことが出来る、問題は女子の票だ。
 今の俺の発言もあり、周りの女子がお化け屋敷に少ならからず警戒心を抱いたに違いない。
 もちろん、あからさまにメイドと謳っているメイド喫茶は最初から警戒しているだろう。
 となると女子の票が動くのは…
「ねぇ? やっぱり執事喫茶が良いんじゃない!?」「あ! やっぱり? 私もそれが良いと思ってたー!」
 執事喫茶か…
 そんなものが一体誰に需要があるんだか。
 だが、このまま女子の票が執事喫茶に流れ、男子の票がメイド喫茶とお化け屋敷に別れれば執事喫茶の独壇場だ。
 そうなってしまえば、俺は忙しくてガップレを抜け出せるか怪しくなってしまうし、女子のコスプレ姿を見られないとなると、全く良いところがない文化祭になってしまう… 
 それだけは何としても避けたい!
「では、そろそろ多数決を始めたいと思います。1人1票、自分がやりたいものに手を挙げてください」
 遅かったーッ!!
 小畑、こんな無益な戦いはよせ、争いからは何も生まれない!
  そんな想いを視線に込めて小畑を見ると、うんと大きく頷く。
 どうやら小畑も同じ考えに達したらしい。
 小畑はそのまま前に向き直り、委員長に向かって大きく挙手をして発言し始める。
「立花さん! メイド喫茶と執事喫茶、元が喫茶だから一緒にしちゃえばいいんじゃないっすかーッ!?」
「そうすれば両立が可能ね、じゃあそうしてみましょうか」
 ばーろーッ!!
 これでいいんだろ? みたいな顔してこっち見て親指立てんじゃねぇーッ!
 小畑のやつ何てこと言い出すんだ。そんなこと言ったらこの多数決、間違いなく荒れるぞ!?
 「では多数決を始めます」「ゴクリッ」
…
……
………
「お化け屋敷とメイド執事喫茶が同数票ね、さてどうしましょうか」
 投票の結果、展示系に数票、票が入った以外は全てお化け屋敷とメイド執事喫茶に票が集中した。
 メイドと執事が合体したことにより女子の票がお化け屋敷に流れたためだろう。
 このままお化け屋敷とメイド執事喫茶で決選投票か?
「そういえば立花さんまだ票入れてなくない?」「私は別にどれでも構わないんだけど」
「それじゃ全員で決めた事にならないから委員長も票入れてくださいよー!」
 一部のクラスメイトに指摘され、委員長が困ったような顔をする。
「そう言われても、私は本当にどれでもいいのだけれど… 」
 そんな委員長に小畑が徐ろに席を立ち、委員長に近付きながら話し掛ける。
「立花、メイドは女子、執事は男子という固定概念に囚われてないかい?」
「どういうこと?」「つまり… 」
 小畑が委員長の耳の近くで何やら話しているが、遠くでよく聞こえない。
 話が終わると、委員長が俺の方を見て顔を真っ赤にさせているけど、小畑のやつ何か変なことでも言ったんじゃないだろうな?
「わわ、分かったわ! 私はメイド執事喫茶に1票を入れるわ!!」
「えぇーッ!!?」
 委員長の突然の発言にクラスがざわつく。俺も驚きのあまり、つい声が出てしまった。
「委員長! いったい小畑に何を唆されたんだ!?」
「わ、私は単純にメイド執事喫茶の方がクラスの団結が取れて、いい思い出になるかなって思っただけだから! べッ、別に小畑くんに唆された訳じゃないんだからね!?」
 嘘だ、委員長絶対唆されたやつだ。どうせ小畑のことだ、委員長の恥ずかしいことか何かを引き合いに出したんだろう、 卑怯なやつめ!
 そういう訳で2年4組の文化祭の出し物はメイド執事喫茶に決まってしまった。
 ライブの時間ちゃんと抜け出せるのか、後で委員長に相談しに行こう。
 それにしても委員長、何でまだ顔が赤いんだ?
 窓から射し込む暖かい日差しに当てられて、頬杖をついた手から何度か頭が落ちそうになっては戻す作業を繰り返している。
 このまま眠ることができればどれだけ幸せだろう。
 そうすれば放課後の風紀委員の手伝いも、ガップレの練習も少しは楽に感じることが出来るかもしれないのに…
「こら!入月くん、居眠りしない!!」「ふぁ〜い」
 素っ気ない返事を講壇に立つ委員長に向けて返し、小さく背伸びをする。
 今はホームルームの時間で、文化祭に向けてクラスの出し物を何にするか話し合っているところだった。
 先程から何度かドリームワールドへのサボタージュを試みているが、どの授業の先生より委員長が1番厳しく注意してくるため不可能であった。
 特に俺へのマークは常に外さない、流石、全国制覇を成し遂げた女子バスケ部の部長といったところか。
「では、この中で予算的に厳しいものを除外し、多数決でクラスの出し物を決めましょう」
 委員長はそう言うと、くるりと黒板に向き直り黒板消しで予算オーバーな案を次々に消していく。
「なあ… 勇志はどれにするんだ?」
 後ろの席の真純が耳元で小声で話し掛けてくる。
「そうだなー、単純にやりたいのを選びたいけど、俺たちはライブがあるから… 」
「となると、当日の人数が少なくても回せるやつがいいってことになるよな」
「まあそうなるな」
 この中で1番当日負担が少なそうなのは映画上映か作品展示だが、どれも文化系の部が取り組んでいるから、それと比べると見劣りしてしまうだろう。
 かと言って、メイド喫茶や出店などの飲食系は当日の裏方も忙しそうだし、残るは…
「お化け屋敷… かな?」「そうだよなー、他はちょっと難しいよな」
「とは言っても、お化け屋敷が素直に通るとは思えないが… 」
 教室の反対側の席の方では男子たちが既にメイド喫茶で団結しつつあった。
「いいか? お前たち、メイド喫茶を押さないなんてそれでも男と言えるのか!?」「そ、そうだよなッ!?」「俺はメイド喫茶を推すぜ!!」「俺も!!」
 小畑め、あいつが率先して周りの男子を取り込んでメイド喫茶同盟を組みつつある。  このままクラスの男子に伝染し、多数決の票をメイド喫茶に持って行かれたら不味い。早目に手を打っておくか…
「なあ、そこのお人や」「なんだ入月?」
 俺は近くの席の男子にそっと話し掛けていく。
「まさかお前もメイド喫茶に票を入れようなんて思ってないだろうな?」
「え、そのつもりだったけど?」
「そうか… 確かに女子のメイド服を見たいという気持ちはよく分かる」「お、おう」
「だが! お前は委員長の雪女コスや猫娘コスを見たくないのか!?」
「なッ、何だってーッ!!??」
「メイド喫茶、確かにメイド服の女子は魅力的で素晴らしい。だが、言ってしまえばメイド服しかバリエーションがないのだ!」
 俺の言葉に反応した周りの男子たちが徐々に集まり、耳を傾けてくる。
「しかし、お化け屋敷はどうだ? 数多彩のお化けという広いコンセプトにより、そのコスプレの数は無限大だ!」
「「「おおーッ!!」」」
「その発想はなかった!」「流石だな入月ッ!!」
 よし、これで小畑のメイド喫茶計画を潰すことが出来る、問題は女子の票だ。
 今の俺の発言もあり、周りの女子がお化け屋敷に少ならからず警戒心を抱いたに違いない。
 もちろん、あからさまにメイドと謳っているメイド喫茶は最初から警戒しているだろう。
 となると女子の票が動くのは…
「ねぇ? やっぱり執事喫茶が良いんじゃない!?」「あ! やっぱり? 私もそれが良いと思ってたー!」
 執事喫茶か…
 そんなものが一体誰に需要があるんだか。
 だが、このまま女子の票が執事喫茶に流れ、男子の票がメイド喫茶とお化け屋敷に別れれば執事喫茶の独壇場だ。
 そうなってしまえば、俺は忙しくてガップレを抜け出せるか怪しくなってしまうし、女子のコスプレ姿を見られないとなると、全く良いところがない文化祭になってしまう… 
 それだけは何としても避けたい!
「では、そろそろ多数決を始めたいと思います。1人1票、自分がやりたいものに手を挙げてください」
 遅かったーッ!!
 小畑、こんな無益な戦いはよせ、争いからは何も生まれない!
  そんな想いを視線に込めて小畑を見ると、うんと大きく頷く。
 どうやら小畑も同じ考えに達したらしい。
 小畑はそのまま前に向き直り、委員長に向かって大きく挙手をして発言し始める。
「立花さん! メイド喫茶と執事喫茶、元が喫茶だから一緒にしちゃえばいいんじゃないっすかーッ!?」
「そうすれば両立が可能ね、じゃあそうしてみましょうか」
 ばーろーッ!!
 これでいいんだろ? みたいな顔してこっち見て親指立てんじゃねぇーッ!
 小畑のやつ何てこと言い出すんだ。そんなこと言ったらこの多数決、間違いなく荒れるぞ!?
 「では多数決を始めます」「ゴクリッ」
…
……
………
「お化け屋敷とメイド執事喫茶が同数票ね、さてどうしましょうか」
 投票の結果、展示系に数票、票が入った以外は全てお化け屋敷とメイド執事喫茶に票が集中した。
 メイドと執事が合体したことにより女子の票がお化け屋敷に流れたためだろう。
 このままお化け屋敷とメイド執事喫茶で決選投票か?
「そういえば立花さんまだ票入れてなくない?」「私は別にどれでも構わないんだけど」
「それじゃ全員で決めた事にならないから委員長も票入れてくださいよー!」
 一部のクラスメイトに指摘され、委員長が困ったような顔をする。
「そう言われても、私は本当にどれでもいいのだけれど… 」
 そんな委員長に小畑が徐ろに席を立ち、委員長に近付きながら話し掛ける。
「立花、メイドは女子、執事は男子という固定概念に囚われてないかい?」
「どういうこと?」「つまり… 」
 小畑が委員長の耳の近くで何やら話しているが、遠くでよく聞こえない。
 話が終わると、委員長が俺の方を見て顔を真っ赤にさせているけど、小畑のやつ何か変なことでも言ったんじゃないだろうな?
「わわ、分かったわ! 私はメイド執事喫茶に1票を入れるわ!!」
「えぇーッ!!?」
 委員長の突然の発言にクラスがざわつく。俺も驚きのあまり、つい声が出てしまった。
「委員長! いったい小畑に何を唆されたんだ!?」
「わ、私は単純にメイド執事喫茶の方がクラスの団結が取れて、いい思い出になるかなって思っただけだから! べッ、別に小畑くんに唆された訳じゃないんだからね!?」
 嘘だ、委員長絶対唆されたやつだ。どうせ小畑のことだ、委員長の恥ずかしいことか何かを引き合いに出したんだろう、 卑怯なやつめ!
 そういう訳で2年4組の文化祭の出し物はメイド執事喫茶に決まってしまった。
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