マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで

青年とおっさんの間

顔出し中は好きにやらせていただく 27

「フフフフ、ハーッハハハハッ!!」

 郷田の耳障りの悪い笑い声で、これが現実だと理解する。
 目の前で歩美が俺を庇って撃たれたのは、紛れもない事実なのだと…
 嫌だ…
 嫌だ!!
 歩美と向き合うって決めたばかりなのに!!
 俺を赦してくれた歩美に、俺はまだ何も返せていない!!
 嫌だ…
 嫌だ!!
 歩美のいない世界なんて、
 返せ…
 返せ!!

「歩美を、返せ…!!」













 何だ?
 入月勇志くんの機体から、突如禍々しいオーラが発せられる。
 あんなエフェクトがあるなんて知らない、開発者の私が知らないプログラムが組み込まれているというのか?
 いや、そんな筈はない! 全てのプログラムは私が最終チェックを行ったのだ!
 まあいい、あのオーラが何であろうと彼はもうお終いだ。
 目の前で大切な者を2つも失ったんだ、正に彼は今、耐えられない絶望に囚われてしまったことだろう。

「そろそろ終わりにしようか、入月勇志くん」「… トランスリミッター解除、コードトリプル8、モード… 『インフィニティードライブ』!!」
「何だ!? 一体何が起こっているッ!?」

 彼の機体から発せられた禍々しいオーラが一瞬で漆黒に染まる。
 それは、光を通すことない暗黒、心の闇。
 そのオーラが手に持つビームサイズへと流れ込み、その刀身を2倍、3倍に巨大化させていく。
 何という出力、いやそれ以上に大きさだ! 一振りで戦艦を真っ二つにすることも容易い程の大きさはある!
 一体何だというのだ!? このゲームにあんな能力は存在しない!

「何っスか、あれ? 勇志くんの機体が… 」「俺にも分からない。だが、『断罪する死神』という二つ名に相応しい姿になったじゃないか… 」

 私の全身が彼は危険だと警笛を鳴らす!やるなら今だ、今しかない!

「フンッ!!」

 彼の機体を中心とした位置の重力を何百倍も重くし叩き潰す。
 回避するは疎か、動く様子も全くなかった! 倒した… 私は入月勇志くんを倒し、復讐をやり遂げたのだ!!

「このフィードバックシステムの使い方がやっと分かったよ」「ッ…!!?」

 モニターに映し出された私の機体の陰の横に、もう1つ影がある。

「背後かッァア!?」

 右腕にビームサーベルを出現させながら振り向きざまに横一線に斬りつけた。
 しかし、そこに彼の機体はなく、私のビームサーベルは空を切り裂いただけだった。

「何処だァア!? 何処にいるッ!?」

 彼の機体にはミラージュコラルドシステムとスーパージャマーが搭載されていた。その2つを使ったのか?
 いや、違う!
 あれは姿を隠し、レーダーに映らなくするシステムであって、その場から消えることができるものではない!!

「何処を見てる?」

 その言葉と共に、背後から私の機体の左翼と左腕が大型のビームサイズに斬られ消滅する。

「ぐぅああァァァアッ!!」

 もう一度振り向きながら右腕のビームサーベルを振るうが、そこに既に彼の姿はない。

「ここにいるぞ? 郷田」

 視線を動かすと、直ぐ前方に地面にビームサイズを立て直立しているダンガムヘルゲイズの姿があった。

「一体何が起こっているッ!?」「ゼロシフト… 空間を圧縮し、その反動で亜光速移動するシステムだ」
「何だそれは!? そんな物、私はプログラムした覚えはないぞ!!」
「そうだろうな、なぜならこのシステムは俺がフィードバックシステムを使って作り出したものだからな」
「何、だって…!?」

 フィードバックシステムを使って作り出した…? 
 あれはプレイヤーの五感に直接信号を送り、リアリティを味あわせる為のシステムだ、そんな機能は無い!!
 だが、彼の言っていることが事実と仮定すると…
 フィードバックシステムはプレイヤーに直接干渉するシステムだ。システムからプレイヤーへの一方的な情報の伝達が行われている。
 しかし、もし仮にシステムからプレイヤーへの一方的な情報の伝達だけでなく、プレイヤーからシステムへの情報の伝達が可能、つまり相互伝達が可能であるのだとしたら、彼の認識や考えがシステムに伝達し、ゲームに介入することが可能に… 
 いや、そんなことは…

 「“ありえない”とでも言いたいのか? なら、試してみろよ?」「貴様ァァァアッ!!!」

 再生させた翼から大出力の粒子砲を彼の機体目掛け照射する。彼は回避動作もとらず、その場に立ち止まっていた。
 「直撃だぁ!」

 粒子砲が彼の機体を飲み込み地面に大きなクレーターを作り出す。直撃であれば跡形も残らない。

「終わりだ… 何ッ!?」

 勝利を確信した瞬間、背後から物凄い衝撃を受け、地面に激突した。

「ぐぅあ゛!!? 何だとッ!!?」「言ったろ? ゼロシフトだって」
 ゼロシフトだと!? ふざけるな!!所詮、物体が亜光速で移動しているだけ!
 ならば!

「エネルギーフィールド全開ッ!!」

 最高出力のエネルギーフィールドだ! ゼロシフトと言えど展開されているエネルギーフィールドの内側には移動できない!!

「哀れだな」

 彼はビームサイズを1度、斜め上から斬り下ろすと、易々と私のエネルギーフィールドを切り裂き消滅させてしまった。

「馬鹿な!? 化け物めぇええ!!」

 ビームサイズを振り下ろした隙をついて粒子砲を照射するが、既に彼の姿はない。

「終わりにしよう郷田」

 突如、物凄い回数の斬撃と衝撃に襲われ、またも地面に叩きつけらてしまう。
 メインカメラが破損したのか、モニターが暗転している。
 すぐに機体の損傷を示すモニターを確認すると、胴体にあるコクピット部分以外、全て大破、またはロストしたと表示されていた。
 「馬鹿なッ!!?? こんなこと、ありえない!!」「暗黒の世界に帰れッ! 郷田ァア!!」
「やめろぉぉおおおッ!!!」

 そして、コクピット部に光が充満し、私はゲームオーバーとなった。

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