AI`s(アイズ)

小鳥 遊(ことり ゆう)

最終話:真実

先端中枢部には警官隊や、多くのアンドロイド達が押し寄せていたが、ヨハンがそれを貼り倒し、サバラも、ジョーがシローを逮捕するまでの間、多くのアンドロイドに反抗した。AIの管理下に置かれたエドも含めて・・・エドには銃口を向けず、必死に拳で抵抗していた。なんとかして彼もエドを自由にしたかった。ただ、それだけのために。

そして彼はエドの生命(いのち)を引き抜いた。

「すまないな、エド。 これで自由になるといいな。」

――――――――――――――――

セントラルタワーの先端中枢部、AI'sの奥にある部屋には電源パネルやコンピュータは無く、生体培養のしかも人間が丸ごと入る大きさのカプセルに人のようなものがずらりと入って並んでいた。そして中央には人影が見えていた。二人は入口付近で立ち止まって


「何だよ。これ。全部人間か?」


「じゃあ、AIじゃなくて結局人間に操られてたって事?」

「そんなの、話が全然違うじゃないか。機械は張りぼてなのか。」

 二人がこの異様な光景に困惑しているところに奥の人影が何かを引きずってきている。二人はそれに気づき、奥に眼をやると男で、彼は頭に装置を付けており、装置には大量のコードが付いていてそれが引きずられながら不気味にこちらへと向かってくる。やがて明るみに出た男はやせ細った体から絞り出すように

「それは、少し違うぞ。青年たちよ。いや、先ずはおめでとう、そしてようこそ本体へ。私が管理者のシュバルツだ。」

「やっぱ人間がこんな世界を作ってたのかよ! お前、早くこんな世界戻してくれ。元の自由で平和な世界を。」

「君は何か、勘違いをしてないか?自由、平和。この世界、社会構造そのものではないか。むしろそれを壊そうとしているのは君ではないのかね?それに人間がつくったのではない。私はこのAIに教育しているだけ。この脳を使ってね。こんな美しい世界がつくれるのは人間ではない。計算された理論学こそ世界を制するのだから。」

管理者はこれまでの彼らの言動を見ていたのかシローの言っていることを逐一論破していった。ジョーは何もできなかった。自分が何を守って来たのかがよくわからなくなっていた。

「ジョーくんと言ったね。君は良い働きをしてくれた。ずっと彼を元通りにしようとしていた。非常に感動したよ。どうだね、これからも私のもとで働いてくれないか?非常に名誉なことだと思うがね。」

「いや、僕は名誉なんてどうでもいい。僕はシローと前の様に友人として戻ってきてほしいだけだし、そしてシローの言う通りみんなも一人一人が自立した生活をしなければならない。今、そう感じた。こんなの独裁政治と一緒だ。僕たちの生き方は僕たちのものだ。機械や、ましてやあなた一人に指図される筋合いは無い!こうなったら、一緒に戦おうシロー。」


シローとジョー、二人はふとしたことで対立した世界に入れられたが今ここで意見が一致した。二人を目の前にしたシュバルツは

「残念だ。だが、戦う体力は私にはもうない。この通り今や電気信号だけで動かしているが肉体を動かさなかった代償がきている。だからこそ、私に変わる永遠に肉体が衰えないここにある新人類”ベセル”が私の意志を継ぐ!」

彼が奥のコントロールスイッチのあるところへと向かおうとしていた。彼とスイッチの間は1メートルほど二人との間は3、4メートル離れていた。二人はシュバルツを追いかけた。彼は虚弱だったのですぐに追いついたがスイッチ目前のところで争っていた。ジョーがシュバルツの足元を持ちシローが彼の頭部にある装置を取り外そうとしていた。

「私の、私の命を!その装置を取るな!システム自体も強制シャットダウンされるんだ。やめろ!”私の”理想の世界を壊すな!」


彼は必死に抵抗した。だが二人の決心は固かった。装置は外れそうに無かったがなんとか変遷を切ることには成功した。制御盤がシャットダウンしたのを確認したシローは念のため外れなかった頭の装置をあり物の道具で外した。後で判明したがシュバルツはすでに衰弱死していたのだった。彼も機械に活かされていた一人にすぎなかったのかもしれない。
 











この後俺が何をしていたのか覚えていない。何か黒い靄でもかかっていたように思いだせない。今もその暗闇にいるようだった。

何か頂上で演説をしていたかもしれない。

それももう忘れた。まるで今までの事が幻覚であったかのように。あの後みんなはどうなったのだろう。

ジョー、下で戦ってくれたヨハンさん、ジョーと来ていた警察の方。

そんなことを考えていたら目の辺りに何か違和感を感じてきた。”それ”を外すと、とても明るいような気がしてやがて全体が見えてきた。

そこにいる自分はイスに座っていて他にも同じように椅子に座り、ゴーグルを付けた人間がいた。見渡すとゲームセンターの様だが誰も近寄らなそうな廃墟だった。
ドアをこじ開けて外に出るとさっきまでの繁栄した世界は無く、廃れて醜い世界だった。外をふらついていた人たちがいてその人たちは


「おい、センターの電脳世界の誰かが中から止めたらしいぞ。また、リセットしないとな。・・・おい、誰かいるぞ。何か知ってるかも知れんぞ。」

自分の方に向いていた。訳も分からず俺は走った。彼らもそれに不思議がって追いかけた。俺は力の限り走っていた・・・と思っていた。だが、すぐに捕まってしまった。

聞くと彼らはここの機械のバグを直しに来たデバッカーらしい。


「君、名前は?」

「シロー・ユキダ」

「年齢は?」

「多分、18くらい。」

デバッカーは即座に立って何やら話していた。


「うーん、あっちにずっといたから記憶が混同してるな。向こうもだいぶひどくなってるらしいし修正が必要だな。」

「そんなこと、彼の前で言ったら可哀想だろ。彼は俺らと違って楽園しか知らんおぼっちゃま何だからさ。丁重に扱わんと、ン?」

デバッカーが話をやめたと思ったらなにやら人だかりがそれも俺と同じような細身の人たちがゾンビのように唸り声をあげて這いずっていた。彼らは何やらあの世界つまり俺のいた元の世界の住人らしい。楽園を追放された彼らは生き場を探し、救いを求める姿は俺にとっては地獄絵図でしかなかった。

「とりあえず、俺らはこんなの管轄外だから管理センターに電話しとくか。そんで彼は救急に頼むとしよう。」

「そうだな。 あ、あのシローさん。もう少し待っててくださいね。とりあえず病院で検査を受けてもらいましょうね。」







安堵か、混乱かまた俺は意識を失った。気が付けば病室の上だった。病院の先生のセラピーでだいぶ良くなった。
 この世界のことも聞かせてくれた。なんでも飢饉でだいぶ経済が傾いていたらしくそんな中、人類を永久に活かす方法としてあの世界があったらしい。なんでもあれは経済的に猶予のある人間しか入れずに猶予のないものはそれらの整備やメンテナンスで生計を立てていたらしい。その人の中でも、あの箱庭に入りたい人が増加してメンテナンスする人間も減少傾向にあったそうだ。そのせいで向こうの世界でも争いや差別意識が生まれていたそうだ。
 現実世界に戻る方法としては、仮想の世界で死ぬことがその条件らしいが今回俺がしたことはめったにないことだったので外の世界は大パニックだったそうだ。


その後、システムは復旧した。住人たちも安心して床に着いた。俺はというと現実に戻って助けてくれた人たちと同じようにこのシステムのメンテナンスをしている。二度と戦争が起きないように
願いを込めながら。




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