AI`s(アイズ)

小鳥 遊(ことり ゆう)

第四話:運命の朝

 このままの軌道だと警官の一発はヨハンにめがけて一直線だった。しかし、それを見逃さなかったケイドはヨハンの方へと走って行くと、弾道はケイドの胸部に着弾した。
その時、音は静まりかえったかのように思った。




『ケイド・ウィッチ 死亡確認しました。確保を要請します。』

冷たい声が俺たちにつらい現実を突き付けた。

「そいつをすぐにオレたちの基地に運びだせ!全員ここで犬死にしたくなかったらな!」


ヨハンの怒号は解放軍の人たちを奮い立たせ、何人かでケイドさんを運んでいた。俺たちもそれを援護するように退避していったのだった。警察の人たちもそれを追いかけるがこれ以上の被害は出したくないと思ったのか、彼らも軍勢を退いて行ってしまった。見上げると空はもう明るんでいっていた。俺たちは本拠地に戻り負傷者のキズを治療をしていた。そこは本当に戦場かその後のような悲惨さだった。そして当のケイド・ウィッチは基地のソファで冷たくなって瞼を閉じていた。


「これだから機械に制御された人間は!容赦がない。やっぱりオレらも武装蜂起すべきなんだ!そう思うだろ?坊主ども。」

「気持ちはわかりますが、戦いでは何も解決しないし憎しみが憎しみを生むってのがわかったってだけじゃないですか!ヨハンさん、他の道を考えましょう。とにかく、もう今日は休んでそれから後日ぼくらのやるべきことを考えましょう。」


その日はみんな疲弊していた。前線で戦いに参加していた者もそうだが、戦いを知らずに寝耳に水で自分達を指導していた長がいなくなったことの精神的ショックはこの基地にいる全員がそうだった。一週間後、ニュースでは本格的に我々が人類の社会構造を乱すテロ組織として報道されていた。まぁ否定はしないが人間はもっと自由に生きるべきだし様々な考え方があってもいいと思う。ケイドさんみたいに穏便に交渉して機械が支配する社会をなくすのもいいと思うし、頭の固い彼らに正義の鉄拳でわからせようとするヨハンさんの衝動も理解はできる。所謂我々は世間では社会不適合者なのだろうがそれでも人間らしく生きたいと思っている。いろんな思いは俺以外の解放軍の人たちも一緒でみんな答えが出せずにいた。それから数日、ラジオから聞こえたのは俺たちのことだった。

『先日起こった人類解放軍と名乗るテロ事件ですが新たな情報として主犯格と思われる容疑者の名前が判明しました。主犯は人類解放軍幹部、ケイド・ウィッチ、ヨハン・スミルコフ、シロー・ユキダの三名であります。ケイド容疑者は事件最中に死亡が確認されましたが残り二名は依然行方不明で中でもシロー容疑者はイヤコード第七世代としては初の違反者で行方をくらましていましたが‐』

「あ、シロー。シローのことニュースで出てるよ。やっぱり第七世代だったんだね。」

「そう言えばケイイチ、俺のイヤコードの取り方知ってたよな。なんでなんだ?」

「おいらのとうちゃん技術士だったんだよねそれの。でも第五世代のリコール問題で解雇、家族共に路頭に迷いこのありさま。今は家族ぐるみで工場で製品を盗んだり改造してた。だからどうすれば解除できるかって言うのも知ってた。」


「そんなことがあったのか知らなかったよ。で、そのお父さんは?」

ケイイチは少し悲しい目をして首を横に振って

「三年前に失踪したよ。何にも言わずにね 」

誰かが悪いわけではなかったがその時シローは自分を少し恨んだ。だが、ケイイチはその表情を知ってか知らずか気丈に振る舞った。その心意気に無言の謝罪をしてからシローは話題を変えて


「そう言えば、もうジョーはこのこと知ってるだろうな。なぁ、友達が犯罪者ならお前どう思うよ?」

「うーん、つらいかな。今も交流があるならなおさらになるだろうな。」

「今はもう会えないが、そうだよな。今頃あいつどうしてんだろ。」
 














その頃ジョーは警察署内部のテレビ放送で状況を把握していた。
「やっこさん、とうとう出てきやがったな。あのテロリストがジョーの言ってた友達かい?」
サバラがジョーの顔を覗き込みながら話してきたので少々驚いたが
「え、ああ、そうなってしまいますね。こうなると。」
『これは本当にゆゆしき出来事ですね。』

”エド”も上司を真似るような仕草で覗きこんで話してきた。だがそれよりも友人が今となっては社会の敵の様になってしまっていることに驚きを隠せないでいて彼自身上の空だった。
「おい、おまえ友達を元に戻したいから警察に殴りこみに来たんだろ。こんなとこで油売ってる場合か? 現実を見ろ!」

その時彼ははっとした。自分の使命を思い出したのだった。友人を、道を外したかけがえのない友人をこの世界に戻すことが今の自分の使命だと今、改めて思いだしたのだった。
「すみませんでした。こうしてる場合じゃない。他の警察より早く彼を見つけないと警察は彼を射殺しかねない。そうなる前に自分が更生させてみせます。手伝ってもらえますか?」
サバラ達はとまどった。しかしなぜか快諾して
「はぁ、これは見つかったら始末書どころじゃないな。俺は市民を守る警察になるって決めてんだ。それが社会に反発する危険分子だとしてもな、彼もまた市民だ。だから手伝うぜ。」
『反対すべきでしょうが、私はAI's(彼ら)ができる前にできたので私は自由意志のAIのもとにあなた方の意見を尊重します。人の命はロボットの命より尊く、美しいですから。」
「とりあえず彼ら、つまりはテロリストたちの動向を探らなくては」



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