念願の異世界転移がようやく俺にも巡ってきたけど仲間ばっかり無双してて辛い

たねっこ

第10話 初めての夜と、ムラムラ野郎

「だいたいわかってもらえたかな。私たちのこと。それから、刻印のこと」


「あ、ああ…うん。いや、すごいねホント。刻印てとんでもない力なんだな」


俺は正直な感想をイオリに言った。


「そうだね。そのぶん、扱いには気をつけなきゃいけない。仲間を傷つけてしまう可能性もあるから。…他には何か聞きたいこと、ある?」


「あ、じゃあ」


俺はさっきからずっと疑問に思っていたことを口にした。


「仲間、っていってたよね。しかも俺のこと、最後の仲間だって」


「ああ、それはね」


イオリは黒板を指差した。
さっきから、黒板になんか書いてあるな、とは思っていたが内容までは気にはしていなかった。

黒板には箇条書きでいくつかの文章が並んでいる。


1.学校を探索しましょう  ︎

2.一人目の仲間を探しましょう  ︎

3.刻印の力で敵を一匹やっつけましょう  ︎

4.二人目の仲間を探しましょう  ︎

5.敵の落とす卵を魔法陣に納品しましょう  ︎

6.三人目の仲間を探しましょう  ︎

7.さらに敵をたくさん倒しましょう  ︎

8.最後の仲間を探しましょう  ︎



と、書かれている。
これは…ミッション?


「こうして、いつのまにかミッションが黒板に追加されていくんだ。今日、8番目のミッション…つまり、最後の仲間を見つけた、ってことになるね。明日あたり、9番目のミッションが追加されると思う」


「…なるほど。イオリが1番最初にこの学校に飛ばされてきたのか?」


「うん、そうだよ。10日くらい前かな」


「んで、次がボク! イオリとボクで、初めて、くろいひとをやっつけたんだよねっ」


「つぎ、あーしね。イオリとウミが強すぎるから、あーし見てるだけだけど、キホン」


「その次が私です。今の所、私も戦闘では後ろから見ているだけです。だいたいイオリさんが一掃してくれるので…」


んーーーむ、なるほど。
だいたいわかった。
だいたいわかったけどわからないことも同じくらいに増えた。

これはユルくてお気楽な異世界転移じゃない。
間違いなく、何者かの意図が働いて俺たちはここに飛ばされて来ている。
それがあの、鬼ギャルのいた中央異世界転移管理センターの意図なのか。それとも何か別の意思なのか…

とりあえず、教室でのみんなの話はそこでいったんお開きとなった。




イオリたちに連れられて学校内の設備の説明を受ける。

イオリたちは三階にある救護室に寝泊まりしているそうだ。ベッドは6つ並んでいるのだが、さすがに男である俺がそこに混ざってみんなでハイおやすみ、というわけにはいかない。

結局、俺は四階の一番隅ッコにある、教員用宿直室を利用することに決めた。
狭いが、畳と布団がある。

気づけば、夜になっていた。
イオリの話によれば、くろいひとがやってくるのは大抵日中らしい。夜は滅多に来ないそうで、夜は早く寝たほうがよいらしかった。


「はぁ〜〜〜〜…」


俺は宿直室で一人、くたびれたせんべい布団にゴロリと寝転がって、バカでかい溜息をついた。
早く寝て、早く起きたほうがいい。寝よう。
そう思っても、なかなか寝付けない。
今日一日で色んなことがあった。
これから先、どうなってしまうのか…

元いた世界に戻れるのか?
いや、そもそも俺は戻りたいのか?
あれだけ憧れていた異世界。だが、環境もスキルも、まるで俺の望んだものとは違っていた。

ふいに、元の世界が懐かしく思えた。まだたった一日しか経っていないのに、だ。

よし、帰ろう。帰れるかどうかはわからないが、必ず、俺は帰ってみせる。
昨日までは、異世界に転移するのが俺の夢だった。こんどは、元いた世界に帰るのが俺の目標だ。

と、決意を固めたあたりで、眠気が襲ってきた。

それだけなら良かったのだが。

同時に、もっともっと強い、別の欲望にも襲われた。


ムラァ…!!
ムラムラァ…!!!


自分の力では全く太刀打ちできない、抗いようのない欲望が俺の下半身を包んだ。

あかん。抜きたい。

そーいや二日抜いてない。
健康な高一の男子が二日も射精していないと一体どんなことになってしまうか、ご想像いただきたい。
異世界に飛んでも、性欲は変わらない、というどうでもいい知識がひとつ増えた。

ましてや、今日はイオリのふとともに、エリカのパンツと、極上のオカズを2つもゲットしてしまっているのだ。

思い出すと止まらない。
ムラムラするとふとももの映像が浮かぶ。浮かぶとまたムラムラする。するとこんどはパンツ。ムラムラ!小麦色!ムラムラァ!上乳!

後半は鬼ギャルも混ざったが、俺はムラムラスパイラルに陥った。

これはもうすることしないと治らない。

おもむろに、俺は仰向けのまま、左のケツポケットからポケットティッシュを取り出し、ズボンをずり下ろした。

俺はもっぱら、寝っ転がってする派だ。

そのとき、見慣れないものが目に飛び込んだ。
あまり大きくはないが、思い切りシェイクした炭酸飲料のアルミ缶のように硬く屹立しているモノ。
…いやいやそれは見慣れてる。それじゃない。

その上。


「羊の…刻印…」


俺のツルツルの下腹部にしっかりと刻まれた羊の刻印。


「確か、擦るんだった…よな」


ほんの気まぐれに、ひと擦りしてみる。

「あ…」

ムッ…と、不思議な匂いが漂い始めた。
リンゴとバラをぐつぐつに煮詰めたような、甘くむせ返るような匂い。
不快…な様な気もするし、ずっと嗅いでいたい様な気もする。


「…ほんとに、ただの刺青じゃないんだな、コレ…」


たぶん、俺だからこんな平静で居られるんだ。
これが、俺以外の誰かなら…
発情して狂ってしまうか、俺への憎しみで狂ってしまうか。そのどちらかなんだろう。

俺はその匂いに包まれながら、自分のモノをしごき始めた。
頭の中に、イオリのふとももと、エリカのパンツと、ついでに鬼ギャルの上乳が乱舞する。


あー…ヤバイ。
二日ぶりだとスゴイ。
あー。
もうダメ。
あー。
もう…



コンコン!

と、宿直室の引き戸からノック音がした。


賛否両論はあるかと思うが、男が世界一俊敏になれる瞬間が、これだ。

俺はおそらく、音速を超えた。
音速を超える速度でズボンを履き直した。


「は、はいっ! ドナタデスカ!」


履き直したと同時に俺は声を張り上げた。

引き戸の向こうから声が聞こえる。


「ごめんね! イオリだよ。渡し忘れた物があって!」


「あっ、ああ! ちょっと待って!」


俺はやはり音速で着衣の乱れを直した。
非常にまずい。いまこの部屋にはバラとリンゴの匂いが充満している。
そして俺はイク寸前でお預けを食らった状態だ。

今イオリがこの部屋に一歩でも踏み込んだら、もう、いろいろと大変なことになる自信がある。


ガラリ!と俺は引き戸を開け、宿直室から出ると同時にピシャリと戸を閉めた。

ぜい、ぜいと、息が荒ぶる。


「あッ…ごめんね、アキトくん。あの…これ…」


ちょっと驚いたような顔をしながら、イオリは俺にある物を手渡した。

あ、これ…


「夜は、たぶん大丈夫だと思うけど。一応、これつけて寝たほうがいいから」


イオリが持ってきたのは黒い腕輪だった。


「あ、ありがとう…」


「それだけだから! じゃ、おやすみ!」


じゃ、おやすみ!といいつつ

イオリは俺の顔をしばらく見つめていた。


心なしか、イオリの息が荒い。
頬が紅潮している。
瞳は潤み、唇が震えている。


「おやすみっ!」


もう一度言って、イオリは逃げるように三階へと駆け戻って行った。


まさか、羊の刻印のフェロモンがイオリの鼻に少し届いてしまったか…?


と思ったが確かめる術はない。
俺は気まぐれに刻印を擦ってしまったことを早くも後悔した。


「ま、まぁでも、たったひと擦りだし…」


自分に言い聞かせるように独り言を言い、俺は宿直室の布団へと戻った。

寸止めされてしまったモノはまだ硬いままだった。





結局俺は、イオリのふとももで一発、エリカのパンツで一発、ついでにイオリの紅潮した頬と潤んだ瞳で一発、合計三発抜いて、眠りについた。

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