念願の異世界転移がようやく俺にも巡ってきたけど仲間ばっかり無双してて辛い

たねっこ

第0話 鬼ギャルとドラグノフ

ある朝、いつものように目を覚ますと俺は見知らぬ場所にいた。

「こ、これってまさか…」

思わずひとりごとを呟いた。ベタだがほっぺをつねってみる。
痛い。夢じゃない。

う、

うおおおおおお!
きた!ついにきた!

このシチュエーションはまさしくアレだ!
異世界転移だ!
この俺にもとうとう、その順番が巡ってきたんだぁ〜〜!!

小躍りしそうになるのをぐっと堪え、まずは状況把握だ。ただし顔だけはもうニヤニヤが止まらない。それくらいは許してくれ。


周囲を見渡すと…本?
本だ。大量の本が積み上げられている。
本たちは、俺の身長よりも断然高く、そして隙間なく積み上げられていて、それ以上の周囲の情報が得られない。

今どこにいるんですか、と聞かれたら、本に囲まれてます、としか言えない状況だ。

だが間違いなくここは元いた自分の世界ではない。なぜかって、浮いてる本があるからだ。
積まれてるものが大半だったが、中には空中に浮かびながらパラパラパラとページが勝手にめくれている本がある。

上を見上げると、真っ暗だ。星空の様な感じで、チラチラと光る小さいつぶが見える。
たまに、美術の時間に見た、ダリの絵に出てくる溶けたチーズのような時計が、ふわりと星空を舞い、消えてゆく。

俺はこの現実感の無さに、いよいよ確信した。間違いない。ここは完全に異世界だ。ずっと夢みていた異世界だ。これからきっと、めくるめく異世界ライフが俺を待ち受けているんだ!

ふいに、目の前に執務机のような豪奢な机がひとつ現れた。かのように見えた。最初からあったのかもしれないし、いま突然出現したのかもしれない。
古めかしく重厚な感じで、ヒゲをたくわえたイギリス紳士のジイさんが書類にサインをしていたら、とてもしっくりくるであろう、そんな机だ。
でもそこに座っているのはイギリス紳士でもジイさんでもなかった。


「…あース」


あーす?


「えーっと…ヤマダアキト、さんッスね」

「え、はぁ、まぁそうですけど…」


とりあえず応答してしまったが、机に座って俺に声をかけてきたのは、リクルートスーツをルーズに着こなした、鬼ギャルだった。
ド金髪だ。顔はかなり可愛い…のかもしれないが派手な化粧とガングロでなんとも評価がしづらい。ばっしばしのつけまに、クソ長いカラフルなネイル。
リクスーの胸元はかなり大胆に開いていて、小麦色のまぁるい上乳が覗いていた。
全くこの場に似つかわしくない。
胸元に吸い寄せらそうになる目線を必死に戻して俺は鬼ギャルに尋ねた。


「あの…ここどこなんでしょうか」

「え? 中央異世界転移管理センターッスけど」


なにそのセンター。もっと詳しく知りたい。


「あーし契約社員なんで詳しいこと知らないんで。とりまここサインおなしゃっス」


見た目を裏切らない塩対応だな!
もうちょっと説明とかしてくれよ!


「いやちょっと…あの、サインしたらどうなるんですか?」

「異世界行きっスね」


なるほど。ということはここはまだ俺の向かう異世界ではないのか。ま、いい。ここは迷うところじゃない。
躊躇なくサインをしながら俺はさらに聞いた。


「俺、どんなとこに行くんですか? あと、チートスキルとかあるんですよね?」

「いやーちょっとわかんないッス。あーし契約社員なんで」


こんなやつを雇うなんて、中央異世界転移管理センターも相当な人手不足なんだろうか。仕事に対する責任感やモチベーションは、たとえ契約社員であってもそれなりには持っていて欲しいものだ。


「サインおっけーっスね。じゃ飛ばしまぁ〜す」


そういいながら鬼ギャルは机から旧ソビエト連邦・イスマッシュ社製の名銃、ドラグノフスナイパーライフルを取り出した。
ドラグノフは、口径は7.62mm、装弾数は10発、有効射程600mのセミオートマチックライフルだ。アフガニスタン侵攻で猛威を振るい…ってちょっと待て。それでなにをするつもりだ。


「あ、これ転送機なんスよ。行きますよ〜。動かないで〜」


鬼ギャルは銃口をこちらに向け、引き金を絞る。


「いやちょちょ!!待って待って!!」

「当たりどころ悪いと変なとこ飛ばされるッスよ。はい動かない動かない」




っターーーーーン!!


弾丸は正確に俺の眉間を貫いた。
なんなんだよこの転移方法は!
しかもあのギャル、やる気ないくせに狙撃の腕が一級品過ぎるだろ!

そんなことを思いながら、俺は意識を失った。



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