どうやら人外に転生したようで
1
「ん゛ん………ん…?」
激しい頭の痛みと眩しさで意識が浮上する。体がだるく、思うように体を動かせない。それでも首を動かして周りを見渡す。
1番に目を引いたのは、窓から吹く風に揺られるカーテンと、窓から差し込む夕陽に照らされてきらきらと輝く金の長髪。
「ルーク…?」
金髪の少年は目を見開いて呟く。だんだんとその瞳には涙が溜まってきて……
「うぁぁぁぁあああ゛あ゛!おぎないとおもっだぁぁぁぁあ!!」
ガバッとボクに抱きつく。思わずパッと身を引いてしまったが、そんなことも構わずに少年は苦しいくらいにボクを抱きしめた。
「よがっだぁ゛ぁぁぁあああ…」
「ぅ゛…苦しいよ…離れて“アル兄さん”…」
(アル兄さん…?)
するりと自然に出てきた言葉に困惑する。それを自覚した瞬間
「いたっ……」
激しい頭痛が更に主張してくる。心配そうに覗き込んでくるアル兄さんの声も聞こえない。
あれ、どうして、俺は、あれ、高校にいた…?
いろんな記憶がぐるぐる頭を巡る。お母さんと母様、友人、アル兄さん…小さな“ボク”、そして高校生の“俺”……
__________思い、出した
「ぅ、ん……大丈夫だよ、アル兄さん…」
「ほんとに?ほんとに大丈夫?」
「うん…」
この少年は“今世”の兄である、アル兄さん。この国の第一皇子だ。いつもボクのことを考えてくれる、優しい兄だ。そして第一皇子を兄に持つボクはもちろん、この国の皇子。第二皇子にあたる。
前世では高校生をやっていたんだ、ボクは。
思い出したことを順々に整理していく。そして分かったことは、自分が前世では高校生であり、順風満帆とは言えないがそれなりに充実した日々を送っていたこと。たったそれだけ。
前世の記憶、というものを持っていること自体ありえないからそれは当たり前なのかもしれない。
「あっ!僕、母様呼んでくる!待っててね、ルーク。」
「うん。」
じっくり考え込んでしまったボクを、体調が悪いせいだと思ったのだろうか。アル兄さんはぱたぱたと廊下を駆けて母様を呼びに行ってしまった。
「ふぅ……」
頭痛に顔をしかめつつ、ゆっくりと体を起こす。
前世の記憶を思い出してから改めて部屋を見ると、自分の自室の大きさに萎縮してしまう。王宮だからなのだが、前世で住んでいた安いアパートの5つ分はあるだろうこの広さ。
「広いなぁ……」
思い出した前世の記憶よりも大分小さな自分の体は、何をするにも大変だ。
ベットで一緒に寝ていた大きなテディベアを抱きしめて布団に潜る。何でかは知らないが、疲れのおかげでもう一眠り出来そうだ。
……たぶん無理だろうけど。
ドタバタと駆けてくる足音は部屋の前で急停止する。
「ルークっ!!」
バンッと部屋の扉を叩きつけるように開けたのは、この国の王妃。ボクの母だ。真面目だがお茶目な面も持つ、可愛らしい人だ。
「母様…」
「良かった…目が覚めたのね。心配したのよ?ルークったら2日間も意識が朦朧としているのだもの。もう大丈夫?」
「大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
「本当に良かったわぁ~。あの人がもうそろそろ、仕事を投げてまで来そうだったんだから。」
あの人、と言うのはボクの父、この国の王だろう。いつも家族を思い、国民のためを考える立派な王だ。
「ルーク…ほんとにごめん。あのとき僕がしっかり手を握っていれば…」
「へ……?」
何のことか分からず首を傾げるボクに、母様が驚いたようにいう。
「覚えてないの?あなたはアルフォンスと庭をお散歩中に、足を滑らせて階段から転げ落ちてしまったのよ?」
「あぁ……」
確かにありました、そんなことも。
アル兄さんが申し訳なさそうな顔でこちらの様子をうかがっている。ボクが怒っているのが心配なのだろうか。
「アル兄さん、お散歩また行こうね!」
「!うん…!」
ニコニコと嬉しそうに笑うアル兄さんは本当に可愛らしい。
…………決してショタコンなわけではない。断じて違う。
が、王族は皆眉目秀麗である。父様も母様もアル兄さんもとても綺麗な顔をしている。ボクの顔も前世とは異なり、綺麗に整っているのだと思う。前世は可もなく不可もなく、だった。
「さぁて、ルーク。お腹は減ってないかしら?なにか作ってくるわ。」
「いえ…あまりお腹は減っていません。」
「あら、そう?」
「あと……書斎と資料室へ行ってきてもよろしいですか?」
「えぇ、それは構わないのだけれど…急にどうしたの?」
「少し、調べたいことがあるのです。」
「分かったわ。書斎の鍵はコレよ。使い終わったら私に返してね?」
「はい。」
テディベアを片手に持ち、ベットから降りて鍵を受け取る。いつの間にかアル兄さんは居なかった。父様のところに行ったのだろうか。
「行ってきます。」
「はい、いってらっしゃい。」
母様はニコニコとボクに手を振り送り出してくれた。テディベアを抱きしめて手を振り返す。これは今世でのボクの癖。気がつくと近くにいつもテディベアを置いている。
パタン、と閉まった部屋の中で母様が呟いた。
「元からしっかりした子だったけれど…何かが変わったのかしら?更に大人びた気がするわ…。」
口元に白い綺麗な手を添え、そんなことを考える王妃はとても綺麗だった。
激しい頭の痛みと眩しさで意識が浮上する。体がだるく、思うように体を動かせない。それでも首を動かして周りを見渡す。
1番に目を引いたのは、窓から吹く風に揺られるカーテンと、窓から差し込む夕陽に照らされてきらきらと輝く金の長髪。
「ルーク…?」
金髪の少年は目を見開いて呟く。だんだんとその瞳には涙が溜まってきて……
「うぁぁぁぁあああ゛あ゛!おぎないとおもっだぁぁぁぁあ!!」
ガバッとボクに抱きつく。思わずパッと身を引いてしまったが、そんなことも構わずに少年は苦しいくらいにボクを抱きしめた。
「よがっだぁ゛ぁぁぁあああ…」
「ぅ゛…苦しいよ…離れて“アル兄さん”…」
(アル兄さん…?)
するりと自然に出てきた言葉に困惑する。それを自覚した瞬間
「いたっ……」
激しい頭痛が更に主張してくる。心配そうに覗き込んでくるアル兄さんの声も聞こえない。
あれ、どうして、俺は、あれ、高校にいた…?
いろんな記憶がぐるぐる頭を巡る。お母さんと母様、友人、アル兄さん…小さな“ボク”、そして高校生の“俺”……
__________思い、出した
「ぅ、ん……大丈夫だよ、アル兄さん…」
「ほんとに?ほんとに大丈夫?」
「うん…」
この少年は“今世”の兄である、アル兄さん。この国の第一皇子だ。いつもボクのことを考えてくれる、優しい兄だ。そして第一皇子を兄に持つボクはもちろん、この国の皇子。第二皇子にあたる。
前世では高校生をやっていたんだ、ボクは。
思い出したことを順々に整理していく。そして分かったことは、自分が前世では高校生であり、順風満帆とは言えないがそれなりに充実した日々を送っていたこと。たったそれだけ。
前世の記憶、というものを持っていること自体ありえないからそれは当たり前なのかもしれない。
「あっ!僕、母様呼んでくる!待っててね、ルーク。」
「うん。」
じっくり考え込んでしまったボクを、体調が悪いせいだと思ったのだろうか。アル兄さんはぱたぱたと廊下を駆けて母様を呼びに行ってしまった。
「ふぅ……」
頭痛に顔をしかめつつ、ゆっくりと体を起こす。
前世の記憶を思い出してから改めて部屋を見ると、自分の自室の大きさに萎縮してしまう。王宮だからなのだが、前世で住んでいた安いアパートの5つ分はあるだろうこの広さ。
「広いなぁ……」
思い出した前世の記憶よりも大分小さな自分の体は、何をするにも大変だ。
ベットで一緒に寝ていた大きなテディベアを抱きしめて布団に潜る。何でかは知らないが、疲れのおかげでもう一眠り出来そうだ。
……たぶん無理だろうけど。
ドタバタと駆けてくる足音は部屋の前で急停止する。
「ルークっ!!」
バンッと部屋の扉を叩きつけるように開けたのは、この国の王妃。ボクの母だ。真面目だがお茶目な面も持つ、可愛らしい人だ。
「母様…」
「良かった…目が覚めたのね。心配したのよ?ルークったら2日間も意識が朦朧としているのだもの。もう大丈夫?」
「大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
「本当に良かったわぁ~。あの人がもうそろそろ、仕事を投げてまで来そうだったんだから。」
あの人、と言うのはボクの父、この国の王だろう。いつも家族を思い、国民のためを考える立派な王だ。
「ルーク…ほんとにごめん。あのとき僕がしっかり手を握っていれば…」
「へ……?」
何のことか分からず首を傾げるボクに、母様が驚いたようにいう。
「覚えてないの?あなたはアルフォンスと庭をお散歩中に、足を滑らせて階段から転げ落ちてしまったのよ?」
「あぁ……」
確かにありました、そんなことも。
アル兄さんが申し訳なさそうな顔でこちらの様子をうかがっている。ボクが怒っているのが心配なのだろうか。
「アル兄さん、お散歩また行こうね!」
「!うん…!」
ニコニコと嬉しそうに笑うアル兄さんは本当に可愛らしい。
…………決してショタコンなわけではない。断じて違う。
が、王族は皆眉目秀麗である。父様も母様もアル兄さんもとても綺麗な顔をしている。ボクの顔も前世とは異なり、綺麗に整っているのだと思う。前世は可もなく不可もなく、だった。
「さぁて、ルーク。お腹は減ってないかしら?なにか作ってくるわ。」
「いえ…あまりお腹は減っていません。」
「あら、そう?」
「あと……書斎と資料室へ行ってきてもよろしいですか?」
「えぇ、それは構わないのだけれど…急にどうしたの?」
「少し、調べたいことがあるのです。」
「分かったわ。書斎の鍵はコレよ。使い終わったら私に返してね?」
「はい。」
テディベアを片手に持ち、ベットから降りて鍵を受け取る。いつの間にかアル兄さんは居なかった。父様のところに行ったのだろうか。
「行ってきます。」
「はい、いってらっしゃい。」
母様はニコニコとボクに手を振り送り出してくれた。テディベアを抱きしめて手を振り返す。これは今世でのボクの癖。気がつくと近くにいつもテディベアを置いている。
パタン、と閉まった部屋の中で母様が呟いた。
「元からしっかりした子だったけれど…何かが変わったのかしら?更に大人びた気がするわ…。」
口元に白い綺麗な手を添え、そんなことを考える王妃はとても綺麗だった。
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コメント
春風 めると
生まれて数年してから記憶を取り戻すって新しいですね、、、おもしろいです
更新楽しみにしてます!