異形と少女と廃屋と

天邪鬼

干渉

 ある夏の暑い日。私はとあることをしていた。
「いって。」
手首にカッターナイフを当てる。深く入るとそこから深紅の生暖かな液体が零れてきた。
「…まだ生きてるんだ。」
 篠山沙也加。人とずれてる高校生。私は毎朝起きるとき、自分が死んだかのように感じる。
「なんで実感わかないんやろ。まあいいや。」
私は毎回こんな感じ。言うなれば、痛みや血を見ることが死への麻酔になっている。そんな感じかな。
「学校、どうしよう。」
私には今、私を養育してくれる人はいない。親戚はみんな遠くに住んでるし、両親は2年前に死んだ。公立高校に通っているからあまり授業料はかからないものの、1人というのは何ともさみしいものだ。この腕のせいでいじめられるし。
「まあいいや。どーせ明日から夏休みだし。」
担任である高木先生は私の事情を知っている。誰よりも信頼できて頼りになる先生だ。だから連絡しなくても大丈夫だろう。
「…外に出なさすぎるのはまずいし、散歩でもしようかな。」
家の近くにはひとつの寂れかけた神社がある。思ったよりそこは涼しく、隠れた私だけの避暑地だった。
「着いた…けど、なんかいつもと違う?」
雰囲気が異様だった。何が悪いことが起こりそうなほどあたりが急に暗くなった。
「おい、まだ午前中だろ?しかも天気予報は快晴だって…」
その時。
激しい轟音とともに真っ白な光が視界を包んだ。
「ぐあっ!」
そして何もわからなくなった。


しばらくしてから目が覚めた。
「うぅ。頭痛い…え?さっきの、雷?」
しかし、辺りは何事も無かったかのように何も変わっていなかった。ただ、空が明るくなっているのと、私の目の前に何かがいるのを除いては。
「な、お、お前…誰?」
恐る恐るそれに話しかける。
振り向いたその顔は、火傷のような傷跡によって皮膚が爛れ、原型が分からなくなっていた。

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