ファントムペイン

葉月 飛鳥

第1話

ピッーーーーー


右手に持っていたカードキーを通した。
ここは自分の家でない。
今いる場所は東京都内、新宿のビルの地下。
地下何階だろうか。
エレベーターで来たからよくわからない。
表示パネルを見ても真っ暗で、ただ下に行っているんだなと感覚で感じとっていた。
エレベーターの扉が開くと真っ直ぐ直線の通路があって、その先に扉があった。
そのままゆっくりと進んで、もらったカードキーで扉を開けると窓もない大きな部屋があった。


(ここが・・・あの男が言っていた場所か?)


左右を見ると棚にギッチリと入ったファイル。
一冊ずつ分かりやすいように書いているのだが一体何のファイルなのかは、この距離から見えなかった。


『きみが、望月アオイ君?』
『・・・はい。』


本棚を抜けると大きな机と高く積み上がった書類らしきものが目にいった。
声はここから聞こえてきたはずだが、書類が顔以上に積み上がっている為、顔が見えない。
多分、声からして40台の男性だろう。
おっとりとした優しそうな声だった。
男は椅子をガタッと音をたてながら立ち上がると、アオイに顔を真っ直ぐと見るとスッと右手を差し出した。


『きみのことは菅原君から聞いているよ。ようこそ、機密諜報機関(通称:F)へ。』


*******


ーーーーー20XX年



人々にある現象が起きた。
ある人は大地を動かし、またある人は翼を出して空を飛んだ。
ありえない・・・。
人々は驚いた。
これはなんだと。
この力はなんなのかと。


『これは自然現象です!人の力ではありません!』
『いえ、これは何らかの映像トリックではありせんか?CG映像の可能性があります。』
『いえいえ、これは科学によるものだと思います。』
『どれも違います。これは宇宙からのメッセージです。我々に何かを伝えたいのではありませんか?』


学者達の様々な仮説が飛びかった。
新種の生物説、機械による最新技術説、もしくは地球外生物説。
しかし、どの学者でもこの不可解な現象を説くことも出来ない。
そんな非現実なことなど誰が説明出来るのだろうか。
結局、口論だけで終わってしまう。
しかしそんな中、1人のある学者はこう言った。


『これは幻影(ファントム)です。』


その学者の一言で、さっきまで言い争っていた場所がピタッと静かになった。
その学者よりも大声だったのに関わらず、一気に静かになったのだ。
そして皆、ゆっくりとその学者へ顔を向ける。
反論をするのか。
それとも、馬鹿らしと非現実的だと笑うのか。
そんなことを言う学者など誰もいない。
ただ、その学者を言葉の続きを聞きたい。
それだけを思った。


『皆さん、目に見えるものが全てではない。超人、自然現象、奇跡、様々な呼び名があるでしょう。しかし、それはたった1つの力が原因なのです。』


ーーーーガタッ


その学者は立ち上がり、他の学者に向かって叫んだ。


『その名はファントムペイン。人々に宿る能力(ちから)です。』

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