もう一度だけ、彼方に逢いたい

ゆん。

生まれ変わった2人の出会い

ーー四月二十日
彼女がこの世を去ってから、1週間が経った
僕は、意を決して、いつもの場所にいき、彼女の手紙に書かれていた瓶を掘り起こした
僕は、その場でそのまま、瓶の中の薬を飲んだ
薬を飲むと、水の底に沈むような感覚が自分を襲う
遠くで、誰かに呼ばれているような気がした




僕が目を覚ますと、そこはいつもの場所だった
僕はあれから、木にもたれかかって、寝てしまっていたらしい
でも、何かがおかしい
どうやら、周りの風景を見る限り、寝ていたと一言で片付けられるようなものではなかった
そう、本当に前世帰りしていたのだ
そんなことを考えながら、遠くの空を見つめそのままぼーっとしていると、 少女の声がした
小学一年生くらいだろうか
こちらを覗き込みながら心配そうに見つめている

「大丈夫ですか?お身体が悪いのですか?」

体に合わない言葉使いをするその少女の声は、どこか懐かしい気がした
あの時、僕のことを呼んでいたのも彼女だったのだろうか
僕は、とりあえず、心配そうに見つめてくる彼女を落ち着かせるため、立ち上がって、服をはたき、彼女ににっこりと笑って見せた

「大丈夫だよ ありがとう」

その少女の目は、彼女に似ていた
懐かしい遠い記憶の中にいる彼女に
とても とてもよく似ていた

「それなら、よかったです」

彼女はふわっと微笑み、駆け足で何処かへと行ってしまった
その時、僕は足に感覚がないことに気がつき、ふと自分の足元を見る
目線の先にはうっすらと地面が透けてみえる自分の足があった
そういえば、前世帰りするとあやかしになってしまうのだと、あの手紙に書いてあったような気がする
そんなことを思いつつ、どうしたものかとあたりを見渡す
そこには近代的な建物や、見たことのないような服を着る人々がいて、和服を着ているのは自分だけだった
あたりを見渡していると、突然強い風がふき、自分の体が無意識にも宙にふわりと浮いた
どうやらあやかしの体は自由に浮くこともできるらしい
謎の疲れを感じていた僕は、その力を使って先程まで寄りかかっていた木の上にのぼった
そして、朝の明るい光の中に包まれながら静かに眠りについた

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