改変の少年

ノベルバユーザー136687

10話

「それでは行きましょう。もうすでに
受験者は集まっているようです。

「そうだな。そういえば、試験は
座学以外に何かあるのか?」

 アゼルはすぐそこまで迫った学校に
向かいながらマナに聞く。

「試験科目は順番に座学、戦闘実技を行いますよ。」

 その質問にマナはさも当たり前かのように答える。そんな話をしている間に
学園の入り口に着いた。

「さて、ここからは別行動としましょう。
お互い合格できるよう頑張りましょう。」

「あぁ、そうだな。ここまでありがとう。」

「いえいえ。」

 そう言って、マナは先に試験会場へと向かう。すると、周りの人が彼女を見て、
ざわつき始める。それもそのはず、彼女は王族なのだから。

「さて、行くか。」

 その様子をまるでつまらないものでも
見るかのように見たアゼルは視線を外し
試験会場へ向かう。
 そして、アゼルは試験会場で自分の座席に着き、それから間もなく座学頑張り始まった。









 座学試験を終えたアゼル。

(座学は問題ないな、あれなら満点に近いだろう。問題は実技だな。どこまで手加減するか。)

 早速、次の試験のことを考え始めるが
どこか論点が外れているアゼル。

(次の試験は昼食後か。別に食事を取る
つもりはないから時間が余るな。
試験会場に行って準備運動しておくか。)

 そう思い立ったアゼルは早速会場に
足を運ぶ。
 次の試験会場である室内闘技場の様な
場所にはすぐに着いた。だが、アゼルは
知らない。この場所が本来の試験会場である第1訓練場ではなく第2訓練場だということに。

(さてと、走るか。)

 アゼルは走り出す。体に何の強化も施さずに全力で。
 そして走り出してアゼルは違和感を感じる。

(そろそろ誰か来てもいい頃だが何故誰も来ないんだ?まぁいい、走ろう。)

 アゼルはすぐに意識を走ることに切り替える。
 それからどれだけ時間が経っただろう。
もうすでに試験開始時間だがだれも来ない。

(おかしい、もう試験開始時間を過ぎている。受験生はとにかく何故教師も来ない。)

 アゼルは流石に不審に思い、走るのを切り上げ、外に出ようとする。
すると、

「誰だい君?ここの生徒じゃないね?」

 若い男に長身の男が入ってきた。

「ここに入学試験を受けに来たものだが
一向に試験監督が来ないので、確かめようとしていたところだ。」

 アゼルは特に焦ることもなく、淡々と事情を説明するが返ってきた答えは
予想外なものだった。

「え?試験はもう終わったよ?
それに試験があるのは第1訓練場で
ここは第2訓練場だよ。」

「なんだと?」

 事態が深刻な事にやっと気づいたアゼルは黙り込み、男も黙り込んでしまう。
なんとも言えない沈黙が漂う。
 その沈黙を破ったのは若い男の方だった。

「なら、僕が試験をしてあげようか?
実技試験の対戦相手をしてあげよう。」

「なに?本当か?」

 男が発した言葉に希望を見出すアゼル。

「あぁ、本当だ。
なら早速始めようか。いつでもかかってきていいよ。」

 そう言って男はこちらを見据えて
構えるわけでもなく、立ったまま
こちらを見ているだけだ。
普通の者なら隙だらけだと思うだろうが
アゼルは違った

(この男、隙が全くないな。それに
この感覚、カエサルと同じ感じがする。)

 アゼルはこの男が強者である事を
理解した。

「ほぉ?ここで突っ込んで来ないとは。
中々優秀な様だね。ならこれならどうかな?」

 そう言うと男の姿が消えた。
アゼルはすぐに男の姿を探すがどこにも無い。するとアゼルは背中にとてつもない悪寒を感じた。急いで振り向くとそこには柔和な笑みを浮かべ、拳を振り上げる男の姿があった。

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 声を上げながらアゼルはその拳を
体を捻らせ回避する。それと同時に
がら空きの胴にカウンターを入れようとするが

「これにも反応するとは面白い。」

 そこには男の焦った顔ではなく、
あいも変わらず男の柔和な笑みだった。
その笑みにとてつもない寒気を感じたアゼルはすぐにそのカウンターの拳を引っ込めて後ろに飛び距離を取る。

「うん、微弱な殺気にも敏感、反応できる。いいね君。」

 アゼルはすでに息が上がり、大量の汗をかいていた。

(まずい、完全にリズムを崩されている。
落ち着け、このままだと自滅するぞ。)

 アゼルは自分にそう言い聞かせ、息を整える。

「身体強化」

「もう既に身体強化が使えるのか。」

 男は少し驚きの表情を浮かべるが
すぐにそれを消す。

「君、名前は?」

 男はアゼルに名前を聞く。

「アゼル。アゼル・リンドブル。」

「なるほどね、君がカエサルの…。」

 男はアゼルの名前を聞くと驚くが
納得したかの様に頷く。そして、男の顔から笑みが消える。

「?!!」

 その瞬間、この部屋の空気の温度が下がったかの様に感じた。それだけ、目の前の男の放つ威圧がすごいものであった。

「さて、少し本気で相手をしよう。
一瞬でも気を抜けば死ぬから
気をつけてね?」

 その時、アゼルは悟った。
ここからが本番なんだと。
そして、アゼルの最終試験が始まる。







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