2話

　家に帰ったアゼルとイリス。2人の様子を見てやっぱりという表情を見せるミラ。

「おかえり、2人とも大丈夫？」

「大丈夫だよ！全然平気！」

　そう笑顔で言ってみせるイリス。だが2人はその笑顔が無理して笑ってみせているものだとわかっている。
　それを見たアゼルは心が抉られるような思いになる。

「イリス強がらなくてもいいのよ。あなたはまだ子供なの、誰かに頼っていいのよ。
ほら来なさい」

　そう言い腕を開き、抱きついて来なさいと意思表示をするのミラ。
　それを聞いたイリスはダムが決壊したように沢山の涙を流しながらイリスの胸に飛び込み大声を出しながら泣いた、泣きじゃくった。その後、泣き疲れたのかイリスは 目元を腫らしながら眠ってしまった。

「アゼル、ありがとね。ご苦労様。」

「大丈夫。」

　アゼルを労うミラ。そして、大丈夫と答えるアゼル。アゼルの心はイリスの泣き顔を見てから何かに締め付けられていた。
その様子はまるでアゼルの何かが出てこぬように縛り付けるようであった。

「もう夕方になるわ。お父さんも帰ってくるし、休んでなさい。」

　ミラに言われた通り自分の部屋に戻るアゼル。部屋にいる間、アゼルはずっと己の中に渦巻く何か黒い感情について考えていた。

（何なんだ、この感覚は。前から感じていたけど前より強くなってる。この感覚は良いものではないとなんとなくわかるけど、
少し気持ちが良くなる。何なんだよ。）

　しかし、いつまで経ってもそれが何かわからない。困惑していた時だった、

「ただいまー！帰ったぞー！」

　一家の大黒柱のお帰りだ。

「今日は魔物がいなくてな、何も狩れなかったぞぉ…って、どうした？何かあったのか？」

　バンが家の雰囲気が暗いことに気付き
問いかける。その問いかけに答えるように
ミラが事情を説明した。

「くそが！村の奴ら、まだそんなことを！許せん！」

「バン！落ち着いて！気持ちは分かるけど
怒鳴り散らしても解決しないわ！」

　怒り狂うバンを諌めるミラ。そこにアゼルとイリスが来る。

「父さんお帰り。」

「お父さんお帰り。」

「おう、ただいま。2人とも。」

　帰ってきたバンを出迎えるアゼルとイリス。
　そして、イリスの未だにひかない目元の腫れを見て何かを決心したバン。

「皆んな、話がある。」

「何？」

ミラが聞き返す。

「この村を出ないかか？」

「「「？！！？！！」」」

バンの言葉に驚く３人。

「この村を出て、少しでも差別の少ない場所で暮らさないか？こんな環境、イリスには辛すぎる。職も失うが家族みんなが一緒なら何とかなるさ。」

　その言葉にそれぞれの反応をする３人だがイリスは泣いていた、だがその涙もは先程のような悲しみではなく、喜びに溢れたものであった。イリスのその様子を見た３人は決まりだと言った表情である。

「なら、早速支度しないとね。
こんな村早く出て行ってやる。」

　そのミラの一言で家族皆が行動を開始しようとしたその時、

「と、盗賊だぁぁぁぁぁぁぁ！！」

「なに？！」

　村から聞こえてきた叫び声に厳しい顔を見せるバン。

「バン……」

　不安な顔をするミラ。そんなミラを見たバンは、

「ミラ、家から絶対に出るなよ。
俺も一緒に家にいる、入ってきた盗賊は俺が相手をする。子供達を何処かに隠そう。」

　ミラに指示を出すバン。それを聞いたミラは、

「アゼル、イリス、物置きの中に隠れてなさい。」

　子供を物置きの中に入れようとするミラ。

「で、でも！！」

　嫌な予感がするアゼルは抗おうとするが
バンの一言によって止めざるを得なくなる。

「アゼル！！大丈夫だ！！！それにお前がイリスを守るんだ！いいな？！
これが片付いたら皆んなで住める場所を探そう！」

　バンのこの言葉を聞き大人しく物置きの中に隠れるアゼルとイリス。
　2人が隠れたその直後、玄関から盗賊と思わしき３人組が入ってきた。

「この村にオッドアイのガキがいると聞いたがこの家にはいねぇかぁ？」