改変の少年

ノベルバユーザー136687

1話

「アゼルー、イリスーご飯だぞー。」

 若い男が自分の子供である2人の名前を呼ぶ。その声があってから数秒経たぬうちに2階からの階段を駆け下る2つの足音。

「「はーーい!」」

 姿を現したのは2人の兄妹であった。
 2人の兄妹の顔はどこか似ており、髪色は同じ黒である。違う所をあげるなら、
妹であろう少女の瞳の色が左右で違う、
いわゆるオッドアイというものである所
だろう。

「ほら、2人とも早く席について」

 そう声をかけるのは黒髪の若い女だ。

「わかってるよ母さん。ほらイリスこっちに座りな。」

 少年もといアゼルが妹であるイリスに優しく声をかける。

「わかってるよ!お兄ちゃん!子供あつかいしないで!」

 むすぅと擬態語が付きそうなほどを顔を膨らませ怒るイリス、それを見つめ苦笑いするアゼル。それを微笑みながら見つめる親。どこから見ても平和な家族である。

「子供扱いしないでって言ってもイリスはまだ4歳よ?」

 母親であるミラの言葉でイリス以外が笑い声をあげる。

「むぅぅ」

 さらに不機嫌になるイリス。

「そういえばアゼルはもう5歳だよな?そろそろ能力検定じゃないか?」

 不機嫌になる娘を放ったらかして口を開くのは父親であるバン。

「父さん能力検定って何?」

 子供らしく目を輝かせながらバンに尋ねるアゼル。

「能力検定っていうのはな自分の5つの能力値である体力、魔力、攻撃力、防御力、素早さをEからSSSまでのランクで表示するのと、固有の能力である魔能、そして固有武具を顕現させる。そして、それらをステータスプレートと呼ばれるものに記録する儀式のことだ。」

 自慢げに語るバン。

(す、すごいなぁ僕は一体どんな能力なんだろう、ものすごく気になる)

 バンの説明を聞いて様々な想像を膨らますアゼル。この年頃では自分が英雄になるのを夢見るものである。

「はいはい、2人ともいつまでも話してないで早くご飯食べちゃって」

 諭すように2人に言うミラ。どうやらこの会話の間にイリスとミラはご飯を食べ終わっていたようだ。
 それを聞いた2人は急いでご飯を食べ出す。男2人の勢いは凄まじまくものの数分
で完食した。

「父さん能力検定ってどこでするの?」

「能力検定はな王国の教会でするんだ。
このロコ村から王国までは大した距離じゃないからすぐ着くぞ。」

「やったぁ!なら今度能力検定しに行きたい!」

「そうだなぁ、アゼルも5歳だし今度行くか!」

 食事が終わっても熱冷めぬ2人。そんな2人をまた諭すかのように

「バン…お仕事は?」

 ミラの無言の圧力が襲う。

「おっといけね、アゼルこの話は帰ってきてからな!行ってきます!」

 圧力から逃げるように仕事である狩りに出かけていくバン。

「お兄ちゃん遊ぼ。」

「いいぞ、何して遊ぶ?」

「…お外」

 俯きながら妹が放ったその言葉には顔を曇らせるアゼルとミラ。

「母さん…」

「仕方ないわね、でもあまり外には行っちゃダメよ。アゼル、イリスをよろしく頼むわよ」

 厳しい表情になりながらも承諾するミラ。

「わかったよ母さん。それじゃあイリス行こうか。」

「うん!」

 手を繋ぎ家から出て行く2人。
そんな2人を見送るミラは悩んでいた。

(お外に出て大丈夫かしら、アゼルがいるから大丈夫だとは思うけれど、イリスは辛いはず。本当に心配だわ、お願いだから無事で帰ってきてね)

 ミラがそう思うのも当たり前。この世界にはあまりよろしくない風習があるのだから。

「うわー、色違いだー!」

「気持ち悪」

「今こっち見たよ、怖いよぉ」

 村の子供たちから浴びせられる罵詈雑言。
大人たちからは厳しい目線が浴びせられる。
 それら全てはイリスに向けられていた。
 そう、よろしくない風習とはオッドアイ
への差別である。その差別意識からオッドアイを持つ人々は色違いと呼ばれる嫌われる。なぜそこまで嫌うのかそれは昔、この世界を滅ぼそうとした魔王がオッドアイだったからと言われている。世界全員が差別意識を持つわけではないがそれでも差別は多い。

「……」

 それらの差別を受けるイリスはただ黙って俯いている。その目尻には僅かながら涙もある。

    ギロッ

 しかし、それらの罵倒はアゼルの有無を言わせぬひと睨みで止んだ。アゼルはイリスを抱き寄せ家へと帰った。

(くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!何なんだよ、あいつらのあの目は。まるで気持ち悪いもの見るような目をしやがって、こいつが、イリスが何かしたのかよ!ただ、左右の目の色が違うだけで何でここまで辛い目に遭わなくちゃならない!普通の女の子なのに!何でわからない!何でわかろうとしない!この世界はおかしい!こんなの絶対に間違ってる!)

 イリスを優しく抱き寄せる腕と逆の手はこれでもかというぐらい爪がめり込み、血が滲むほど握られていた。






 


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