なぜ僕はこう何回も理不尽に囚われるのか

ノベルバユーザー211081

日常の違和感

 「あー…」
 考えたこともなかった。他人との会話経験があまりにも少なすぎることがここまで影響を及ぼすとは…だが沈黙を貫くことが失礼であると悟り
 「そうだなあ、んー…」
あたかも考えているかのような声やしぐさで何とか間を持たせると同時に必死に思考する。
その間にもいまかいまかと返答を心待ちにしているリサの視線と、刻一刻と迫っているであろう見えないリミットのプレッシャーが降り注ぐ訳であって。
 だんだん朦朧としていく意識の中、リサの

 「とくにこだわらないんだったらこっちで決めちゃおうか?」
という一言で事なきを得たが、その時のリサの笑顔は、どこまでも広がる空のように透き通っていて、ぼくには天使にも、神にさえ見えた。余韻に浸る暇さえ与えず
 「じゃあ 尊くん って呼ぶとして、自己紹介だっけ?」
リサは問いかけてくる。が、いつまでたってもなれない僕ではなかった。自分でも関心するような適用の速さで
 「うん、何か変なこと言ってなかった?」
器用に返して見せた。だが
 「とくに変なことは言ってなかったと思うけどなあ」
安堵で崩れそうになった僕には致命傷だった。
 「めっっっちゃ挙動不審だったけど(笑)」
 
……

ま、まあ最初転んだくらいなら平気だろう。最初のダメージに反して、立ち直ってからは意外と平然としていられた。 
 「ちなみにどんなこと言ってたか覚えてたりする?」
ほぼないであろう可能性にかけてリサに質問を投げかけた。が、その質問は誰もが予想もつかないような結末を迎えた。それは…

<沈黙>

 「二人ともさっきからにぎやかじゃないですかー?せめて先生の自己紹介くらい聞いてくださーい」
「悪寒が走った」などということばでは表現が追い付かないような現象だった。言葉が全く出ず、全身から生気が抜けていくような感覚。「蛇ににらまれた蛙」というのはこういう状態を表すのかと、あとあとになって思う。 
恐怖の感情はまるで霧が消えるかの如く、「不自然」なまでに「自然」になくなったが、恐怖がなくなった後にも僕には違和感が残った。
 前世とはいえ、記憶がないからとはいえ、僕はこんな日常の中の恐怖に屈するようなレベルの魔術師ではなかったはずだ。その違和感は、いつまでたっても抜けることはなかった。








 

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