君なんてダイキライ!

那月 綾

忘れていた記憶

私には感情があまりない。
それは、いろんな人に言われたから。お母さんも、お父さんも、学校の先生も。
私の周りにはいつも誰も居なかった。
『春香ちゃんってつまんなーいっ!』
そう言っていた女の子。
『ちっ…少しぐらい動揺した顔だせよ!つまんねぇ女』
いじめをしてきた男も言う。
(私は、そんなに感情がないのか?)
私はそんな時に思ったのだ。
“だったら、生きたって意味が無い”
私は生まれて物心ついた時から感情と言うものを忘れてしまっている。いや、分からなかった。理解しようとも思わなかった。
なぜ、理解しようと思わないのかい?
と、言われたから、シンプルな考えを、返事を言う。
“どうでもいいし、興味がない。”
と。
別に、私は一人でも寂しくも何ともない。逆に一人の方が楽と考えていた。
でも、おばあちゃんと会ってから私は少しずつだが、人間らしく感情を理解しようと考えるようになった。
「…おばあちゃん、感情って、なんだろう。私ね、いつも、いつもみんなに『つまらない』とか『感情がない』とか言って来るんだ。」
初めの頃は会話すらしなかったが、直感的に“この人は大丈夫”と思って話すようになった。
「でもね、私はそんな事ないと思うのよ…だってあなたは…人間なのだから…」
「人間」…私はその言葉に助けられた。私は心のどこかで、自分は人間なのか?と自分自身分からなくなっていたのかもしれない。
その日から私はおばあちゃんを信頼して、よく遊んだ。おばあちゃんが大好きになった。
でも、私はおばあちゃんに甘えすぎたのかもしれない。
あの夏休み最後の一週間に入った日
私はおばあちゃんを無くした。
あの男に誘拐されそうになった日だった。
あの男は私のおばあちゃんを殺した後、こう言った。
『もし、知られそうになったら…その人達を…殺すんだよ?…いい?』
あの男はそう言ってすぐに何かわからない…薬を私は飲まされた。
その薬はなんだったか分からなかった。でも、少しだけ甘かった。
「…おばあちゃん…起こさないと…」
その後の記憶はない。多分、倒れたのだろう…。あの薬は、きっと記憶を忘れさせるために飲まされたのかもしれない…。


「…だから、私は……僕はあんたらを殺さないと…いけないんだ…」

「…そんな理由で殺すな!それは、春香さんが決めたわけじゃないんだろ?だったら、春香さん、自分に正直になってよ!」
そう、神崎さんが言うと同時に、私のドアの近くで誰かが拍手した。神崎さんでも、里美さんでも、大和さんでも、ない、誰かがいた。
その人は、今の僕だったら分かる人物だった。
「っ!…あんたはっ…」

「な、なんでいるんだ?」

「…ククククッ、いや〜面白い!流石だね、春香?やっと、思い出してくれたんだね?僕のことを!」

「…青柳…瑛…の…」

「「「…?の?」」」

「…弟さん…」

「「「うっそっ!」」」

「あの先生に弟なんていたんだ…」

「あれ〜?僕の、な・ま・え…言ってよっ…知ってるでしょ?」

「青柳…潤(あおやぎ じゅん)」

「せいか〜いっ!」

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青柳 潤
ドS
瑛の弟で腹黒いのに…イケメンでアイドルをやっている。
演技が上手く、相手を騙すのが好き


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