実録怪異譚
第3話 呼ばれた話
その人は物凄く臆病でした。
どのくらい臆病かというと、「カーテンの向こうに女の人の足が見えた気がする」と言っただけで、かなり怒られました。
「トイレいけなくなる!」
「シャワー浴びれなくなる!」
そう言われた気がします。
そして何故そんなに臆病なのか、という話の中で聞いた一つが呼ばれた話です。
普段から臆病なその人は暗い夜道を一人で歩いたりするのが大嫌いです。極力避けるそうです。
それなのにその日はどうしても『行かなければいけない』と思ったそうです。
いつも通り過ぎるだけの公園に車を止めたその人は何故か懐中電灯持参で、深夜の公園の林に入って行ったそうです。
一人で。信じられない話です。肝試しだって一人ではしないでしょう? 人と一緒に怖がるのが楽しいのだから。
それでもその人は行きました。不思議と迷わなかったそうです。
そしてある木にぶら下がっている人の足を見てしまったそうです。
急いで警察に連絡して、当然聞かれました。
「何故?」と。
答えようがなかったそうです。そう、『呼ばれたような気がした』だけだから。
知る筈のない事を知っていたその人は、少し警察から疑われたりもしたそうですが、「そういう事もたまにある」と言われたそうですよ。
          
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