アフ◎トリ(after trip)~廻るカルマの転生譚

アルト

第8章『エリとファーストキス』

「いただきまーす!」

「いただき、ます…」

 スパイスの効いたカレーの匂いが食欲を増進する。

 カチャカチャとスプーンの音が響くだけで、誰も自ら事について言い出そうとしない。

 しかし、このまま食事を終えるわけにもいかないので、

「えーとだな、飛鳥は俺の命を狙ってるのか?」

 灯夜は一度スプーンを置き、単刀直入に聞く。

 飛鳥も同様にスプーンを置き、まっすぐに目を向け、真実を告げる。

「ちがう。むしろ……その逆」

 まだ言葉を詰まらせながらも、飛鳥は落ち着いた様子だ。

「わたしは灯夜を守る為に、この世。つまり下界げかいにきたの…」

「守るって…誰から」

「そこのガラクタ・・・・のように灯夜を殺そうとする奴らから…だよ?」

『いまエリをガラクタ呼ばわりしてくれたです!? 上等です、かかって来いやですー!!』

 さっきまで眠っていたエリだが、ピクンと飛鳥の発言に反応し、騒ぎ出した。

『そいつは見たところ悪魔です、お前悪魔の味方になるつもりですか!?』

「あ、あくま?」

「そう。わたしは…悪魔」

 喋るネックレスの次は悪魔ときたから驚く。
 
「悪魔なのになぜ助ける側なんだ」

 数多くある疑問の中から一つ目に出たのはこれだった。灯夜からみたら助けてくれるというわけだし、むしろエリの方が怪しい。

「それは…あまり言いたく、ないの」

「なにか事情があるのか」

「ある。それにこれを教えるのはとても大変」

 それを明らかにしないと説明にはならんだろうに。

『死なせない理由を教えないあたり、さすが悪魔です。ズルイですね』

 キッ といった目つきで睨む飛鳥は反論をせず、テーブルの脚に縛られているエリの元に向かう。

「お、おい! 飛鳥怒るなって!」

「怒っては…いない。ただ、こいつは灯夜の命を狙ってる。だがら……始末するの」

 飛鳥はそう言うと右手に黒い靄がかかり、勢いよく殴りかかる。

「や、やめろ!」

 だがその声は届かない。

 飛鳥は本気で殴る。もう、間に合わない。

『ーーバカですね、三下がーー』

 一瞬で部屋中が白く光った。眩しすぎて目を開けられない。

 ドスッ… と鈍い音がして、飛鳥は壁際に倒れた。

『カウンターですよ、それよりもーー』

 ペタ、ペタと足音が灯夜に近づいてくる。

『さっさと記憶を連結させるです』

 灯夜はまだ目を開けられず、エリの声が聞こえる方へと顔を向けた。
 
『しっかり味わえです』

 驚くほど柔らかな唇の感触。

 自分の初めてを勝手に奪われたことに怒る暇などなかった。頭に大量の情報と共に映像が流れ込んでくる。

(こ、これはーーーー)

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