アフ◎トリ(after trip)~廻るカルマの転生譚
第2章『粗品のデュプリケートキー』
インターホンを押してみるも反応なし。
「ーーたく。」
あまりしたくはないのだが、合鍵を差し込む。
この合鍵は隣に越してきた黒羽・飛鳥から挨拶の粗品として渡された物。
ーー二週間前ーー
「……………はじめまして。よね?」
「あぁ…」
「コンタクト……成功。」
不思議なやつだ。一言交わしただけだが、そう灯夜は思った。
「私は黒羽・飛鳥。そこの夢ノ丘高校に転校するたぶん高校二年」
(俺と同じ高校の同い年……なのか)
見てくれはとてもいい。が、やはり不思議な女。
「私。朝が天敵なの、だから起こして」
(……親に頼めよ!)
「親はいない」
「エッ!?」
(……今の声に出てた?)
「私一人暮らしを始めるの」
「知り合いとかはこの辺いるのか?」
「……誰も……私のことなんて、知らない」
「そ、そうか…」
大袈裟な物言いだが、きっと心細いのだろう。けど、この無表情からは何も読み取ることができない……
「頼りにしてもいい?」
長い沈黙を作り、思案する灯夜。
その間、飛鳥は灯夜を見つめていた。
これを承ると朝の生活リズムが少しながらに変わる。しかも朝に弱いのは灯夜も同じ。
「うーむ。」
安易なものではない、断ろうと思い飛鳥に目をやる。
「すまん、俺には面倒ごとすぎてーー」
他をあたってくれ。 そう断るつもりができなかった。
(俺に断られたらこいつは他の野郎に頼むのか? するんだろうなぁ……一人暮らしでそれはまずいだろ!)
「仕方ない、頼まれてやんよ」
「ん、ありがと。 よろしく……ね」
彼女はそう言って合鍵を差し出し、かすかに笑った。
「アスカー!起きろー!!」
最後の防壁【寝室】、この扉の向こうにいる眠り姫を近所迷惑スレスレの大声で呼ぶ。
「まるでお袋だな、おれ。」
彼女にもプライベートがある。無断で寝室に入るのは気が引けるためこうするしかない。
ーー五分後ーー
「もう時間ねー、開けるぞ?」
「ーーーー」
沈黙だけが残る。
「くそっ 返答なし…まるで」
「しかばねのよ…ぅ……むにゃむにゃ」
「あいつ起きてやがる!?」
勢いよく部屋に入り、ベットまで足を運ぶ。
ーー薄く紅い唇、透き通る雪色の肌。流れるように伸びた黒髪。その姿はまるで人形のように美しく、女神でも嫉妬してしまうほどの端正な顔立ちである。
「寝言かよ…それにしてもーー」
そんな飛鳥は息をしていないかのように、それこそ屍が如く眠りについていた。
あまりに綺麗な寝顔に罪悪を感じてしまい、灯夜はただただ惚けて魅入る。
と、予兆なく飛鳥の目が見開いた。
「…………なっ……」
夜を連想させる黒目がちの大きな瞳が灯夜を捉え、そのまま吸い込まれそうな錯覚を与える。
「おはよ。とうや」
吐息を感じるほどの距離まで顔を近づけ朝の挨拶をしてくる飛鳥。
灯夜は驚き後ずさる。
「お、おはよう。てビックリしたわ!」
「私もビックリした……よ?
目つき悪い人が、私を見てにやけてたら」
まるで小鳥の囀りのような声色であくび混じりに言われ、灯夜は口元を隠す。
「にやけてないよ?」
「そお?」
「とりあえず服を着替えろ」
タンスを開け飛鳥の下着やらワイシャツを用意してやる。
飛鳥は気にしないと言うのだが、灯夜も年頃の男の子。毎朝己を制御するのに精一杯だ。
て、
「おい……」
服探しに目をそらすと飛鳥は二度寝に入っていた。
「起きろ!起きてくださいー」
布団を上下に揺さぶって夢の世界に行ってしまわれる飛鳥を全力で邪魔してやる。
「ん、 まだ朝の6…時…だよ……」
壁に掛けられてる電池切れの時計を指差し訴えてくる。
確かに6時を示していた。
「わりぃ、時計の針見間違えてたわ。てへっ」
「とうや、おやす……み」
「おう! おやすみ!! 」
「Zzzzz……」
「じゃ、ねぇーよ!?あの時計止まってんじゃん!もう8時になるよ!全員集合するよぉー!!」
このくだりを昨日もやったぞ。
半分以上寝ぼけている飛鳥の支度を終え、学校に着いたのは午前8時15分。
家が近くて良かったと最近は思わされる。
「ーーたく。」
あまりしたくはないのだが、合鍵を差し込む。
この合鍵は隣に越してきた黒羽・飛鳥から挨拶の粗品として渡された物。
ーー二週間前ーー
「……………はじめまして。よね?」
「あぁ…」
「コンタクト……成功。」
不思議なやつだ。一言交わしただけだが、そう灯夜は思った。
「私は黒羽・飛鳥。そこの夢ノ丘高校に転校するたぶん高校二年」
(俺と同じ高校の同い年……なのか)
見てくれはとてもいい。が、やはり不思議な女。
「私。朝が天敵なの、だから起こして」
(……親に頼めよ!)
「親はいない」
「エッ!?」
(……今の声に出てた?)
「私一人暮らしを始めるの」
「知り合いとかはこの辺いるのか?」
「……誰も……私のことなんて、知らない」
「そ、そうか…」
大袈裟な物言いだが、きっと心細いのだろう。けど、この無表情からは何も読み取ることができない……
「頼りにしてもいい?」
長い沈黙を作り、思案する灯夜。
その間、飛鳥は灯夜を見つめていた。
これを承ると朝の生活リズムが少しながらに変わる。しかも朝に弱いのは灯夜も同じ。
「うーむ。」
安易なものではない、断ろうと思い飛鳥に目をやる。
「すまん、俺には面倒ごとすぎてーー」
他をあたってくれ。 そう断るつもりができなかった。
(俺に断られたらこいつは他の野郎に頼むのか? するんだろうなぁ……一人暮らしでそれはまずいだろ!)
「仕方ない、頼まれてやんよ」
「ん、ありがと。 よろしく……ね」
彼女はそう言って合鍵を差し出し、かすかに笑った。
「アスカー!起きろー!!」
最後の防壁【寝室】、この扉の向こうにいる眠り姫を近所迷惑スレスレの大声で呼ぶ。
「まるでお袋だな、おれ。」
彼女にもプライベートがある。無断で寝室に入るのは気が引けるためこうするしかない。
ーー五分後ーー
「もう時間ねー、開けるぞ?」
「ーーーー」
沈黙だけが残る。
「くそっ 返答なし…まるで」
「しかばねのよ…ぅ……むにゃむにゃ」
「あいつ起きてやがる!?」
勢いよく部屋に入り、ベットまで足を運ぶ。
ーー薄く紅い唇、透き通る雪色の肌。流れるように伸びた黒髪。その姿はまるで人形のように美しく、女神でも嫉妬してしまうほどの端正な顔立ちである。
「寝言かよ…それにしてもーー」
そんな飛鳥は息をしていないかのように、それこそ屍が如く眠りについていた。
あまりに綺麗な寝顔に罪悪を感じてしまい、灯夜はただただ惚けて魅入る。
と、予兆なく飛鳥の目が見開いた。
「…………なっ……」
夜を連想させる黒目がちの大きな瞳が灯夜を捉え、そのまま吸い込まれそうな錯覚を与える。
「おはよ。とうや」
吐息を感じるほどの距離まで顔を近づけ朝の挨拶をしてくる飛鳥。
灯夜は驚き後ずさる。
「お、おはよう。てビックリしたわ!」
「私もビックリした……よ?
目つき悪い人が、私を見てにやけてたら」
まるで小鳥の囀りのような声色であくび混じりに言われ、灯夜は口元を隠す。
「にやけてないよ?」
「そお?」
「とりあえず服を着替えろ」
タンスを開け飛鳥の下着やらワイシャツを用意してやる。
飛鳥は気にしないと言うのだが、灯夜も年頃の男の子。毎朝己を制御するのに精一杯だ。
て、
「おい……」
服探しに目をそらすと飛鳥は二度寝に入っていた。
「起きろ!起きてくださいー」
布団を上下に揺さぶって夢の世界に行ってしまわれる飛鳥を全力で邪魔してやる。
「ん、 まだ朝の6…時…だよ……」
壁に掛けられてる電池切れの時計を指差し訴えてくる。
確かに6時を示していた。
「わりぃ、時計の針見間違えてたわ。てへっ」
「とうや、おやす……み」
「おう! おやすみ!! 」
「Zzzzz……」
「じゃ、ねぇーよ!?あの時計止まってんじゃん!もう8時になるよ!全員集合するよぉー!!」
このくだりを昨日もやったぞ。
半分以上寝ぼけている飛鳥の支度を終え、学校に着いたのは午前8時15分。
家が近くて良かったと最近は思わされる。
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