34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第75話 ソニアとシルク(25)

シルクの叔父、ハイゼンからの手紙…

ハイゼンは、シルクに王様を殺すように命令していた。

その為の毒薬も同封している。

だから、王が全ての姫の部屋に夜御渡りするということは、とんでもない好機だったのだ。

万一、王が他の姫が気に入ってしまって、シルクまで順番が回ってこないという事がないように、一番先に御渡りがあるよう急いだのである。

「なぜこんな…それに、シルクが王様を殺したとしたらすぐにバレてしまうでしょう?
そうしたら…」
シルクが震え上がる。

「ただの処刑では済まないでしょうね。言葉に尽くせない拷問の後に国中を引き回され、地獄に落とされるでしょう」
ソニアの顔も酷く青ざめていた。

「どうしてハイゼンは、実の姪に…今は娘となっているシルクに、ここまでさせるのですか?
そしてシルクは、どうしてこんな命令を聞いているの?」
中身がサラリーマンのシルクには分からないことがばかりだった。

「その答えは、ミダに聞けるだろう」
デュラン王がそう言うので顔を上げると、美貌の預言者ミダが立っていた。

「お話は聞いていました。…あなたは、未来の私がこちらに送ったのですね。
よほどのことがあったのでしょう。

さて、シルクの事は、あなたに思い出してもらう事ができます。」

「思い出す?」

「そうです。あなたは今、クロという人物の記憶しかないはず。
シルクの身体は借りても、記憶や意識は受け継いでいませんからね。
しかし、肉体には至る所に記憶が刻み込まれているのです。
ですからそれを呼び起こすことによって、シルクの記憶を知る事ができるのです。」


「肉体から記憶を呼び起こす…」

シルクはゾクっとした。

本能的に、その記憶は知りたくないものだと分かる。

時を超えて精神を移動させる能力を持つミダ、記憶を肉体から取り出す事など容易いだろう。

シルクはチラリとソニアを見た。

怖い、けど、情けなくて言えない。

ソニアはシルクの潤んだ瞳を見なくても全てを察していた。

「大丈夫ですよ。私が付いています。ずっと、手を握っています。
危険があれば、必ずお助けします。」

「ソニアさん…」

「で、ミダ、それをするにはどうすればいいんだ?」
デュラン王がミダに尋ねる。

「私が誘導しなくてはなりません。シルク、覚悟はいいですか?」

「覚悟?!う、うん、まあ、痛くないなら…。シルクの過去のこと知りたいし…」

「痛くはありません。」

ミダは、シルクの顎を掴むと、覆いかぶさるように深いキスをした。

「!!!ー!!!」

舌が探るように絡みつく。

「…!」
ソニアはシルクの手をしっかりと握りしめた。

それはキスというよりも、侵入といった感じで、シルクの中を弄っている。

探しているのが分かった。

記憶の肉体を。

シルクの顔、首、体、手足…至る所が、明かりが灯るようにあったかくなる。

と、同時に色んな映像が見えてきた。

シルクの母親の手のひら、父親の靴を履いた足、笑顔、可愛らしい自分の部屋…

幸せだった幼少時代。

しかし、ある時泣き崩れる母親がいた。

父親が死んだのだ。

表向きは病死だったが、父の遺体は首を切られていた。

後を追うように母親も自殺する。

天井から揺れる母親を見つけたのはシルクだった。

ショックも覚めやらぬまま、叔父に引き取られるシルク。

そこではさらなる不幸が待っていた。

まだ幼いシルクは、叔父の息子に乱暴されていたのだ。


「!!」
ソニアの手を握るシルクの力が強くなる。
肉体の記憶はシルクにしか見えていない…ソニアは心配になりミダに言った。

「ミダ様!シルクは大丈夫なのですが?!」

ミダはシルクから唇を離した。
「大丈夫です。夢を見ているようなものですから。ここまでくれば一人で記憶を探れるでしょう…。」

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