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34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第62話 ソニアとシルク(12)

ソニアは一緒に逃げてはくれない、そう知った時のシルクの落ち込みは酷いものだった。

さすがにメソメソ泣くことはしなかったが、もうどうにでもなれ!という気分にはなる。

王が夜に部屋にやってくると言う朝、朝食中ソニアとほとんどしゃべらず、お化けでも見たような酷い顔で中庭にふらりと出るシルク。

一人座り込んで、花壇の雑草をブチブチ引き抜く。

その様子をしばらく眺めてから、ハンスが話しかけてきた。

「シルク、どうしたの?元気ないみたいだけど。」

「・・・・・・・・。」

「はいこれ、台所のサムからパウンドケーキをもらったんだ。食べるかい?」

「・・・もぐもぐ・・・。ハンスさん、ボクもうどうしていいか分からないんです。
お妃になんてなりたくないのに、今晩王様が部屋に来るんですって。・・・もぐもぐ・・・。

もう・・・逃げ出したいです・・・。」

「シルクは王様のことが嫌いなの?」

「好きとか嫌いとかって・・・今の王様にはまだ会ってもないんですから、分かりません・・・」

「今の王様?」

「あ・・・。(数年後のデュラン王はいい人だったけど、今の王はなんか違うし)何でもないです。

いっそ、お城から逃げ出したいよ・・・。」

「お城から逃げるの?王妃になるチャンスを捨てて?
いいね、よし、私も一緒に逃げてあげよう!」

髭の庭師ハンスは立ち上がり、ちょっと嬉しそうにノリノリで言った。

「ええ?!いいの?ハンスさんお城で雇われてるんでしょ?いなくなったりしたらクビになっちゃうよ?」
シルクは慌てて止めようとする。

「いいのいいの!もうお城での小さい生活には飽き飽きしていたんだよ。
森へ行こうか、シルク。私の小屋があるんだ。川があって魚がいて、動物たちが駆けまわっているよ。
一緒に遊ぼう!」

「魚や動物・・・」
窮屈なお城の生活、逃れたい今夜、それらを忘れてハンスと森で遊べるというのは魅力的だった。

「お城から逃げられるの・・・?」

「それがね、意外と簡単だよ!お城っていうのは、入る人には厳しいけど出る人には適当なんだ。
シルクなら、私の子供ってことにすればすぐに通してくれるさ。」

ソニアさんは少し困るかもしれないけど、シルクはここからいなくなりたくて仕方なかった。

本当はソニアと森へ行きたい。

湖のほとりの若草の上で、ソニアと寝転んで言昼寝が出来たら、どんなに幸せだろう。

2人は木漏れ日が差す草の上で寝転び、手が触れ合い、抱き合い、キスをする。

それはどんなものよりも柔らかく、どんなお菓子よりも甘く感じるだろう。

どんな天国よりも幸せに感じるだろう。


そんな想像をするが、ソニアはきっと一緒に行ってくれない。

「・・・いこう、ハンスさん。森へ行こう。」




ソニアは普段、いつもシルクといっしょにいてくれたが、今日は今晩の用意が忙しいらしく姿を見なかったのでハンスと城を出るのは簡単だった。

実は、ソニアは最後まで、シルクの部屋への王のお渡りを先延ばしにしてもらおうと駆けずり回っていたのだが、雇い主であるミダはいないし、どうにも難しかったのだ。

その頃シルクは、ハンスが馬を引く1頭立ての粗末な小さな馬車の後ろにちょこんと乗っかってリンゴをかじっていた。

シルクがハンスが用意してくれた使用人が着るような服に着替え、布で頬かむりをしたら、ハンスの娘だとだれも疑わず城門を通してくれた。

もっともお妃候補の姫の顔を間近で見る事が出来る家来などは一握りしかいなかったので、シルクが庶民的可愛さであったことが決定的な理由だとも限らない。

城から出てしばらくすると、のどかなのどかなあぜ道が続き、空が青く広く広がる。

少し遠くに大きな森が見えているので、ハンスが言っているのはあそこの事だろうと思う。

「昼前には森に着くよ、シルク。私の小屋があるからゆっくりするがいい。

森は楽しい所だが、ただ一つ・・・。森の魔女には気を付けるんだよ。」


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