34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました
第60話 ソニアとシルク(10)
「そうですね・・・。ミダ様は歴代の預言者様の中でも随一と言われてらっしゃる方だもの。
この国の一大事、王妃の決定となれば、もうすでに未来は見えているんじゃありませんこと?」
アンジェリカはミダに向き直った。
ミダは妖艶な流し目を送りながら姫たちに答える。
「見えていると言えば見えていますし、見えていないと言えば見えていません。それが預言です。
例えば私が今ここで、ソフィア様がお妃さまになると予言したとしましても、それを聞いたどなたかに1時間後に毒殺されたとしましたら、予言は外れてしまいます。
そう、預言などというものは、道端の石ころにつまずいても変わってしまうものなのです。」
(石ころ・・・)
シルクは次のミダの言葉を思い出していた。
(運命を変える・・・)
一方、毒殺などど物騒なことを言われたソフィアは少し青ざめている。
他の姫も、”ソフィアがお妃に・・・”というくだりが引っ掛かって笑顔がひきつっていた。
「例え話ですよ」
ミダは微笑んだ。
なんとなく気まずいままお茶会は終わり、1時間後にソフィアは死ななかったが、可愛がっていた犬がソフィアの飲むはずだった水差しの水を飲んで、苦しみぬいて死んでしまった時は、皆ユダの石ころの話を恐怖と共に思い出していた。
「ソフィアの犬死んじゃって、可哀想だね、ソニア。」
シルクは、遅れて部屋にやって来たソニアに話しかける。
ソニアは複雑な顔をしていた。
「あの・・・、シルク様。今、ミダ様からソフィア様の犬の事件についてお話がありまして・・・。
誰の仕業か分かるまでは、お茶会など姫様方同士の接触が禁止になりました。
なるべくお部屋からの外出も控えていただきたいと。シルク様を襲った犯人も密かに調査しておりますので・・・。」
「う?うん。わかった。」
もともとお茶会なんて苦手だし、インドアな性格だし、中庭で少しハンスと庭いじりが出来れば文句もないシルク。
なぜソニアがえらく困ったような気の毒そうな顔をしているのか分からない。
「で・・・ですね。王様はこれまで、遠くから姫様たちをご覧になっていらっしゃったそうなのです。
しかしこれからはそうもいかない、とのことで・・・。
直接お会いになる機会を持たねばならないとのことで・・・。
図らずもミダ様の言う通り、毎夜それぞれの姫をご訪問なさるとのことなのです。
お嫁入を前にした姫様方のことですので、それぞれのお父様方にご確認中なのですが・・・。たぶんどなたもご了解なされるとのことです・・・。シルク様のお父様も含めて。」
「ん?そのうち王様が来るの?お菓子を用意しとけばいい?」
シルクはまだ事の重大さが分かっていない。
ソニアは目の前でキョトンとして立っているシルクが可哀想になって来た。
かなり頼りなく、年端も行かない少女である。豊か過ぎる胸が不釣り合いの小動物のようなあどけなさ。
何も知らないまま王の手にかかり、食い散らかされるというのも気の毒すぎる。
妃になれる可能性は限りなく低そうであるのに。
ソニアは出来るだけ、シルクの部屋への王様の訪問を遅くしようと画策していた。上手くいけば先の姫の時に王様が気に入って、シルクまで回ってこないかもしれない。
シルクは、ソニアが怖い顔をして考え事をしているのを見て、辛かったことを思い出して落ち込んでいるのかと思った。
(何とか元気づけてあげないと!)
使命感に燃える。
さてシルク・・・というか中の(クロちゃん)中の(正十)ひと、34歳気弱なサラリーマン、何の特技もない人間だけど、唯一口笛だけは綺麗に吹く事が出来た。
音痴なので歌はダメ、口笛だけである。
「こんな歌、どうだろう」
シルクは知っている歌を次から次へと、ソニアに吹いて聞かせた。
童謡、邦楽、洋楽、クラッシック、なんでも。
ソニアは聞いたことのないメロディをとても嬉しそうに聞いてくれた。
この国の一大事、王妃の決定となれば、もうすでに未来は見えているんじゃありませんこと?」
アンジェリカはミダに向き直った。
ミダは妖艶な流し目を送りながら姫たちに答える。
「見えていると言えば見えていますし、見えていないと言えば見えていません。それが預言です。
例えば私が今ここで、ソフィア様がお妃さまになると予言したとしましても、それを聞いたどなたかに1時間後に毒殺されたとしましたら、予言は外れてしまいます。
そう、預言などというものは、道端の石ころにつまずいても変わってしまうものなのです。」
(石ころ・・・)
シルクは次のミダの言葉を思い出していた。
(運命を変える・・・)
一方、毒殺などど物騒なことを言われたソフィアは少し青ざめている。
他の姫も、”ソフィアがお妃に・・・”というくだりが引っ掛かって笑顔がひきつっていた。
「例え話ですよ」
ミダは微笑んだ。
なんとなく気まずいままお茶会は終わり、1時間後にソフィアは死ななかったが、可愛がっていた犬がソフィアの飲むはずだった水差しの水を飲んで、苦しみぬいて死んでしまった時は、皆ユダの石ころの話を恐怖と共に思い出していた。
「ソフィアの犬死んじゃって、可哀想だね、ソニア。」
シルクは、遅れて部屋にやって来たソニアに話しかける。
ソニアは複雑な顔をしていた。
「あの・・・、シルク様。今、ミダ様からソフィア様の犬の事件についてお話がありまして・・・。
誰の仕業か分かるまでは、お茶会など姫様方同士の接触が禁止になりました。
なるべくお部屋からの外出も控えていただきたいと。シルク様を襲った犯人も密かに調査しておりますので・・・。」
「う?うん。わかった。」
もともとお茶会なんて苦手だし、インドアな性格だし、中庭で少しハンスと庭いじりが出来れば文句もないシルク。
なぜソニアがえらく困ったような気の毒そうな顔をしているのか分からない。
「で・・・ですね。王様はこれまで、遠くから姫様たちをご覧になっていらっしゃったそうなのです。
しかしこれからはそうもいかない、とのことで・・・。
直接お会いになる機会を持たねばならないとのことで・・・。
図らずもミダ様の言う通り、毎夜それぞれの姫をご訪問なさるとのことなのです。
お嫁入を前にした姫様方のことですので、それぞれのお父様方にご確認中なのですが・・・。たぶんどなたもご了解なされるとのことです・・・。シルク様のお父様も含めて。」
「ん?そのうち王様が来るの?お菓子を用意しとけばいい?」
シルクはまだ事の重大さが分かっていない。
ソニアは目の前でキョトンとして立っているシルクが可哀想になって来た。
かなり頼りなく、年端も行かない少女である。豊か過ぎる胸が不釣り合いの小動物のようなあどけなさ。
何も知らないまま王の手にかかり、食い散らかされるというのも気の毒すぎる。
妃になれる可能性は限りなく低そうであるのに。
ソニアは出来るだけ、シルクの部屋への王様の訪問を遅くしようと画策していた。上手くいけば先の姫の時に王様が気に入って、シルクまで回ってこないかもしれない。
シルクは、ソニアが怖い顔をして考え事をしているのを見て、辛かったことを思い出して落ち込んでいるのかと思った。
(何とか元気づけてあげないと!)
使命感に燃える。
さてシルク・・・というか中の(クロちゃん)中の(正十)ひと、34歳気弱なサラリーマン、何の特技もない人間だけど、唯一口笛だけは綺麗に吹く事が出来た。
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