34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第59話 ソニアとシルク(9)

ざわっ

ミダが現れた途端、お茶会の席がざわついた。

数年後のミダも超イケメンだったが、若いミダは超絶イケメンだった。神っている。

非の打ち所がない顔はモチロン、程よく筋肉が付いた長身、光差す庭であふれ出るオーラ。

(お、同じ種類の人間とは思えない・・・)
シルクは息をのんだ。

「ミダ様!やっとお茶会にいらして下さったのですね!」
まずは一番に、アンジェリカが声をかける。

「ええ。美しいご婦人方がいらっしゃるとお聞きして気後れしておりましたが、我慢できず来てしまいました。とくに・・・シルク様を拝見したく・・・。」

ざわっ(さっきと違うニュアンス)

美しい姫たち10人が、いっせいにノーマークだったシルクを睨んだ。

アンジェリカだけはポーカーフェイスを崩さない。

「ま、それは良かったですわ。シルク様もお茶会に初参加ですもの。ミダ様はさすが預言者様ですわね。」
余裕たっぷりで、うふふ、と微笑むアンジェリカ。

ミダも魅惑の微笑みを返しつつ、シルクの横にくっつくように座った。

「ミダさん・・・」
クロちゃんを過去(今)のシルクの中に運んだのは、数年後のこの人。果たして”今のこの人”は、どこまで分かっているんだろう。

ソニア・シルク・ミダ

という美形のサンドウィッチ席に座って冷や汗が出るシルク。他の姫の視線が痛い・・・。

遠くから、庭師のハンスが困り果てているシルクに”がんばれ!”のポーズを送る。シルクは”がんばります!”とポーズで返した。
その様子を他の姫は呆れて、冷ややかに見る。「使用人と仲良くするなんて・・・」

アンジェリカは場を仕切りなおすように話題を切り出した。
「ミダ様、最近私たち、王様にお会いしておりませんの。というか、お城に参りまして、最初に広間でご挨拶したきりお見掛けしておりませんわ。もう半月、お顔も思い出せないほどですのよ。寂しいこと・・・。

王妃の候補をもう少し見ていただかないと、決定の期限まで後一か月ではお決めになれないんじゃありません?

デュラン王がお忙しいのは分かりますけど、ミダ様からわたくしたちの気持ちをお伝えいただけないかしら。」

そのことは、どの姫も思っていたらしく、皆首を縦に振っている。
王と会わない事にはアピールも出来ないので、内心焦っているのだ。

「王も罪作りなお方ですね。このように美しい方々を悩ませるとは・・・。ではもし、王が夜のご寝所にて、毎晩おひとかたずつにご挨拶なさりたいとおっしゃれば、いかがなさいますか?」

シルクは何のことか分からなくて?と思いながらお菓子を口に入れた。

姫たちは頬を染めながらくすくす笑う・・・その中で、バーバラは立派な胸を張って言った。

「よろしいですわね。でもわたくしのところには最後にいらしてくださいとお伝えして下さる?次の方のところに行く気がなくなってしまわれるもの。」

アンジェリカは薄く笑い、ソフィアとその他の姫(シルクを除く)はバーバラを睨みつけた。

まだよく分かっていないシルクは、やっぱりお菓子を頬張る。(うまうま~!この世界に来てから甘いものが貴重で好きになったなぁ~)とか思っている。

ミダは口の端でニヤリと笑ってシルクの耳元で囁いた。
「王は結婚を決める前に姫たちを味見なさるかも、ということですよ?」

「このシナモンクッキーの味見ですか?他のお菓子も食べますか?」

どうにもかみ合ってないミダとシルクの会話に、横にいたソニアは笑いをこらえるのが大変だった。
肩が震えて涙が出ている。

(そんなことより、モグモグ、あと1か月でお妃さまを決めるのか・・・。モグモグ

今のところ王様とほとんど会ってないみたいだし、モグモグ、ボクが選ばれるってことはないんじゃないかなぁ・・・モグモグ。

ボクはこのままソニアさんといられればいいなぁ、なんて・・・モグモグ)


「・・・ミダ様、預言者ミダ様は、お妃候補の中でどなたが選ばれるか分かってらっしゃるのでは?」
ソフィア姫が急に核心を付いた質問をした。








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