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34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第57話 ソニアとシルク(7)

その日から、ソニアはシルクの部屋で寝泊まりすることになった。

ソニア用にベッドを運んでもらおうとしたが、何かあった時にすぐに起き上がれないからと、ソニアは硬いソファーに寝ると言う。

シルクは心配したが、戦場では岩場でも砂漠でも寝ていた身、ソニアにとっては全く問題はない。

剣を抱くように目を閉じるソニアを、シルクはしばらくジッと眺めていた。

(そういえば・・・ミダさんの話によると、いまソニアさんはゴードンさんを亡くしたばかりなんだよな。兄弟たちとも離れて、寂しいだろうに・・・。しっかりしてるけど、まだ随分若そうだ。)

若き日のソニアと一緒にいられることになって最初は大喜びしていたが、よく考えてみるとソニアは今悲しみの中にいる。

元気づけてあげたい。

幸せにしてあげたい。

笑顔にしてあげたい。

守ってあげたい。


彼女の長いまつげが小刻みに揺れるのを見ながら、シルクは心から思った。
いや、心が思ったのだろう。

中身の中身、34歳の冴えないサラリーマン。

初恋以来の、細胞が踊っているような感情に眠ることさえ忘れている・・・。
女の体でこの世界にいることがとても、とても悔しかった。



この世界に来てから色々あったけど、毎朝思うことは一つで、今まで起こった変なことが全部夢で、起きたら元の世界だったらいいのになぁということ。

また平凡な不動産会社勤務のサラリーマンで・・・帰りにラーメンを食べるのが楽しみで・・・という生活。

でも今朝だけは、元の世界に戻らないでと思いながら目を覚ました。

そこには彼女がいるからだ。


目が覚めて、紅い髪のソニアがこちらを見ていた時は、心の底から嬉しかった。

「おはようございます。朝ご飯をお持ちしましょう。」

朝日の中にいる彼女は女神のように眩しい。

「・・・ソニアと一緒に食べたいな・・・」
シルクは甘えた声を出す。

ソニアは、仕方ないですね、お毒見もかねてご一緒しましょうと言ってくれた。
下の兄弟が多いので甘える子には慣れているのだろう。

朝食の間シルクは、なるべく楽しそうな話をした。少しでもソニアの笑顔が見たかったからだ。

意外と受けたのがぽっちゃり角田さんの話で、細い階段で詰まった話をしたら小さく声を立てて笑った。

その角田さんが小さいころ、ずっとトイレを我慢していて、母親に理由を尋ねられたとき、
「昨日食べたパフェを出したくない!」
と言ったという話は、本当に涙を流して笑ってくれた。

「シルク様は面白いお方だ。さあ、朝食を召し上がったら、昨日庭師のハンスに貰った種を植えに行きましょう。今までお好きだったことをすれば、、混乱している記憶も元に戻るかもしれませんし。」

「はーい」

2人は明るい中庭に出た。髭のハンスはすでに庭いじりをしている。

「おはようございます!」
シルクは元気にあいさつした。ハンスはニコニコ笑って、
「おはようございます」
と穏やかに言う。

「ん?」
一瞬シルクは、その声に聞き覚えがあった気がしたが、ソニアに呼ばれたのですぐに忘れてしまった。

「この辺りが良いでしょうね」
畑仕事が得意なソニアはちょっと嬉しそうにシルクが種を植えるのを手伝ってくれる。

「何の花が咲くのかな?ねえ、ハンスさん、何が咲くの?」
「内緒ですよ、シルク様。咲いてからのお楽しみです。」
「そっかー。ねえねえ、ソニアさん、毎日一緒にお水を上げようね!」
「はい。」
ソニアも、離れて暮らす妹を見ている気持になるのか、シルクを見る目は優しい。

また、シルクがお妃争いから遠い所にいるからかもしれない。

3人が庭にいると、アンジェリカがやってきた。


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