34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました
第54話 ソニアとシルク(4)
ミダとクロちゃんは酒場「夜明けのニワトリ」から出て、店の横の路地に入った。
ミダは人目に付かない奥まで来ると、いきなりクロちゃんを壁ドンする。
「ミダさん・・・?」嫌な予感しかしないクロちゃん。
「君には、行ってもらわなければならないんだ。」
「行く?どこへですか?」
「・・・・」
ミダはクロちゃんをしっかりと抱きしめた。「わわわ、ちょっと・・・!」
慌てるクロちゃん、目の前にはミダの白いローブ・・・布の感触・・・
スッ
目の前が真っ暗になる。
溶けるように意識がなくなった・・・
ミダの腕の中には、抜け殻のようになったクロちゃんが残った。
*****
酒場の中では、なかなか席に戻らないクロちゃんとミダを、ロックとソニアが待っている。
「なあ、おそいな、あの二人」
ロックが気まずさを紛らわすように言った。
「ああ・・・」
ソニアも少し気になってきたようだ。
「さっき言ってた、忘れていることって、思い出したか?」
「わからない・・・・・・・でも・・・・クロ・・・・・」
ソニアはそう言って、ひとつひとつ確かめるように話し始める。
*****
9年前。ソニアがミダに花の宿から身受けされて連れて行かれた時、城の中は大変なことになっていた。
王の妃を決めている最中だったからだ。
候補は多い方がいいからと、国中から11人の姫が集められた。
10人の姫はいずれ劣らぬ才色兼備、あでやかな花のような娘たちだった。
最後の11人目の姫は、体も小さく大人しく地味で、姫というよりは使用人にしか見られない。
それがシルクだった。
シルクは父親によってこのお妃選考会に無理矢理ねじ込まれた。まだ15歳、本人は結婚なんて考えたこともなかったし、万が一選ばれても王妃なんて荷が重すぎて、自分に務まる気がしない。
お妃候補用に用意された部屋の中でも一番端の小さな部屋を選んで、コッソリヒッソリ、ただこの戦いが早く終わって解放されることだけを祈っていた。
お妃候補の中でも、最も有力だったのがアンジェリカ。
豊かで黄金のような金髪、完璧な体、明晰な頭脳。もちろん後ろ盾である両親も、コナンより東にある大国の有力な王族なので申し分ない。
ミダはソニアに言った。
「あの中からお妃を見つけて、守ってほしい。」
「見つける?そんなこと言われても、決めるのは王だろう。」
「そう、決めるのは王だが、お前には分かるはずだ。大丈夫。」
ミダはウィンクした。預言者だから何か分かっているのだろう、ソニアはそう思うことにした。
その日からソニアの日課は、ぶらぶら城の中を歩き回って妃候補を観察することだった。
王とはなかなか会えなかったが、遠目から見る限り大柄で立派そうな男だ。
ソニアが中庭をに出ると、決まってすぐに話しかけてくるのはアンジェリカだった。
いつ見ても完璧に美しい姿で微笑みを絶やさず、話し言葉も立ち居振る舞いも美しい。
普通に考えれば王妃になるのはアンジェリカこそふさわしかった。
アンジェリカと話していると、他の姫も出てきて、何となく皆でお茶会・・・というのが一連の流れになっていた。
ソニアは生まれてこの方そんな暮らしをしたことがないので、一通り姫たちを観察したら早めにお茶会から退散するようになった。
持て余した時間は、城の裏手にある小さな畑に行って紛らわせる。
そこにはいつも、帽子をかぶって髭を生やした使用人のおじさんがいて、ソニアは程なく仲良くなった。
もともと畑仕事は得意なソニア、鍬を借りて手伝いとストレス解消を兼ねて振り回す。
「そういえば、おじさんの名前聞いてなかったな!なんて名だ?」
「私か?私は・・・ハンスだよソニア。」
「じゃあ、あそこにいるお子さんは?」
「お子さん?」
花壇のそばにいつもいる女の子。
「あの子は私の子じゃないよ。」
女の子は2人の会話に気付いたのか、立ち上がって二人の方を向き、ぺこりとお辞儀をした。
「こ、こんにちは、私はシルクと申します。」
ミダは人目に付かない奥まで来ると、いきなりクロちゃんを壁ドンする。
「ミダさん・・・?」嫌な予感しかしないクロちゃん。
「君には、行ってもらわなければならないんだ。」
「行く?どこへですか?」
「・・・・」
ミダはクロちゃんをしっかりと抱きしめた。「わわわ、ちょっと・・・!」
慌てるクロちゃん、目の前にはミダの白いローブ・・・布の感触・・・
スッ
目の前が真っ暗になる。
溶けるように意識がなくなった・・・
ミダの腕の中には、抜け殻のようになったクロちゃんが残った。
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酒場の中では、なかなか席に戻らないクロちゃんとミダを、ロックとソニアが待っている。
「なあ、おそいな、あの二人」
ロックが気まずさを紛らわすように言った。
「ああ・・・」
ソニアも少し気になってきたようだ。
「さっき言ってた、忘れていることって、思い出したか?」
「わからない・・・・・・・でも・・・・クロ・・・・・」
ソニアはそう言って、ひとつひとつ確かめるように話し始める。
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9年前。ソニアがミダに花の宿から身受けされて連れて行かれた時、城の中は大変なことになっていた。
王の妃を決めている最中だったからだ。
候補は多い方がいいからと、国中から11人の姫が集められた。
10人の姫はいずれ劣らぬ才色兼備、あでやかな花のような娘たちだった。
最後の11人目の姫は、体も小さく大人しく地味で、姫というよりは使用人にしか見られない。
それがシルクだった。
シルクは父親によってこのお妃選考会に無理矢理ねじ込まれた。まだ15歳、本人は結婚なんて考えたこともなかったし、万が一選ばれても王妃なんて荷が重すぎて、自分に務まる気がしない。
お妃候補用に用意された部屋の中でも一番端の小さな部屋を選んで、コッソリヒッソリ、ただこの戦いが早く終わって解放されることだけを祈っていた。
お妃候補の中でも、最も有力だったのがアンジェリカ。
豊かで黄金のような金髪、完璧な体、明晰な頭脳。もちろん後ろ盾である両親も、コナンより東にある大国の有力な王族なので申し分ない。
ミダはソニアに言った。
「あの中からお妃を見つけて、守ってほしい。」
「見つける?そんなこと言われても、決めるのは王だろう。」
「そう、決めるのは王だが、お前には分かるはずだ。大丈夫。」
ミダはウィンクした。預言者だから何か分かっているのだろう、ソニアはそう思うことにした。
その日からソニアの日課は、ぶらぶら城の中を歩き回って妃候補を観察することだった。
王とはなかなか会えなかったが、遠目から見る限り大柄で立派そうな男だ。
ソニアが中庭をに出ると、決まってすぐに話しかけてくるのはアンジェリカだった。
いつ見ても完璧に美しい姿で微笑みを絶やさず、話し言葉も立ち居振る舞いも美しい。
普通に考えれば王妃になるのはアンジェリカこそふさわしかった。
アンジェリカと話していると、他の姫も出てきて、何となく皆でお茶会・・・というのが一連の流れになっていた。
ソニアは生まれてこの方そんな暮らしをしたことがないので、一通り姫たちを観察したら早めにお茶会から退散するようになった。
持て余した時間は、城の裏手にある小さな畑に行って紛らわせる。
そこにはいつも、帽子をかぶって髭を生やした使用人のおじさんがいて、ソニアは程なく仲良くなった。
もともと畑仕事は得意なソニア、鍬を借りて手伝いとストレス解消を兼ねて振り回す。
「そういえば、おじさんの名前聞いてなかったな!なんて名だ?」
「私か?私は・・・ハンスだよソニア。」
「じゃあ、あそこにいるお子さんは?」
「お子さん?」
花壇のそばにいつもいる女の子。
「あの子は私の子じゃないよ。」
女の子は2人の会話に気付いたのか、立ち上がって二人の方を向き、ぺこりとお辞儀をした。
「こ、こんにちは、私はシルクと申します。」
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