34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました
第53話 ソニアとシルク(3)
ゴードンを殺したのは、赤毛の少年だったという。
綺麗な顔をしていて、初めて戦場に出て、初めて取った手首だったと。
大きくてゴツゴツしていて、傷だらけの手首だったと。
ゴードンは殺せなかったのだろう。ソニアに少し似ている、子供のような兵士を。
*****
ダーーーーッ
ここまでのミダの話を聞いて、クロちゃんは大泣きしてしまった。
「ゴードンさん、良い人なのに!可哀想だ~~~」
ソニアは複雑そうな顔をしている。
この物語は、まだソニアとシルクが出会っていないのだ。
ロックもお酒をチビチビ飲みながら黙って話を聞いていた。
*****
ゴードンが死んでから、ソニアは自分でも想像しなかったほど落ち込んでしまい、何をする気力もわかなくなってしまった。
その気持ちは説明できないが、渡ろうとしていた橋を途中で壊されて、真っ逆さまに崖の底に落ちていった気分だ。
兄弟たちは一生懸命慰めてくれてソニアを支えたが、心の穴は何日経っても埋まらなかった。
そんな中、大家族の家事を引き受けてくれていたリーナの病気が発覚する。
治すには医者と高価な薬が必要だと、ジョーがほかの兄弟と相談しているのをソニアは聞いてしまった。
「ジョー、大丈夫だ。金なら私が何とかする。」
「ソニア姉さん・・・。今の姉さんには無理だよ。今まで僕たちのために頑張ってくれたんだからもう休んでて。」
「いや・・・リーナの病気に今まで気づいてやれなくて、本当にすまない。私にはお金を借りる当てがある、心配しないで。
ジョーは今まで通り、畑を・・・家族を守ってほしい。」
翌朝、心配する兄弟たちを振り切ってソニアが向かったのは、町にある「花の宿」だった。
花の宿の主人は、ソニアを一目見るなり大金を約束した。
ソニアならすぐに元は取れるはずである。
ソニアに男の経験はなかったが、人を殺すより難しいことではないだろうと思った。
売春婦になるということは、人殺しより悲惨ではないだろうと。
そして最初の客が、ミダだった。
ミダはまるでその日が運命だったというように、宿に来る前に大金を用意しており、ソニアを身受けした。
花の宿の主人は、買ったその日に倍の値段で売れて大喜びだった。
「元を取る前に自殺したり病気したりして使い物にならなくなる女もいますからね、飯代も部屋代も浮いてこちとら大助かりの大儲けだ!
さ、ミダ様、この飛び切りのいい女を、何なりと好きにして下せえ!」
「言われずとも」
金持ちの道楽でどんな目にあわされるかと思っていたソニアだったが、意外にもなにもされず城に連れて行かれた。
ミダはソニアのために用意したと言いながら部屋に案内する。
「・・・ミダ、これはどういうことだ?なぜ私を買った?」
ミダはニッコリ笑って言った。
「もちろん抱くためではありませんよ。美しいお方ですが、人を殺した血の匂いがきつ過ぎる。あなたには、未来の王妃様を守ってもらいたいのです。」
*****
「わかった!それがシルク王妃様なんだね!」
もはや映画でも見ている気分のクロちゃん。
「そうだ。だがその時点ではまだ、シルク様はお妃候補の一人でしかなかった。王様と会ってもいなかったんだ。」とミダ。
「ああ、飲み過ぎた。続きを話す前にほんの少し夜風に当たりたい。クロ、ついてきてくれないか。」
「いいよ!」
早く続きが聞きたいクロちゃんはミダの手を引いて急いで表に出ていった。
「ったく、なんだよもったいぶりやがって」
ロックは2敗目の酒を注文した。
ふと、ソニアの様子がおかしいことに気付く。
「おい、どうした?」
「・・・私は・・・何か大事なことを忘れている・・・何か・・・・」
綺麗な顔をしていて、初めて戦場に出て、初めて取った手首だったと。
大きくてゴツゴツしていて、傷だらけの手首だったと。
ゴードンは殺せなかったのだろう。ソニアに少し似ている、子供のような兵士を。
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ダーーーーッ
ここまでのミダの話を聞いて、クロちゃんは大泣きしてしまった。
「ゴードンさん、良い人なのに!可哀想だ~~~」
ソニアは複雑そうな顔をしている。
この物語は、まだソニアとシルクが出会っていないのだ。
ロックもお酒をチビチビ飲みながら黙って話を聞いていた。
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ゴードンが死んでから、ソニアは自分でも想像しなかったほど落ち込んでしまい、何をする気力もわかなくなってしまった。
その気持ちは説明できないが、渡ろうとしていた橋を途中で壊されて、真っ逆さまに崖の底に落ちていった気分だ。
兄弟たちは一生懸命慰めてくれてソニアを支えたが、心の穴は何日経っても埋まらなかった。
そんな中、大家族の家事を引き受けてくれていたリーナの病気が発覚する。
治すには医者と高価な薬が必要だと、ジョーがほかの兄弟と相談しているのをソニアは聞いてしまった。
「ジョー、大丈夫だ。金なら私が何とかする。」
「ソニア姉さん・・・。今の姉さんには無理だよ。今まで僕たちのために頑張ってくれたんだからもう休んでて。」
「いや・・・リーナの病気に今まで気づいてやれなくて、本当にすまない。私にはお金を借りる当てがある、心配しないで。
ジョーは今まで通り、畑を・・・家族を守ってほしい。」
翌朝、心配する兄弟たちを振り切ってソニアが向かったのは、町にある「花の宿」だった。
花の宿の主人は、ソニアを一目見るなり大金を約束した。
ソニアならすぐに元は取れるはずである。
ソニアに男の経験はなかったが、人を殺すより難しいことではないだろうと思った。
売春婦になるということは、人殺しより悲惨ではないだろうと。
そして最初の客が、ミダだった。
ミダはまるでその日が運命だったというように、宿に来る前に大金を用意しており、ソニアを身受けした。
花の宿の主人は、買ったその日に倍の値段で売れて大喜びだった。
「元を取る前に自殺したり病気したりして使い物にならなくなる女もいますからね、飯代も部屋代も浮いてこちとら大助かりの大儲けだ!
さ、ミダ様、この飛び切りのいい女を、何なりと好きにして下せえ!」
「言われずとも」
金持ちの道楽でどんな目にあわされるかと思っていたソニアだったが、意外にもなにもされず城に連れて行かれた。
ミダはソニアのために用意したと言いながら部屋に案内する。
「・・・ミダ、これはどういうことだ?なぜ私を買った?」
ミダはニッコリ笑って言った。
「もちろん抱くためではありませんよ。美しいお方ですが、人を殺した血の匂いがきつ過ぎる。あなたには、未来の王妃様を守ってもらいたいのです。」
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「わかった!それがシルク王妃様なんだね!」
もはや映画でも見ている気分のクロちゃん。
「そうだ。だがその時点ではまだ、シルク様はお妃候補の一人でしかなかった。王様と会ってもいなかったんだ。」とミダ。
「ああ、飲み過ぎた。続きを話す前にほんの少し夜風に当たりたい。クロ、ついてきてくれないか。」
「いいよ!」
早く続きが聞きたいクロちゃんはミダの手を引いて急いで表に出ていった。
「ったく、なんだよもったいぶりやがって」
ロックは2敗目の酒を注文した。
ふと、ソニアの様子がおかしいことに気付く。
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