34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第30話 白、ムラサキ、黒

「いかにもそこにいるのは、我が預言者ミダが示し黒髪の少女!何故貴様が我がものにせんとするのだ!」
コナンの王子ハザードは真っ直ぐに杖を構えた。
杖が怪しくムラサキに光る。

「あいにくだが、この者は我が国にも必要なのだ!今夜確かめるつもりだったが、その必要はないようだな。
ハザード王子自ら敵国まで来ようとは、やはり間違いないようだ!」

「レオ様!」
少し遅れてロックも壊れた天井から降って来た。
暁の騎士団長メアリもハザードに向かって剣を構え直す。

3対1、ハザードは不利に思えた。

しかしその時、

ハザードの杖が爆発したかのように、強烈な光を放つ。

「まずい!融解魔法だ!」
クロちゃんの腕の中でハーリーが叫ぶ。

レオ王子達の大きな剣が、光に飲み込まれるように剣先から溶けていく。

ハーリーは体を起こし、両手をハザードに向けた。白い光が放たれる。

ドンッ


ムラサキと白い光がぶつかった時、黒いブラックホールのような何かが空中に生まれた。

それは2つの光をどんどん吸い込み、大きくなっていく。

「やめろ!これが大きくなるとまずいことになるぞ!」
ハザードがハーリーに叫ぶ。

「くっ…何故だ…止められない…」


黒い空間は、周りの壁や床などの物質を喰らい始めた。
人間も吸い込もうとしている。


2人の魔法使いからは本人の意思と関係なく、どんどん光が吸収されていく。

このままでは、すべてを吸い尽くされるだろうことは明らかだった。

クロちゃんはただ、ハーリーを支えながら強烈な風に耐えていた。ハーリーがクロちゃんを巻き込まないように、クロちゃんから離れる。

すると、白い光が弱まった。

「まさか…」

いち早く気付いたのはレオだった。

そのレオを見て、ロックが気付いた。
「そうか…!2人の力が暴走しているのはこいつのせいか…!このままでは、レオ様もこの城も…この国も、この黒いヤツに飲み込まれてしまう!」

ロックは剣を捨て、クロちゃんを抱き抱えた。

「えっ」

クロちゃんが驚く暇もなく、ロックはクロちゃんを抱えて黒い空間に飛び込んだ。

「クロ様!」
ハーリーが手を伸ばすが間に合わない。


クロちゃんとロックを飲み込んで、黒い空間はピシャリと閉じて消滅した。

白とムラサキの光の攻防はフッと止まる。

「なんて事だ…」
クロちゃんが消えたあたりで立ち尽くすハザード王子。

レオもその空間をにらんだまま動かない。

メアリは先が溶けた剣を手から落としてしまった…。



ガランゴロン


クロちゃんは遠くの方で、メアリの剣が床に落ちる音を聞いていた。


しかし、今いる場所はどこかの森。

「ここ…どこだ?」
無意識に手足を確かめる。生きているらしい。

訳がわからずキョロキョロすると、少し遠くでロックが倒れているのを見つけた。

「ロック!大丈夫?」

若き騎士ロックは、眉間にしわを寄せながら目を覚ました。

「生きてる…のか…?」

クロちゃんはロックの無事にホッとした。


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