34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第26話 メアリ、喰らうの説明

「お、お助けしてください!」

クロちゃんは頭の中でハーリーの声を聞き、必死で答える。すがりつくように。

「慌てなくても大丈夫ですよ。後ほど、お側に参ります。」

「お願いします!!!早目に!」

人狼の末裔、銀髪のハーリーならきっとなんとかしてくれる。
クロちゃんは少し落ち着いた。

「ロックさんが何か言ってたけど、とりあえずあまり良くないことだけは分かったもんね。サッサと逃げないと…」

しばらくベッドの縁に腰掛けて足をぶらぶらしつつ待つ。

小さい身体、白い肌、肩まで長さが戻った艶やかな黒髪。
未だにコレが自分だとは信じられない。

下を向くと2つの重くて大きな胸がポヨポヨ揺れながらひっついているのも不思議だ。

意外だけど、男の体だった時は大好きだった巨乳も、自分が女の子になってしまうと関心は薄れていた。
ただ、走るときにひどく邪魔になり、時折男たちに好奇の目で見られていることが嫌だった。

「女の子も大変だ…」
まだ人ごとのようにつぶやく。


トントン


扉を叩く音がした。

「ハーリーさん?!」

一瞬喜んだが、入ってきたのは、

「???」

ハテナが3つぐらい付いてしまうような人物だった…。


「メアリーです、クロ様。
騎士ロックから頼まれて、今夜のご説明に参りました。頼める侍女が見つからなかったとやらで。」

「あ…あ、はい。」

その人物が口をきいて初めて、女の人だと分かった。

なにせ、身長は2メートル近くあり、全身見事なまでに筋肉質で、顔立ちも北斗の拳に出てくるようなゴッツイ造りなのだ。

薄い茶髪を後ろで無造作に縛り、服装は騎士風。腰には剣まであるのだから、女だとわからないのも無理はない。

「メアリーさん…」

クロちゃんは思わず呟いた。
(に、似合わない名前…言えないけど…)


「さて、夜まで時間もないことですので、手短にご説明致しましょう。
クロ様は、喰らう、の意味をご存知ないのですね?」

こくんとうなづくクロちゃん。

メアリーのあまりのキャラの濃さに、喰らうの意味について考えるのをチョット忘れていた。

「えー、喰らうというのは、まず庶民は使いません。主に、王族や貴族達が庶民の娘に対して使うのです。
えー、今回は予言の文字通り、食す、という意味かもしれませんが、あ、私は暁の騎士隊長としてレオ王子に信頼していただいていますので、予言のことは存じております。

えー、しかしながら人間が人間を食すというのも乱暴であろうと、まずは〝喰らって〝みようと王子はお考えなのです。」

クロちゃんはさすがに少しイライラしてきた。
結局、〝喰らう〝とはなんなのか、早く説明して欲しい。

しかしよほど言いにくいのだろう、メアリーはゴホンゴホンと咳払いして、しばらく目を閉じてから言った。

「えー、つまり、喰らうとは、寝所で一夜を共にするということであります。」

「寝所で一夜を共にする…」

脳内の情報処理が追いつかず、口に出して考えるクロちゃん。

ボクが、王子と、一夜を…。



……


………



「いやいや、無理でしょーーーー!!!」

クロちゃんの絶叫が場内の端っこに響き渡った。

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