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34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第23話 人狼の森

人狼…



かつて、大国カナンの北には巨大な森があった。
その森に名前はない。
神の森であり、人間が名前をつけることは許されなかったからだ。

その森を守っていたのが人狼の一族だった。
誇り高い彼らは、人間と関わることは避けていたが、礼儀を持って共存していた。

人狼は満月を見ると変身する、と人間たちは信じていたが、実際はいつでも変身出来た。
また、何種類かの魔法を使うことができた。

例えば火をおこす魔法、水を動かせる魔法、痺れさせることができる雷の魔法、草木を操れる緑の魔法。

人狼たちは生まれた時に、それぞれの属性の大賢者と対面し、個人の才能を見つける。

ほとんどはその時に自分の魔法の属性が分かるのだが、数年に1人の割合で分からない赤ちゃんが生まれてくる。
そういう子も10歳ぐらいまでには分かり、珍しい才能を持っていることが多い。

その珍しい才能をの中に、
あらゆる病気やケガを吸収することができる

ヒーラー

がある。


「見ての通り、ボクもヒーラーなんだよ。」

ハーリーは、話を聞き入るクロちゃんに微笑みかけながら言った。


「300年ほど前、我が一族にボクの祖先であるヒーラーが生まれた。」


ハーリーの祖先のヒーラーの名前はアンジュ。
愛らしい女の子だった。

アンジュが3歳の時に、可愛がっていた小鳥が死にかけた。
泣きながら彼女が抱きしめた時に、その小鳥のケガを吸収したのだ。

「死にかけた小鳥を助けるということは、自分も死にかけるということなんだよ。
アンジュの両親はその日以来、その力を使うことを固く禁じたんだ。」


しかし、優秀な一族の中で特別な力を使えないということは役に立たないという事。

アンジュは成長するにしたがって周りから孤立してしまった。


孤独なアンジュは、よく森と人間の住む世界との境界線に1人で出かけていた。
たまに通る人間の旅人を見るのが楽しかったからだ。

人間は人狼に比べて、足も遅いし力もない。
それでも一生懸命に歩いている、そんな姿を見るのが好きだった。


ある時…森の外で人間たちが戦争をしていた時、アンジュは境界線辺りで1人の人間と出会う。

それは大怪我を負って今にも死にかけたコナンの王子だった。

コナンとカナンの争いは長きに渡り、両国は疲弊しきっていて共倒れ必至という状況だった。

今のままでは他の国に攻め入られ、滅びてしまう。

そこでコナンの王は、自分の息子とカナンの姫との婚姻によって和平に持っていこうとしていた。

命を受けたコナンの第2王子はカナンに馬を飛ばしたが、途中で何者かに襲われて大怪我を負わされてしまった。


そこを助けたのが人狼のヒーラー、アンジュである。


「アンジュは、コナンの王子をひと目見て恋に落ちてしまったのだ。彼女は他の人狼たちに見つからないように、秘密の洞窟に王子を連れて行って看病した。両親に固く禁じられていたのでヒーラーの力は使えなかったのだが…。」

「ロマンチックですねぇ…」
クロちゃんはちょっとウットリした。中身は34歳サラリーマンだが、ベタベタな恋愛映画が大好きな隠れロマンチストなのだ。


やがて王子は意識を取り戻し、自分は急いでカナンに行かねばならないと言った。
2つの大国に住む人々を助けるために。

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