34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第18話 地下の包帯の人

「下の…部屋!」

行きたかった下の部屋に行けそうなので、心踊るクロちゃん。
言われなくても大急ぎで食事を済ませた。

部屋から出てすぐ横の柱に、少し窪みがあり、ロックが馴れた手つきで押すと、その柱は奥に下がった。

その空間には下に降りる細い細い石の階段があった。

(向こうの世界の、事務のぽっちゃり角田さんだと通れないかも)

と密かに思うクロちゃん。


「来い」
レオはクロちゃんを引っ張って階段を降りて行く。

地下の空間は意外と広く、長く続く通路の両脇にいくつもの小部屋があった。

(牢屋だ…)

地下に隠すようにある部屋、頑丈な扉に鉄格子、罪人が入れられる牢屋に違いなかった。

クロちゃんは想像してゾッとする。
(もしここに死ぬまで閉じ込められたら…)
人知れず朽ち果てる自分自身。


そんなクロちゃんを尻目に、ロックはある部屋の前で止まり、ジャラリと重そうな鍵で扉を開けた。


「入るぞ」


上のクロちゃんの部屋より少し小さめの空間に、同じような配置のベッドとテーブル。

ただ違うのは、この部屋は暗くて、血の匂いがすることだった。

ベッドの脇に誰か座っている。

暗くてよく姿が見えない。


ロックが部屋の隅に置いてあるロウソクに、廊下の松明を持ってきて火を付けた。

ポッ

部屋が明るくなる。


「!!」

声には出さなかったが、クロちゃんはそのベッドに座る人物を見て酷く驚いた。

彼か彼女か…は、血だらけの包帯を顔を含む全身に巻きつけていたからだ。


包帯の隙間から、片方の目だけが光る。


クロちゃんの気のせいだろうか、その瞳は、クロちゃんを見て

ニコッ

と笑ったように見えた。



ロックは何も気にしない様子でその人の前に立った。

「こいつ…クロの病気を治してほしい。」

「クロ?クロちゃんっていうんだね、キミ。上にいた人でしょ?」
包帯な人は意外にも普通に喋りかけてきた。
急いでコクコクうなづくクロちゃん。

その声は穏やかなやさしさがあって、やはり男が女か分からない感じだが、きっと男の人だな、とクロちゃんは思った。

(治してほしいって…お医者さんには見えないけど)

「彼女のためなら喜んで。」

包帯の人は立ち上がり、クロちゃんの前に来た。

「あ、あの、何を…」
戸惑うクロちゃん。

「大丈夫だよ。こんなに顔が腫れて可哀想に…。すぐに良くなるからね。」

「あ、あの、あのっ!ボクより、あなたの方が大変なケガに見えます!先にあなたが治してください…!!」

そんなクロちゃんの慌てっぷりをよそに、包帯の人は手を伸ばしてきた。

包帯を巻いたザラついた両手で、そっとクロちゃんの頬を挟む。

「あっ…」

包帯の人は、クロちゃんの額にキスをした。

柔らかな感触がおデコに伝わり、

体がほんわりとあったかくなる。

快感に近い、不思議な感覚がクロちゃんの全身を包んだ。

「あ…」
思わず声が口から漏れてしまう。

自然と、無意識にクロちゃんは包帯の人を抱きしめていた。

包帯の人は少し驚きながらもキスを続ける。

「おい、いつまでかかるんだ!」
せっかちなロックが痺れを切らせて言った。

「もう、大丈夫ですよ。」
包帯の人がクロちゃんから唇を離す。

振り向いたクロちゃんを見て、ロックは驚いた。

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