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34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第16話 カナンの城の中の部屋

「俺はロックだ。お前、名前は?」

年若い栗毛の騎士は、早足でクロちゃんを城の中に連れて行きながら聞いてきた。

「クロちゃん…クロ、です。」

みんな「ちゃん」付きで呼んでくれたが、自分のことを「ちゃん」というのも変な気がする。

「クロ?変な名前だな!しかもなんだその醜い姿は!黒髪の美少女だと聞いていたが全然違うぞ!まあ人違いだろうけどな!」

ロックと名乗る騎士は、よく見るとかなり若そうだった。その無遠慮な言葉と視線は、10代前半のものではないだろうか。
クロちゃんの中身は34歳のおっさんサラリーマンでも、この世界で肉体はこの生意気な少年より歳下である。
何を言われても営業スマイルで力なく笑うしかなかった。


石造りの城の中をしばらく歩いて、日当たりの悪い端の方の部屋まで来ると、ロックは鍵を開けてクロちゃんを押し込んだ。

「後ほど何か適当な服と食べ物と、医者を呼んで来る!大人しく待っておけ!」

「あ、あの…」

バタン!!


目の前で重厚な木製の扉が閉められた。
この状況にため息しかでない。
少しカビ臭い部屋を見渡す。


「…八畳くらいかなぁ」
中身は不動産勤務のサラリーマンなので、一目で部屋の広さが分かった。

鉄格子の入った小さめの窓が1つ、古いベッドが1つ、椅子が2つついた丸いテーブルが1つ。

「都内で一階、駅から徒歩15分として家賃3万円ってとこ?ボクなら1万円でも嫌だけど。」

ブツブツ言いながらベッドに腰掛ける。


「どうなるんだろう、ボク…」

この異世界での、自分に起きたことを思い出してみる。

別荘で見た黒い影…そして異世界に来て、チイッポ村のハッキやガガと家族にお世話になって、バラの村長さんキリマとその息子さんアレンに会った。
北の大国、コナンの王子サバードがボクを探しているということで連れて行かれている途中、
南の大国、カナンの王レオの大鷹ハリスにさらわれてしまった。

で、少年騎士ロックに、カナンの城のこの部屋に放り込まれた…っと。


ちなみにクロちゃん、黒髪巨乳美少女だったのが、今ではヘイナの泥のために錆色のショートカットの腫れ上がった顔の女の子である。

(でも、もしかしておかげで助かったのかもしれない。

もし黒髪巨乳美少女のままだったらサッサと殺されてたみたいだし、そうでなくても男達の慰み者にされていた可能性は高いよなぁ。)


もともと超草食系男子サラリーマン34歳でもそう思う。


ひとまず、ひとまず今生きてここにいることは運が良かったのだ。

これからのことはまだ分からないが、何とか生き抜いて元の世界に戻りたいと思った。

久しぶりに落ち着いて考えながらベッドに横になっていると、下の方から


うううう…うううう…


という唸り声が聞こえてきた。

空耳かと思ったが、確かに人間の声のようだ。

「ここは一階だから、地下があるのかな?」
ひどく苦しそうな声。

クロちゃんはベッドから降りて石の床に耳を付けた。

うううう…

やはり聞こえる。

コンコン、と床を叩いてみると、この声が止まり、少しのちに下から

コンコン

と叩き返してきた。



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