34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました

丸めがね

第11話 ガガの苦悩

確かに、赤く腫れ上がった顔、ザンバラに切られた赤焦げ茶のマダラな色の髪…。

どう見ても、今のクロちゃんは占い師が語る美少女ではないように見える。

「今の話からすると、クロちゃんの顔が腫れ上がっているのは髪を染めるために使ったヘイナの泥のせいだろう。
あれは本来、木材を染めるための強い薬のようなものだ。無茶な事をしてしまったな、ガガ。
もしかしたらクロちゃんは、命が危なかったかもしれない。
ヘイナの泥に対する薬はないから、この村の水でよく洗って、スールの実の油をつけておけばいつか治るだろう。

その髪は、私が後で整えてあげよう。」

アレンは冷静に言った。うなだれるガガ。

クロちゃんは少しホッとした。とりあえず、今すぐ命に関わるということはなさそうだ。

「クロちゃんがどんな姿になろうと、コナンの街に連れて行かないわけには行かないんだよ、ガガ。クロちゃんの噂はすでに王子サバードに届いているはずだからね。」

「…じゃ、じゃあボクも一緒に連れて行ってください!クロちゃんの側で守ってあげたい!どうか一緒に…!」

「ダメだ。」

アレンはピシャリと言った。

「キミは大切な時に、冷静な行動がまだ出来ない。現にいまもクロちゃんを守るどころか、殺しかけたのだよ?
大丈夫、私が共についている。クロちゃんが喰われることはないようにしよう。」

しかし泣きそうな顔で首を横に降るガガ。
そんなガガの姿を見ると、クロちゃんは胸が締め付けられた。
(中身は34歳のおっさんなのに…こんなに思ってくれるなんて…)

「ガガ、あんたは役立たずだって言われてるの!大人しく家で待ってなさい!」
ハッキが叱りつける。

「ボク、みんなの所にきっと帰ってくるよ。だいたい予言に出てくるような人間じゃないんだから。別の人のことだよ!
お土産…はお金がないから買えないけど、見たり聞いたりした面白いお土産話を持って帰るね。
待っててね!」

クロちゃんに言われて、やっと諦めた様子のガガ。

「ゴメンね、クロちゃんゴメンね…」

何度も何度も謝りながら、ハッキと家に帰って行った。



2人が去った後、ボロボロになったままのクロちゃんをアレンはジッと見つめた。

「さて…まずは少し暖かいお湯に浸かるといい。
この村の水は万病に効くと言われているからね。」

クロちゃんはアレンに案内されて、お風呂というか小さなプールの様な物がある部屋に通された。

アレンは太ったお手伝いのおばさんを起こして、そのプールにぬるいお湯を溜めさせた。

「さあ、クロちゃん、服を脱いで全身このお湯に浸かりなさい。」

「はい、ありがとうございます」

何の躊躇もなく服を脱ぎ始めるクロちゃん。(中身34歳サラリーマン)
アレンも眉ひとつ動かさず見ている。


「あ、あの、アレン様、お年頃のお嬢様ですから…私がお世話いたしますので…」

すっかり目が覚めた様子の、太ったお手伝いさんだけが慌てていた。

あ、そうか、ボクは女の子だったんだ


クロちゃんは、露わになった乳房を手で隠しつつ思い出す。

アレンも少し困った顔をし、
「わかった。湯浴みが済んだら髪を切ろう。私の部屋に来なさい。」

と言ってお風呂の部屋出て行った。


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